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2016
01/14
Thu

中国経済の苦境、一段と鮮明に

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 (00:40)貿易には相手が必要。中国の輸出は相手国では輸入と計上され、中国の輸入は相手国では輸出と計上される。比較すればその齟齬が直ぐに分かる。だから国内統計よりもはるかに"実体"(中国経済の)が出る。

 そしてその去年一年分の統計が13日に発表になって 中国政府の目標が「年間6%の伸び」だったのに対して、2015年の種出と輸入を合わせた貿易総額がドルベースで3兆9586億ドル(約470兆円)と前年に比べ8.0%減った。人民元ベースでは前年比7・0%減の24兆5900億元(約440兆円)だった。

 中国の貿易総額が前年比でマイナスとなるのは6年ぶり。内訳は輸出が2.8%減、輸入が14.1%減だった。輸出の落ち込みは人件費の上昇などで中国の輸出競争力は低下したことと、欧州などでの中国製品に対する需要減のため。

 輸出より大きな落ち込みとなった輸入は、原油など資源価格が安くなって代金支払いが落ちたのと、輸出減を見越して輸入が減ったこと。輸出の伸びの落ち込みが輸入のそれより小さかったことから、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支の黒字は5945億ドルとなり、過去最高を記録した。

 収支が大幅黒字になったからといって、これは中国としては喜べない。なぜなら輸出の減少は「中国のこれまでの成長パターン」が明らかに終わりつつある事を示しているからだ。筆者は金融そもそも講座で去年の10月から「中国経済特集」を連載しているのですが、その最新号に「中国経済が抱える一番の問題は、過去の成長パターンが通じ難くなっているのに、新しい成長モデルへの移行ができていない、ということだと思う」と書いた。それが去年の貿易統計ではっきり裏打ちされた。

 20ドルの大台を見た原油価格やその他資源価格が、今後さらに大幅に落ちることはまずないと考えられる。なぜなら20ドル台の原油相場では、アメリカでもそうだが生産者の倒産が続発し、その結果生産量が抑制される可能性が高い。それは他の資源でも同じ事だ。ということは、中国の輸入額の推移は加工のための資源輸入と、消費の為の製品輸入の動向が今後を左右することになる。

 前者を決するのは主に「輸出」だ。輸出が多ければ、中国は原材料をより多く輸入しなければならない。にも関わらず輸出は去年2.8%減少した。そう言われてみると、身の周りの「Made in China」の数が一時よりは減っているように思う。

 中国製製品の競争力が落ちているためだ。その最大の原因は最新号でも書いたが人件費の高騰。最近の報道によると中国の企業でさえ、「この程度の製品を中国で作っていたは競争力がない」と海外(ベトナム、バングラデシュなど)に工場を作るケースも出てきているという。

 一番良いのは「高騰した賃金に見合う製品を中国国内作れる産業構造の達成」だが、これはなかなか難しい。そこには創意工夫が必要だが、今の中国の政治体制はそれを一番嫌がる。汚職撲滅で役人も企業幹部も戦々恐々の日々。積極的には動かない。としたら経済構造の脱皮も難しい。では賃金の増加を抑えられのか。無理でしょう。

 興味深かったのは、この中国経済の苦境を示す2015年の貿易統計が出た日に、日本の株が「中国の事はもう結構」とばかりに大幅反発したこと。そりゃそうでしょう。いくら中国の景気が悪いといっても、日本企業の価値が下がり続けるのはおかしい。やっと市場もそれに気が付いた。

 しかし事実として残るのは、中国経済の減速傾向は今後も続く可能性が高いということで、経済政策、金融政策を調整する新しい部局を作っても、またオフショアの人民元市場)CNHと呼ばれる)で長続きしそうもない買い上げをしても、「根本問題が残る限り弥縫策に過ぎない」ということでしょう。あとはマーケットのそれへの注目度次第。

03:38
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