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2007
10/31
Wed

2007年10月31日(水曜日) 農民の自殺

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 (20:55)キリンビールが31日にビール類の出荷価格を18年ぶりに3~5%引き上げると発表。「18年ぶり」というのがミソですね。デフレの時代があたかも終わったかのように。値上げ実施は来年2月からだそうですが、その大きな背景の一つは穀物相場の上昇。大麦、トウモロコシ、それに小麦などなど。あとはアルミとか、段ボールとか、燃料。身の回り品が上がり始めている。

 それに関連して、今日のFTにはオーストラリアの早魃の話が出ていて、見出しは「Bad harvest casts a long shadow」となっている。さらに副見出しには「farmers have been driven to suicide」と。つまり農民が自殺に追い込まれるほど困窮しているということ。

FTの記事にはオーストラリアの地図があって、降雨量の分布が示されている。それを見ると今年のオーストラリアがいかに異常気象なのかが分かる。降雨量平年以下がほぼオーストラリアの面積の9割を覆っている。雨が平年以上降っているのは北、東、西の海岸の一部地域だけ。中部から南部にかけては非常に雨が少ないのが一目瞭然である。

 オーストラリアの平年の小麦収穫量は2500万トン。それが今年はつい最近収穫見通しが再三引き下げられて1200万トンとなった。これは去年の980万トンに比べてはいいが、それでも昨年に続く不作ということだ。

 困窮してきているのは農民のようだ。二年続いての不作は応えるでしょう。収穫は年にあっても2回で、大部分は一回でしょうから、不作と言うことはその年の収入がないに等しい。この記事を読むと、去年の不作があって今年は「平年並み」との当初の見通しがあったが故に、どうやらオーストラリアの農家のかなりの部分は、その時には「納得できる高さ」と思った先物価格で、今年の収穫分を先売りしていたようなのです。先物市場で。

 しかし収穫量が著しく減った。とどうなるかというと、先売りした分量を確保できない。その分は、契約に基づいて市場で買って売り渡さなければならない。収穫がないだけでなく、足りない分は当時からは予想も出来ない高い価格で買って売り渡しをしなくてはならない。これは当然ながら農業経営者には凄まじい負担です。

 「農民の自殺」と聞いて、去年行ったインドの農村を思い出しました。土地の気候に合っていないのにバイオ種子を借金で買って作付けをしたものの、思うように収穫を上げられずに借金苦に追い込まれて、そして担保の土地を取り上げられ、そして追い込まれていたインドの農民。

 農産物価格の上昇は本来は世界の農家にとって朗報なはずなのに、雨量不足などで収穫が上がらなければ、逆に負荷になることは明らかです。インドもオーストラリアもそう。私が見た限りでは、今年の6月に取材したアイオワ州(アメリカ)の農家はトウモロコシなどの収穫は順調で値段も上がり、加えて土地価格も上昇していた。アメリカは知りうる限り、農家が価格上昇を享受している唯一の国です。

 世界を巡る農業情勢が徐々に厳しくなっていく中で、食糧自給率が39%の日本の農地が、休耕や後継者不足で放棄され、荒れていっているのはどうかなと思いますね。私は日本も株式会社の農業参入などを含めて、徐々に農業の生産体制を整えていかねばならないと思う。

20:02
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