住信為替ニュース                     

THE SUMITOMO TRUST & BANKING CO., LTD FX NEWS

                                    

    第1281号  1996年05月24日(金)


TOTALLY 100 UNTRUE
 為替を視点の中心に据えると静かな一週間でした。特にドル・円は107円前後を行ったり来たり。完全なレンジで、「さあ抜けた」とばかりに動いた人の負けの一週間。売りと買いの壁が両サイドに見え、さらにその両方の壁を打ち破って動くだけの材料がないだけに、静かな一週間でした。アメリカが今週の週末はメモリアル・デー連休であることも、市場の動きを鈍くしていた可能性がある。
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 こうした中で話題になったのは、「11月の米大統領選挙に向け、アメリカがドル高政策を維持する一方、日本は低金利政策で米市場安定に協力する密約がある」とのジョンソン・スミック・インターナショナルの報道。
 インターナショナル・ヘラルド・トリビューンによれば、ルービン財務長官は22日に記者団に対しわざわざこの報道に言及し、

totally 100 untrue
 
 と言明。またルービン長官は、

  1. 弱いドルはアメリカの権益にならない
  2. ドルが引き続き上昇した場合にも、アメリカの輸出がピンチに立つことはない

 などと述べました。
 今朝の日経にルービンが「101%ウソ」と言った書いてある(21面)のと「1%」違うという問題点はある(どちらの新聞が正しいのでしょうか)のですが、全面否定には違いない。
 一方、日本サイドでも、日本銀行の高官がこの報道を否定するかのように、景況次第での日本の金利引き上げを示唆。

CLINTON NEEDS STABLE FINANCIAL MARTS
 確かに今のクリントンにとっては「選挙に勝つ」ことが最大の課題。そしてその大きな前提は、経済が良い状態を保つことで、そのためにはニューヨークの金融市場が波乱なく安定していることが一番です。この安定を覆すような動きには、懸念を抱いてもおかしくない。
 過去4回の避難訓練では、「日本の金利上昇懸念」が市場を揺さぶったことは確かでした。そこにジョンソン・レポートのような見方が出てくる背景がある。そしてこうした見方は繰り返し出てくるでしょう。これに対し、日本サイドとしては「そんなことはない」と否定するしかない。否定しても、やはり取った行動が国際的にどのような波紋を呼ぶかは考えるでしょう。日本経済には好影響で、世界経済には「大きな影響なし」と判断したときに動ける。
 全体的な図式で見れば、今週一連のクリントン批判を開始したにしても、今年の米大統領選挙でのドールの候補者としての弱々しさは鮮明に残る。クリントン政権のサイドに、「万全を期したい」という気持ちがある一方で、「ドールの脅威」が低ければ低いほど、アメリカの政策余地も、従って日本の通貨当局の行動余地も大きくなる。
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 今週は、北朝鮮が再び注目された週でした。23日には、ミグ戦闘機で李チョルス大尉が韓国に亡命。「北朝鮮では生活ができないから」と言明。北朝鮮については、先週月曜日に世界食糧機構と国連食料農業機構(FAO)が、
 「経済の悪化が進む中で、北朝鮮の食糧不足は深刻さの度合いを増しており、
  今後数ヶ月以内に栄養失調(malnutrition)は全土に拡大する危険性がある」
 との特別警告(special alert)を発表しました。そこにきての、北朝鮮エリート(自己申告によれば)軍人の「北朝鮮では生活できない」発言と、実際の危険を犯しての亡命。今朝(24日)の朝日新聞には、世界食糧計画の高官の発言が掲載されていて、今回の亡命事件との関連が取り上げられている。
 状況証拠から見る限り、北朝鮮の現体制の崩壊は秒読みとまではいかないまでも、時間読み程度には接近したようです。食糧が不足し、石油の手当もままならないとしたら、変化が生ずる可能性は極めて高い。それがいつ、どのような形で発生し、極東経済や市場にどのような影響を及ぼすかが重要です。
 ただし、いたずらに危機意識を煽るのは賛成できない。ここまで予想されていることを市場が全く織り込んでいないということはないし、北に一番近い韓国の経済界の見方は日本よりよほど落ち着いている。北朝鮮経済の極東経済、世界経済に占める割合は極めて小さいし、人口は2200万程度、今の経済が苦しければ苦しいほど、現体制の崩壊で市場経済に組み込まれるのはスムーズかもしれない。
 ただし、現体制が崩壊した時のシナリオ作りは十分にしておく必要がありそうです。韓国経済や日本経済にとっても、いままで経験したことのない影響が現れる可能性が強い。 
 今週週末の「東京マーケット・フォーカス」はたまたま、「北朝鮮情勢」を取り上げます。

HAVE A NICE WEEKEND  
 大分暖かくなってきました。まだ寒暖の差が激しいのですが、温かい日の温度が上昇している。良い天気の週末になると良いのですが。
 今週は時間を見つけては、皆さんから紹介されたもののまだ行ってない蕎麦屋に行って味覚調査をいたしました。結構掘り出し物もあって、またまとめて紹介しましょう。来週は私が一週間連休ですので、このニュースもなしです。皆様には、良い一週間をお過ごしください。
                                ycaster@gol.com


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