(08:59)日本も消費不況が深刻化しつつあるのですが、中国でも韓国でも景気はかなり難しい局面に差し掛かっている。中国では上海の株価が直近の高値からほぼ半分になり、上げを謳歌していた不動産の価格も急落。一方韓国では成立したばかりの李明博政権の選挙公約に早くも赤信号。
中国のバブル破裂は多くの予想ではオリンピック後という見方だった。しかし市場は先に予測できることを、その時点まで待つことを殆どしない。中国の場合は「(株安が起きそうになったら)政府が何とかする」という意見があったが、それ以前に物価高・金融引き締めの中で株価安、不動産安が実際に起きていることは、中国政府の大きくなった同国経済コントロール力の低下を意味するかも知れない。
昨日の上海株の下げは激しかった。つい最近のニュースは「上海株が3500を割った」というものだったが、週明けの14日の相場は一気に3300を割った。昨年10月につけた6000を上回る水準から見てほぼ半値になった。今朝の日経新聞などによると、マンションなど不動産価格の下落も激しく、深センでは3月のマンション価格が前月に比べて17%も下落したという。
事務所ビルの余剰も顕著になりつつあるらしい。大型ビルの空室率は北京で16%、広州では25%に達するという。ということは、経済格差を見せつけられている中国の平均以下の所得層や農民、民工ばかりでなく、実は株高、不動産高で踊ってきた中国の富裕層も相当怒りを募らせている、ということだろう。しかし政治的に見れば、中国政府の政策のポイントは「インフレ抑制、そのための金融引き締め」に当面あり続ける。物価高は中国民衆の生活を直撃する。
今の中国は聖火問題で「愛国心の高まり」(日本の各紙)の中にある。それはそうだろう。しかし愛国心の行方はしばしば行方を変える。今のままではオリンピックが終わる頃に、「何の為のオリンピックだったのか」という議論が出てくる可能性がある。聖火問題や今後出てくる関連の諸問題での中国の権威の喪失、経済の実態悪化。その中で進む格差の拡大と、今まで豊かだった富裕層の不満拡大。繰り返すが、歴史を見れば愛国心はしばしばその行方を変える。
韓国経済に関しては、月曜日の昼に日本に駐在する二人の韓国の方と食事をしながらゆっくり話をしました。そこで出てきた話は以下の通りだった。
ところで、中国に関しては一冊本を紹介しましょう。この本の著者である吉岡佳子さんとは旧知の仲。先週金曜日に私が長野に移動する前に1時間ほどお茶しました。彼女が4年以上に及ぶ中国滞在を受けて書いた本が愛国経済ー中国の全球化です。全球化とは「グローバライゼーション」。
この本がいいのは、彼女が実際に中国の各地方に足を運び、実際に中国の人と会う中で疑問にぶつかりながら中国に関するアイデアを固めて行き、彼女の分析を自分の言葉で語って作り上げている点。いろいろなことを詰め込みすぎてちょっと主張が弱くなったきらいはある。しかし、今の中国を理解する上で実に地に足が着いた分析、感想、思索が詰まっている本だと思う。
いわゆる中国本はいっぱい出版されている。しかし、「中国は巨大な国になる」と「中国はひどい国」の両極端に別れている。真実はその中間に詰まっていると私は思うのだが、この本はまさにこの点で優れている。推薦です。