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2007
11/28
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2007年11月28日(水曜日) 流動性ワクチン

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 (23:54)アブダビの政府系ファンドがシティに75億ドルの資金注入をしたことは昨日書きましたが、どうやら表面下ではいろいろな動きがあった上で、このアブダビからの資金調達に落ち着いたようです。今読んだウォール・ストリート・ジャーナルには、いっとき「シティがバンカメと合体する」という案も検討されていたというのです。

 シティのサブプライムローン関連商品に関する評価損の増加が白日のモノになり、プリンス前CEOが解任されるという騒動の中でです。シティの取締役会はこのバンカメ・サイドからの非公式な合体提案を、「totally out of hand」(即時に)拒否し、話し合いも行われずだったという。シティはその時新CEOを探していた。トップ不在では話も出来なかったと言うことでしょう。ルービンはそうした中で選ばれた。

 そうした動きがあった中での、アブダビ投資庁のシティへの75億ドル投資発表。金融市場の不安定の背景には、実にダイナミックな動きがあるということです。問題なのは、この記事のウォール・ストリート・ジャーナルの記事の見出し

Financial Firms,Capital Depleted,Hunt for Cash

Citigroup Board Spurns Overture About Merger,

 の前半部分です。評価損が膨らみ、そして今後も住宅ローンの生き詰まりが増える中では、アメリカや欧州の金融機関には「資本不足」の懸念が強まるだろう。以前書いた「Cash is King」の状況が続くと言うことです。キャッシュはまだ世界には潤沢にある。その一つの持ち手は政府系ファンドです。

 当局もこうした緊迫した状況を監視しているようです。同じウォール・ストリート・ジャーナルには「Nimble Monetary Policy Is Needed, Fed's Kohn Says」という記事がある。コーンFRB副議長の発言です。nimble とは「動きの早い,す早い」ということで、これは今のような状況下では「場合によっては利下げ」を意味する。この発言を受けて、ニューヨークの27日の株式市場は大幅に上昇している。関連する記事の書き出しは以下の通りです。

WASHINGTON -- A top Federal Reserve official said Wednesday that recent financial turbulence has undone some of the improvement seen in previous weeks, and repeated the need for "nimble" monetary policy to address economic risks.

The remarks, by Fed Vice Chairman Donald Kohn, suggest that interest rate reductions remain on the table even though policymakers adopted a neutral view of growth and inflation risks at their last meeting.

"The increased turbulence of recent weeks partly reversed some of the improvement in market functioning over the late part of September and in October," Mr. Kohn said in prepared remarks to the Council on Foreign Relations, adding that conditions in term markets "have deteriorated some in recent weeks." (See the full text of his speech.)

 ファイナンシャル・タイムズには社説に「Central banks offer liquidity vaccines」という興味深い見出しの文章がある。うまいですね。「liquidity vaccines」(流動性ワクチン)。ニューヨーク連銀が異例の年越し資金の供給を80億ドル分約束したことは先日触れました。確かに有効なワクチンになるかも。しかしFTが「流動性供給が社会的に受け入れられるケース」として次の二つを挙げているのは頷ける。
  1. 供給された流動性が、病気を癒すものであること

     

  2. その流動性が病気がそれ以上広がらないようにする効果を持つもの
  FTが指摘するように、今の中央銀行による流動性付与やもしかしたらあるかもしれないFRBによる新たな利下げが、こうした目的を完遂するものかどうかは不明である。FTが言うようにdiscount window を利用せよというのは正論だ。しかし、経済を預かる中央銀行としては「何をしているのだ」という声が怖いのかもしれない。

 ポイントは、金融機関同士の疑心暗鬼が収まり、彼ら相互間の貸出金利が中央銀行が設定している短期金利の誘導目標のレベルに落ちてくるか、でしょう。まだその確信は持てない。市場も疑心暗鬼を安心を繰り返している。

23:37
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