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2017
09/13
Wed

とっても、とっても良い映画です

day by day

 (00:45)「裁き」に関する映画なので、顔と顔が向き合い、尋問し、主張し合う場面の中で映画は進行します。それぞれの登場人物の顔は基本的に向き合って、相対峙している。刑務所の面接室、そして裁判場面。

 しかし最後に犯人である役所さんと、その弁護士である福山君が、重なるようにして同じ方向を向いて語る場面。とっても印象的です。最後の最後に。What a difference between the two ? と問いかけるように。

 言葉もとっても印象に残るものです。目の見えない人々が、ある人は象の耳に触り、ある人は象の鼻に、そして別の人は象の牙に触って「象とはこうだ」と主張し合う。群盲象を評すと短く表現されるインド発祥の寓話。

 象は巨大だ。盲人達の手の届かない部位も多い。がそれぞれの人はゾウの鼻や牙など別々の一部分だけに触り、その感想について語り合う。が触った部位により当然感想が異なり、それぞれが自分が正しいと主張して対立が深まる.....。

 世の中で「こうだ」と言われていることの多くは、しばしば一部だけを触った、全体像が見えない人々が、「自分の見方が正しい.....」と思い、そして主張しているだけかも.....という。

 映画の最後に福山君(弁護士役)が確か右手で顔の左頬をなぞる。顔に血は付いていないが、それはこの映画で最後のkill が行われた確たる証拠のように見える。むろん手は下していないが、映画はそれを示唆する。

 とっても、とっても良い映画です。第74回ヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門に正式出品されたが、受賞を逃した。しかしそれでも見た人々に深い印象を残したのではないか。問題意識は深い。

 映像は全体的に暗い。同じ人生と人の生き方を考えさせる「ニュー・シネマ・パラダイス」のようなカラッとしたところはない。重い。「それがな.....」とも思う。もしかしたらちょっと難解だったのかも知れない。

 しかし是枝監督はとっても良い映画を生み出したと思う。気になる言葉も。「訴訟経済」。それは人間の社会が運営上持つ一種のトラップだ。それから抜け出せない中で、それぞれがファクトの進行に苦しみ、そして悩む。

 「三度目の殺人」はとっても良い、そして考えさせられる映画です。

02:13
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