Essay

<早朝の講演会-Cyberchat>

25日の朝は早く起きました。講演会の会場に着くのが7時30分ですから。ホテルを出たのが、6時50分だったと思う。逆算して、どうしても6時に は起きねばならない。そこで考えたのは、朝飯を簡単に済ます方法。私が今回もやったのは、機内食でくれるパンや簡単なお菓子を鞄に入れておくのです。そし て、翌朝時間が無いときに食べる。これが結構有効な方法なのです。ホテルには今回も果物が差し入れられていましたが、通常は水物以外何もない。そうした時 に、飛行機の中でくれるちょっとした固形の食べ物を持ち込むと、様々な用途で使える。何せ「ただ」ですから。

 ちょっとお待ちを(^_^)(^_^) 会場の63ビルはビジネス街のはずれにほぼ単独の形で立っている大きなビル。車でそこに横付けして、エレベーターを一気に上って降りたのは60階。 Governor's Chamberという普段からこうした会合に使われているであろう私的クラブのような場所。会場に入ってびっくりしました。講師席には花が飾られ、その上 にはハングルで読めないものの(英語の部分は読める)、多分「アナリスト講演会」と大きなカンバン。既に大勢の人が来ていて、静かに資料を読んでいる。

 綺麗だったのは、外の景色でした。韓国と日本は同一時間帯に属する。ということは、東から明るくなりますから、同じ時間では韓国は日本に比べ夜の明け方 が遅い。つまり、7時30分でもまだ朝日がまぶしいのです。朝焼け状態。綺麗でしたね。東からあがってくる陽の光が。韓国では「日本海」のことを、「東 海」(とうかい)という。東の海。そう韓国にとっては、「日本海」は、陽が昇ってくる海なのです。

 実は韓国でもラップトップを使い、インターネットを駆使しながら自分の分の講演をしようと思った。しかし、電話の出口が講師席の周辺にはない。席の後ろ にあったのですが、その電話は「国際電話」はかからない仕組みになっていた。各種の会合に来る人に勝手に使われてはかなわない、ということでしょう。そこ で、オンライン講演はあきらめ。まあ韓国でも携帯電話やPHSを使って信号を拾う方法などいろいろあったのでしょうが、ちょっと準備不足だった。でも、1 人40分くらいで、しかも姜さんが通訳で入ってきますから、実質しゃべれるのは20分くらい。いろいろしようとして、「これは出来ない」「あれはできる」 という知識が残ったというのが良い経験になったということでしょうか。 

 講演は、内藤、内田、伊藤の順で。内藤、内田両氏は「アナリストの評価」の問題。韓国でも、各機関に属するアナリストをどう評価するのかは大きな問題に なっているようです。集まったのは、韓国の大手機関投資家の調査部門のトップや各アナリストを監督する立場にある人。皆さん熱心でしたね。お二人の話は、 内藤さんが日本の例、内田さんが海外の例(特にアメリカ)を説明。私の話だけは、経済全般でしたが、私の話の中では参加者の興味はやはり「為替」にあった 印象がした。我々が韓国を去って数日で、ウォンが1ドル=1000ウォンになったような自国通貨急落の事態にありましたから。

 しかし思ったのは、「なんとまじめな」ということです。25日は土曜日。韓国ではまだ市場が土曜日は午前中はやっているそうです。そして、朝早くから集 まった韓国のビジネスマン達。その総数は、40人強だったと思います。きちんとした身なりをした人が多かった。「Casual Friday」なんてのは、まだのようです。で、へそ曲がりの小生として思ったのは、「土曜日など休みにして皆で自由な時間を過ごした方が、経済は活力が 出てうまくいくのではないか」というものです。ちょっと乱暴な議論かも知れませんが。だから、講師の中では私だけはネクタイをしていない。ちょっと失礼で したが、韓国の人達に新しい土曜日の過ごし方を示した(^_^)(^_^)つもり。

 アジアの経済全体を見ていると、「追随経済」の限界が見える。海外の企業が既に手を着けた製品や部品を「より安く、より速く」という経済。賃金が上がっ たり、もっと素早い供給業者が出てくると対処できなくなる。タイも、その周辺国も、冷戦が終わり「安い供給業者」としての地位を失って、世界経済における レゾンデートルを低下させた。クルーグマンではないけれども、経済を柔軟な、耐性の強いものにするには、やはり独自の製品を作って行かねばならないと思い ます。「独自の製品」を作るには、ただ真面目というのでは出来ない。遊び心が 必要です。これは私の私見ですが、ソニーがあれだけ伸びているのは、やはりあの会社には井深、盛田さんの「遊び心」がやどっているからだと思います。 ウォークマンなど、「歩きながら音楽を聞きたい」という井深さんの我が儘が製品になったようなものです。盛田さんは、確か70才近くになってスキューバを やっていた。社長が元オペラ歌手だったこともある。

 で、アジア経済について思う。危機に身を固めるのではなく、自由になれば良いと。制度や想念の桎梏から離れる時期ではないか、と。何%成長しなければな らない....とか、自分の肩に一族郎党がのっかっている....とか。アジア全体を席巻する危機が起きたのは、どこかに共通する脆弱性があったからでは ないかというような気がします。むろん、国によって大きな差はありますが。まあ、ほんの少しの時間韓国に行っただけですが、以上が「土曜日早朝の講演会」 で感じたことではありました。

 しかし、今の経済環境から見れば、日本は韓国にとっての反面教師の面も多い。日本もあまり威張れない。日本と韓国の違いも見えます。聞いていると、労使 関係などは隣の国と言っても大きく違う。単純化して言えば、労働者、労働組合の力が強い。韓国の労使関係は、日本より対立関係が強いように思えました。し かし、一方で財閥という一つのグループに属しているという仲間意識も強いようです。
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活発な質疑応答を経て終わったのが、10時過ぎ。結構長かったですね。色々な人と挨拶して、ビルの下に降りたのが10時30分くらいでした。車の迎えま でに時間があったので、ビルの地下で買い物をしました。26日の朝は時間がないので、日本へのお土産を含めて。いろいろな人から、「のり」を頼まれた。実 際の所、お土産は「のり」だけでした。しかし、大量に。しかし、軽い。それを車に積み込んで終わり。内田さんは何かセーターのようなものを買っていた。華 やかなビルの地下の商店街にしては、ちょっと暗い感じの商店街で、これは私が言ったのではなく姜さんが言ったのですが、女子店員は全般に「愛嬌がない」と いう印象。別に悪意があるわけではなくて、あれがあの国では普通なんでしょうね。買ってくれた人に微笑むといったことはない、と思いました。。

 11月初めのウォンは、1円=7.9ウォン程度。しかし、私が行ったときのウォンは、7.8程度。対円でも当然ながらウォンは減価している。円でもらう ウォンは大きい。札もがばっと増える。韓国は1ドル=1000ウォンを記録した後介入で通貨を支えていますが、直接出張で得た情報ではないのですが、経済 のあちこちに「硬直性」を残している。経済の危機はしばらく続きそうな予感でした。

  (ycaster 97/11/19)