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2007
05/08
Tue

2007年5月8日(火曜日)}

日記
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サルコジ当選の記事の見出しを「Sarkozy's battle begins」としていたアメリカの新聞があって、「バトルか。その通りだな」と思っていたら、サルコジに対するバトルをもうフランスの、またはフランス居住の若者達が開始したようです。

各地で6日夜から7日朝にかけてサルコジ当選への抗議行動が繰り広げられ、フランス警察当局は592人を逮捕したという(産経新聞)。車両への放火は、730台に達したとも。AFPによると、パリ東部のバスチーユ広場には、ロワイヤル氏の支持者らが氏の敗北が決まった後も残り、約300人の若者らが「サルコ、ファシスト」と叫んだ、と。加えて、石やビンなどを警官隊に投げつけ、これに対して警官隊は催涙弾や放水銃で対抗した。南部のトゥールーズなどの地方都市でも反サルコジ派と警官隊が衝突したと伝えられる。

昨日の朝書いた文章でも指摘したのですが、今回のフランスの大統領選挙は両候補のイデオロギーが真っ向から対立するという極めて政治色の強い選挙でした。だから見ている我々にも興味深かったし(フランスはどちらの道を選ぶのだろう、という意味で)、フランス国民も85%という羨ましい投票率で「次の指導者」選びに参加した。しかしそれはまた、フランス社会に深い対立の火種を残した、ということでもある。

得票率で53%(サルコジ)対47%(ロワイヤル)というのは、国民の mandate をもらったという意味では十分といえるし、民主主義のルールに従えばロワイヤル支持層が選挙の結果に不満を抱いて抗議行動をするというのは筋が違う。多分、抗議行動を行っているのは、「ロワイヤル支持層」と言える人々ではないのでしょう。もっと外れた。

しかし多分、サルコジ当選に対して直ちに抗議行動を起こした若者の気持ちの中に去来するものは、「(3年前がそうだったように)彼は我々を抑圧してくるだろう。それだったら今から抗議行動を」というパーソナルなものもあるに違いない。

ここからがまさに「サルコジのバトル(闘争)」の開始です。まずは思ったように国を改革できるのか。日本でもそうですが、何かを変えようとすれば二つのものと闘わなくてはいけない。一つは既得権者、一つは「昔は良かった」とか「今のままで良い」という国民の潜在的安定志向意識。既得権者とサルコジ当選を良く思わない一部の若者は、本来は立場が違うはずです。しかし、政治の世界ではしばしば敵の敵は味方ということになる。

多分「社会のクズ」と呼んだり、抑圧するだけでは一部の若者の抗議行動は収まらないでしょ。ということは、サルコジ新大統領は出足から非常に大きな試練に立たされると言うことになる。私は正直言って、サルコジがこのフランスという国に強く残った「意識の分裂」を乗り越えられるのかどうか五分五分ではないか、と思う。

問題が複雑なのは、どうみても歴史の中で輝いていた存在だったし、それを国民も隠れた誇りにしていたフランスが、経済力や文化など様々な面で発信力を弱めている、世界での存在が弱くなっていて、国民がそれの打破を目指しながら、処方箋が書けていないということだと思う。フランス国民はやや劇薬と言えるサルコジを選んだ。しかし、サルコジが国民を広く帯同してフランスの存在感を高められるのかどうかは不明だ。

EUの存在もフランスの「普通の国化」を進めている。2005年のEU憲法拒否もその流れに対するフランス国民の抵抗だろう。EUの体内にいながら、一方では「フランスの個性」の発揮を進めるのは至難の業でもある。来週にはブレアが政権を去り、既にコール、シラクが政界を引いた欧州では、指導者から見るとEU第二世代に入る。第一世代に比べると、明らかに紐帯は弱い。

「サルコジのフランス」の誕生は、フランスにとっても、EUにとっても大きな曲がり角になる可能性がある。市場もまだ迷っている。欧州の株が全般に高い中で、フランスの株価は大統領選後初取引の7日はほぼ横ばい。抗議行動などがなければ、サルコジ当選は本来は株式市場に歓迎されたのでしょうが。ユーロも動けず。

07:28
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