(07:04)本を一冊紹介します。「イスラム金融入門」です。私も日経ビズポッドキャストで話題に取り上げるので勉強のために読んだのですが、なかなか良くまとまっていて面白かった。
ま普通は「イスラム金融」になんて興味を持ちませんよね。私もそうだった。しかし調べてみたら、HSBC、モルガン、シティなど世界で名だたる金融機関が真剣にこれに取り組みだしたし、一方ではイスラム教国が多いアラブ諸国の石油輸出代金は急増している。そして一方で、トルコでも女性がスカーフを巻くようになってきたことで示されるイスラム社会全体の純化も進みつつある。関連諸国の金融も純化の可能性が高い。
ということは、「イスラム金融」が世界でも伸びてくると言うことですが、実際にそうらしい。規模は1兆ドルという説もあるし、年間の伸び率もある見積もりによれば40%にも達しているという。日本の金融機関、関係者も当然注目せざるを得ない状況。
イスラム金融ではコーランの教えで「利子」が禁じられている、というのは良く知られている。私もそれは知っていて、イスラム金融というのは利子という概念を使わずに、いかに資金を回すかだという風に思っていた。それは間違ってはいないのですが、その他にもイスラム金融というのは面白い仕組みがある。
まず「シャリア」かな。この本によれば、シャリアとは「人のあるべき生き方を示す道」ということらしい。融資は投資もこれに基づいていなければならない。コーランが禁ずること、事業には資金を回せないというのです。酒造メーカーには融資も、投資も出来ない。博打もダメ。豚肉を扱ってはいけないと続く。
面白いのは、イスラム金融機関には何がシャリアに合致しているのか、違反しているのかを決める委員会として「シャリア・ボード」が設けられる。それが、「これはいい、これはダメ」ということを決める、というのです。
しかしこのシャリアはなかなかの優れものでなければならない。英語が出来、イスラム教のシャリアに詳しく、かつ金融とその仕組みを知らねばならない。麻雀で言えばリャンシの上の三役縛りというわけです。なかなかいない。シャリアは大学教授などが掛け持ちでなっているらしいのですが、彼等の所得は相当高いらしい。ま、シャリア・ボードでの審査は、言ってみれば「デューディリ」です。
また面白いと思ったのは、「お金に色はない」というけれど、「これはいい、これはダメ」とシャリアに基づいてお金の行き先に評価を与えていくのは、考え方としては「社会的責任投資」(SRI)に似ている、と思いました。吉田さんもそういう考え方のようです。
この本には、イスラム金融の形がいっぱい紹介されている。65ページには融資関連だけでも存在するイスラム金融の形が名前付きでずらっと紹介されている。覚えきれません。覚えたのは、ムダラバとムラバハくらいかな。ハハハ。
債券取引(スクーク)もあって面白い。ビズポットキャストでも取り上げますので、乞うご期待。本は面白かった。