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2014
11/06
Thu

原油安と戦う黒田日銀.....勝てる ?

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 (13:15)ドル・円相場が115円の水準を越えて進んでいる中で『2%の「物価安定の目標」の実現を確かなものに』 きさらぎ会における講演という黒田日銀総裁の講演を読みながら、「へえ、黒田さんはある意味原油安との戦いに取り組んでいるのか」と思いました。

 「きさらぎ会における講演」はそのほとんどが退屈です。追加緩和を発表した時の数字などや、その後の記者会見において表明した景況感を中心に構成されている。しかしその中で一つだけ目を引く表現がある。以下の文章です。

 本日、ご説明したように、「量的・質的金融緩和」のもとでデフレマイ ンドの転換は着実に進んできています。今、この歩みを止めてはなりません。 デフレという慢性疾患を完全に克服するためには、薬は最後までしっかりと 飲み切る必要があるのです。中途半端な治療は、かえって病状を拗らせるだけです。

 「中途半端な治療は、かえって病状を拗らせるだけです」というのは、言葉は丁寧だが、中銀総裁が発する言葉としては極めて強いし、なによりも珍しい。つまり全知全能を使って「徹底的にやる」と言っているに等しい。「5-4」の決定だった割りには、黒田さんは意気軒昂に振る舞っている。

 黒田さんが何のために戦っているかと言えば「2%の物価安定の目標」です。それがなぜ危うくなっているのかに関しては、先週末の措置発表文でも「きさらぎ会における講演」でも「消費増税以降の景気の足踏み」と「原油価格の低下傾向」を挙げている。

 ということは目標を達成するためには「この二つと戦う」ということです。ツールとしているのはもっぱら「日銀による資産の買い入れ」です。リートを買う、国債を買う、ETFを買う...と続く。もしかしたら「消費増税以降の景気の足踏み」とはこれらのツールで戦えるかも知れない。先日指摘したように「経路」としては

 「株が上がる」→「消費が増える」→「生産が増える」→「それによって雇用が増えて」→「一般国民の所得が増えて」→「また消費が増える」.....というのと「円安になる」→「輸出が増える」→「企業が高収益になって」→「投資が増える」

 がある。今はその経路に狭隘なところがある。しかしそれを取り除いてやれば出来ないことはない。むろんこれも相当難しい。政府が関与しなければ出来ない。日銀の措置によっても輸出に関係ない中小企業で働く人々の給与引き上げは難しい。大都会の真ん中では不動産価格は上がっているが、地方では下落が続く。

 それよりもっと難しいのは「原油価格の低下傾向」との戦いです。ドル建ての原油の世界相場を日銀が操作する方法はない。なにせマーケットがでかい。原油やエネルギーは世界中に生産され、そして消費されている。それを操作するのは困難だ。サウジの対米での政治的思惑もある。むしろ円安→ドル高は、今起きているように資源価格の低下を誘発する。ということは円安誘導は日銀にとっての情勢悪化(原油安)を意味する。

 国内石油価格引き上げを日銀として誘発するには円安がてっとりばやい。しかし、「円安」の進行には弊害が伴うことはよく知られている。原発が止まっている中では日本のエネルギー輸入価格は大幅に上昇するし、輸入品に頼っている業種は苦しくなる。もうこれは苦情が出ているところです。

 私が何よりも問題だと思うのは、Stimulus Gives Bank of Japan Huge New Role in Marketsとウォール・ストリート・ジャーナルが指摘するように、「日銀がマーケットのプレーヤーになった」ということです。これは正直言って日銀の本来の役割とは違うし、危険です。

 いかにプレーヤーになったかを考えると、例えば日銀は発表文で『ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約3兆円(3倍増)、年間約900億円(3倍増)に相当するペースで増加するよう買入れを行う』と述べている。

 「それぞれ年間約3兆円(3倍増)、年間約900億円(3倍増)に相当するペースで増加するよう買入れを行う」ということは、ETFなら「3兆円÷242」、リートなら「9000億円÷242」という買い入れを年間で平均的に行うということ。「242」というのは、大体の年間マーケット営業日です。

 出てくる数字は、前者が124億円、後者が37億円です。しかも当面は買いっぱなしです。しかし日々のオペレーションは相場感をもって増減(購入額の)を伴いながら行うわけです。これは「一大プレーヤー」だし、常軌を逸しているでしょう。しかし黒田さんは「中途半端な治療は、かえって病状を拗らせる」という。徹底的にやる、と言っている。

 間違ったコモンセンスかも知れないが、私の直感は「将来良くないことが起きる」と告げている。何時になるか分からないが。と書いている間に東京の株は一時的かも知れないがドスンと下がり、ドル・円も115円からストンと落ちた。

 マーケットでは「政策に逆らうな」と言われているらしい。しかし明らかに今の「プレーヤーとしての日銀」はおかしい。結局こういうことでしょう。

 「Enjoy the party. But dance close to the door !! 」

14:15
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