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2008
10/01
Wed

2008年10月01日(水曜日) リーダーシップ・クライシス

day by day

 (09:30)今日から10月ですか。昨日一緒に軽く飲んだある企業の元経営者が、「あのアメリカの株価暴落が一日遅かったら良かったのに」と話し始めた。日本の企業にとっては上期決算は9月30日。その日の前日(29日)にニューヨークの株価は777というパチンコだったら大当たりのような急落(ポイントとしては史上最大)。東京の株価も日経平均で500円近い下げ。

 企業は期末に保有証券の評価換えもする。値段が前期末より評価が下がったら、それをちゃんと決算に表示し、入れないと行けない。時価会計ですから。昨日たまたま見たBBCで英野党・保守党の党首が「時価会計システムの持つ矛盾」を盛んに指摘していたし、米議会の議論の中でも「時価会計ってどうなのよ」というものもあったし、法案にも潜り込んでいたようだ。しかし否決された。しかし、世界各国でこの制度は依然として保持し続けられている。もう簿価制度に戻した方が良い、という意見も必要なのだが。

 会計制度に基づき、日本の企業の多くは9月30日の引けの安くなった株価で保有証券を評価をする。決算の見栄えが悪くなるわけです。むろん最初から良くはないが、9月30日当日の下げで一段と悪くなった。元経営者は現役との会合を終わって、それを嘆いているのです。

 昨日の早朝に文章を書いて以来30時間以上が過ぎて、その間に起きたことと言えば、29日のニューヨークの株の下げが結局777ドル(%では7%くらいで、これは歴史的に見ればそれほど大きくはない)で、その後東京などアジア株が大きく下げて引けた後、30日の欧州当たりから反発の気配が広がり、30日のニューヨークの株価は多分ドレッシングもあったのでしょう、ダウで485.21ドル、Nasdaqで98.60ポイント上げたまで。

 しかしウォール・ストリート・ジャーナルの30日のニューヨーク市場の株の上げに関する表現は、「a whiplash-inducing rebound」。「whiplash」とはなんぞやと辞書を引いたら、「むち先のしなやかな部分,むちひも」とあった。なるほど、あくまでこの上げは昨日大きく下げたあとの「むち先の遊びのような反発」という印象ということか。

 株価の動揺を見て、「今度は議会も動くだろう」という楽観論が台頭しつつある、ということですが、私が気になるのは「アメリカにおけるリーダーシップ・クライシス」です。ブッシュも、共和党指導部も、ペロシ下院議長など民主党指導部も、そして両大統領候補も、米下院の一般議員の投票行動に十分な影響力を与えられなかった。一般議員が気にしたのは、11月4日に迫った選挙だった。

 今朝の新聞には、議席確保が難しかった議員ほど、「NO」を投票したという分析があるが、これは先週以来議員に地元から来ているメール、電話などが圧倒的に「ウォール街救済に反対」という声だったことを考えれば理解できる。

 昨日のニューヨーク・タイムズに私が先週以来言っていることに非常に近い表現があった。

the difficulties of dealing with fast-moving emergencies through the slow-moving and inherently political legislative process.
 私は月曜日の日経CNBCの番組で、「先行する市場、遅行する政治」と言ったのですが、今回のアメリカの民主的プロセスによる下院審議と投票はそれをよく表している。そういうことからも、火曜日のアンカーでは、「市場のスピードにまだ近い早さで動けるのは当面は中央銀行だけ。政治プロセスに時間がかかる間は、中央銀行が世界の金融システム、信用システムを支えないと」という話をした。

 30日のニューヨークの株価の反発には、「ワシントンは今回に懲りて、今度は金融救済法案を通すだろう」という楽観論が入っている。これに関しては、議会指導者やホワイトハウスの中には「下院で拒否された法案に微調整を加えるだけで、今度は通るのではないか」という楽観論もあるという。微調整とは何か。

 オバマもマケインも賛成し、そして13票(賛成は205だったが、法案通過に必要なのは218)を賛成に回すには、例えば預金に対する連邦保険の金額の上限を今の10万ドルから例えば25万ドルに引き上げる、などの案が出ているという。預金をしている国民には安心材料だ。また失業保険給付の数ヶ月間に渡る増額もアイデアだという。

 いずれにしても、「リーダーシップ・クライシス」は世界的な現象であるとしても、依然として軍事、経済で世界最大の国家であるアメリカで、しかも今の世界的な経済混乱の根っこであるアメリカでこれが起きているのは危険なことです。「世界に対して責任がある」ということは分かっているにしても、議員がその地位を与えられているのは「選挙区の選挙民の投票行動」からであって、マーケットからではない。議員は落ちればただの人というのは、日本でもアメリカでも同じ。

 ニューヨークの株の反発で始まった東京の株価も力強い動き。しかし暫く先を見ると、結局「世界的に信用システムは正常化するのか」ということでしょう。今の経済はすぐれて「信用のリンク」で出来ている。マネーが信用のリンクの中を移動する中で、商売も雇用も生まれている。

 その「信用」が傷ついたままだと、流れるような経済の動きは無理となり、極端な場合にはキャッシュ・ベースの決済になり、経済活動は大きく縮小する。なくなりはしません。しかし縮小する。縮小すれば成長率は著しく低下し、多くの職が失われる。

 その信用を補完しているのが今は各国の中央銀行ということです。欧州でも多くの民間銀行が国有化されたり、公的資金を注入されている。デクシアに対するフランス、ベルギー、ルクセンブルクによる64億ユーロの公的資金注入などが最新の動き。欧州では28日にフォルティスへの112億ユーロの公的資金注入が決まったばかり。アイルランドも国内の六つの銀行の預金と社債を全額保証した。イギリスではB&Bが国有化された。

 この大騒ぎの中であまり報道されていないが、ロシアなどでも大規模な救済劇が展開されている。株式市場そのものに対する救済策も。「信用」に対する疑念が晴れるのには何が必要か。その視点が今後は重要になる。株価の上げ下げとはまた別の視点だが。

09:33
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