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2021
05/01
Sat

「マスクをするサル」(新潮新書)

day by day

 

 楽しみの多くを奪われた新型コロナ変異種の時代。しかし「本を読む」楽しみは残っている。今日紹介するのは新潮新書から「マスクをするサル」。タイトルを見た瞬間から、「タイムリーな本」だと思いました。しかしその下の帯に「パンツ以来の歴史的文化」とある。何故 ?

 著者の霊長類・人類観察の長い歴史の中で培われた知識の上に、全世界の人々が顔に乗せ始めた「マスク」が広い意味の文化にどう影響するかを考察した興味深い本だ。多分賛否は大きい。また著書が著述を始めた時期の「マスクの必要性・継続性」がワクチン接種の進展の中で「あとどのくらい?」という環境変化はある。

 しかし「マスク」が今の我々の日常生活に持つ意味は大きい。名刺交換の際には「マスクを外すべきだ」(だって顔を覚えられない)というのが私の意見だが、「感染を防ぐ目的のものを外すべきでない」という意見もある。また「隠れたものは見たくなる」という著者の主張からすれば、確かにそのうちに「あの子の口元を見たい」という欲望が生まれるかも知れない。

 この本が最初にレディー・ガガのマスク姿を示し分析のとっかかりにしているのは興味深い。私もあれを見た時に、「これは何だ?」と思ったが、謎が解けた。知識満載。格闘競技でユニフォームは赤の方が勝利に繋がるとの結果が出たというのも面白い。男性の髭に関する考察も面白かった。

 しかし何と言っても「人間は何故衣服を着るようになったのか」は、さすがに霊長類の研究者と感心した。読んで面白い本だと思うし、これからも我々に付きまとう「マスク」考察に関する、面白い入り口を提供してくれていると思う。(了)

 

23:50
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