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住信為替ニュース

THE SUMITOMO TRUST & BANKING CO., LTD FX NEWS

第1283号 1996年06月7日(金)

DOLLAR REMAINS VERY STRONG
 ドルは一週間を通じて強い展開を示しました。金融市場でまだ強い「信仰」を集めていたかに見えたボルカー前連邦準備制度理事会(FRB)議長の

  「110円超えてアメリカ政府が何もしなかったら、私は少し驚く」
  「ドル・円は100円が妥当レートで、動いて前後10%」

 という発言も50銭程度のドル安効果しかなかった。また、今朝の新聞に載っている通り、アメリカの自動車メーカーはドル安に懸念を表明しましたが、ルービン財務長官がすぐに、「強いドルはアメリカの国益にかなう」と発言。ドルは109円台で強いまま推移。110円にトライするにはまた力不足ではあるものの、「売るに売れない」という状況。

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 アメリカの自動車メーカーが110円に接近しようとしているドル・円相場に不満を漏らして政府に圧力をかけようとしているのも、ルービンがこうした圧力に抵抗して「強いドル」を信奉している旨表明しているのも十分に理由のあることです。

 最近の米国産自動車の日本における売り上げ増加は著しい。日本人が外国車アレルギーをなくしつつあること、海外メーカーの日本国内でのメンテ体制も整ってきたことなどいくつかの要因はありますが、価格も一つの決め手になっている。もし米自動車メーカーがドル安のころ享受していたプロフィットを確保しようとしたら、ドル高は価格引き上げ圧力になる。しかし、では115円になったら米自動車メーカーの日本での販売台数が急減するかというと、そうはならないと思います。メーカーの利益は少し減るかも知れませんが、日本人の購入パターンから見てもそうなるとは思えない。多少為替が動いたぐらいで売れなくなる車を作っているとしたら、未曾有の円高に耐えた日本の自動車メーカーから見て、米自動車メーカーの競争力などたいしたことではないということにもなる。米自動車メーカーは警報を早く打ちすぎている感じがする。

 これに対し、ルービンが「強いドル」に支持を表明しているのは、「強いニューヨークの金融市場を保ちたい」という考え方も無論ありますが、もう一方で、自動車など依然として競争の厳しい商品は別として、アメリカのいくつかの産業分野で国際競争力の強い部門が台頭していて為替相場にあまり影響されなくなったのと、国民経済的に見ても少しドル高になった方が米企業や国民の対外購買力が上昇して良いという考え方があるのではないかと思います。無論ルービンはそこまでは言っていない。しかし、どうもクリントン政権の一部にはそういう考え方があるような気がします。アメリカで自動車メーカーの立場にほとんど配慮しない財務長官というのも久しぶりです。

WAITING FOR TWO BIG GUYS
 ドルは強い地合で推移する中、債券相場も反発しました。利回りは低下。いくつかの要因がありました。

  1. 水曜日の引け味が良かった
  2. 何人かのFRBの理事が、今年下半期にはアメリカの経済成長率は2%の持続可能水準に低下する、と言明した
  3. 最新の失業保険申請者統計で、数字が増加した
  4. グリーンスパンFRB議長が、「インフレは抑制されており、景気の回復にもかかわらず、職を巡る不安感は来ていない」と述べた
   

 など。

 あと、欧州でイギリスとフランスがちょっと予想外の利下げをした事も、市場の先行き懸念を弱めた可能性がある。

 いつも揺れているのですが、5月の雇用統計を前にしたアメリカの金融市場の全体的な見方は、「FRBの利上げは先送りされた」というもの。ただし、今朝も色々なニュースを読むと、やはりFRBの理事や地区連銀の総裁の考え方もかなりバラバラ。サンフランシスコ連銀のペリーは依然として

 「自分が予想している2.2%の成長率でも、1991年以来続いている3%未満

  のインフレ率が上昇してくる危険性がある」

 と述べている。一方、ダラス連銀のマックティアー総裁は、「当面利上げは必要ない」としている。

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 本日は、日米で極めて重要な指標が二つ発表になります。言って見れば、「MINI-SUPER FRIDAY」。日本の統計は「短観」で午後2時、アメリカの統計は「5月の雇用統計」で午後9時30分。予想は既にいやというほど出ていますからここでは取り上げませんが、どちらの統計も反応は極めて難しいものになるでしょう。この二つの統計が、特に金利面で当面の相場動向を決めると言っても過言ではない。

 為替市場を考える上で非常に重要なのは、日本の貿易収支構造の大幅な変化です。今週発表になった5月上中旬の貿易統計では、1798億円もの赤字が出た。輸出は8%増えましたが、輸入は31%も増加。コンピューター関連、自動車分野で大幅な輸入増加が見られた。5月全体でも赤字という説と、全体では黒字という説が分かれているようですが、「今年は年間で1000億ドルちょっと」と見られていた日本の対外黒字は大幅に減少しそう。こうした大枠での動向を見失ってはならないと思います。当面の為替相場予想については今週半ばに作って、カスタマーに渡しておきましたから、入り用でしたらご請求ください。

  OPEC総会は二日目に入りましたが、難航しているようです。どこがイラクの輸出再開で増える石油を吸収するかでもめている。今朝のOPECに関する英文記事を見ながら、「知らん奴が多いな」と思いました。以前はOPECの石油相というと皆知っていた。最近は誰が誰だか分からない。

HAVE A NICE WEEKEND
 「気持ちよい」を通り越して「暑く」なってきました。オフィスにおける私の席は、南西方向の窓に近い所なのですが、日中は結構暑い。昨日も午後2時頃は温度が上がってきて隣の今西と、「暑い、暑い」と文句たらたらでした。もう少し経つと、上を着て出勤するのが嫌になることでしょう。

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 ところで、皆さんとの約束をやっと果たせることになりました。URLで、

http://www1.meshnet.or.jp/STB/
http://www2.gol.com/users/ycaster

 の二つのフロントから住信為替ニュースを読めるようになりました。上が住友信託銀行のホームページ、下が私のホームページ。住友信託銀行のホームページは以前からありましたが、今回は私がホームページを設けたもの。二カ所に置くことも考えましたが、それも面倒。メンテは私がしなければならないので、私の所に起きました。しかし、当然ながらハイパーリンクしていて、リトリーブにかかる時間はほぼ同じです。

 あとのホームページには、ニュースレターだけでなく、私が最近書いた他の文書(これにも結構力を入れました)も入っています。一つお断りしておかないといけないのは、「最新号」(今の場合はこの号ですが)は、インターネットの方がファックスよりかなり遅れる。なにせ、HTMLもこの2週間で覚えたばかり、FTPに至ってはやっと昨夜、「ああこうすればいいんだ」と分かったばかり。本当に今週は一週間、頭がメキメキ音を立てているのが分かりました。こんなに短期間で新しいことをたくさん覚えたのは久しぶりです。

 住信為替ニュースの各号は現在「WORD文書」として打っていますが、これをINETに載せるとなるとHTMLに変換し、それにGIFJPG(絵や背景模様)を与え、FTPでプロバイダーのサーバに送り、とやることがいっぱいある。この号もインターネットで見れるのは明日になるかも知れない。段々早くなるでしょう。私のHPは、ハイパーリンクも結構入れましたし、何よりも上品で楽しいページを目指しました。

 ひとつ、サーバに設けられたを領域をじっと眺めながら、「これは色々なことできそうだ」という気がしてきました。例えば、サーバに特定領域を確保し、そこに特定の情報を置く。その上で、これは例えばの話ですが、一定の資格をもつお客さんだけにアクセス権を与える(URLをもってもらう)といったことです。私は良く知りませんが、多分こういったことの延長にイントラネットがあるのでしょう。私が確保したサーバ領域だけで10MBある。これには、膨大な情報が入れられます。6回以上前の「住信為替ニュース」も当面はHTMLとしてサーバに残しておくつもりです。

長くなりました。皆様には良い週末を...........
ycaster@gol.com