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住信為替ニュース

THE SUMITOMO TRUST & BANKING CO., LTD FX NEWS

第1284号 1996年06月10日(月)

                          

WATCH PRICE INDICATORS
 今週も予定の多い週です。まず注目されるのは、アメリカにおける二つの物価統計でしょう。既に日本の新聞で報じられている通り、5月の雇用統計は同国経済の強さを浮き彫りにしました。5月の非農業部門就業者数は34万8000人と、アナリストの大方の予想である16万から17万人を二倍以上上回った。加えて、僅少だったと発表されていた4月の同就業者増加数は、16万3000人に大幅上方修正。二ヶ月で、50万人分以上の職が創造されたことになる。今年に入ってからの月間平均就業者数増加は約22万2000人で、これは1994年以来の強さ。

 気の早い向きは、7月初めに発表される6月の雇用統計の数字を見て、連邦準備制度理事会(FRB)が利上げに踏み切るとの予測を立てています。しかし、経済活動や雇用の強さがそのままインフレ圧力につながっていると考えるにはまだ疑問の余地のある。その意味で今週発表になる5月の物価統計は注目です。(火曜日11日が卸売物価、水曜日12日が消費者物価)

 予想は、PPIが全体は+0.2%、コアが+0.1%、CPIが全体は+0.3%、コアは+0.2%。総じて低い伸びしか予想されていない。このところのアメリカ経済は、生産や売り上げ、雇用の数字で「インフレ懸念」を高め、物価統計でその懸念をさますということを繰り返している。今回がどう動くかは注目されるが、依然として7月のFOMCで直ちに金利引き上げがあると見ている向きは少ないようです。

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 米金融当局が利上げをするかどうかで大きなポイントは、FRB

 

短期金利を上げないことが長期金利の上昇につながっている」と考える事態が発生するかどうか、それが来るとしたらいつか

 だと思います。長期金利の上昇は、アメリカの住宅市場などに対する影響が大きい。景気の足を引っ張ります。過去のFRBの政策を見ても、不作為が長期金利の上昇を招く危険性があるときには、行動に移してきています。

 インフレ圧力という点では、やはり今後の焦点は5月の雇用統計の中にも少し現れている労働賃金の上昇傾向の行方でしょう。米労働者は、現在の民主、共和両党に不満で「労働党」を作ろうとの動きも示していると伝えられるが、この辺の動きも大統領選挙を控えて念頭に置いておいたほうが良さそうです。

RUBIN VS U.S. AUTO MAKERS
 110円に接近したドル・円相場に米自動車メーカーの一部から懸念が表明されていることは先週のこのニュースで報じました。今週は11日にルービン財務長官と米自動車メーカー代表の会談が予定されている。会談がどのような形で行われるか不明だが、米自動車メーカーサイドは、

  1. 現在の円相場に対するドル高が続けば、ぜっかく増えだしたアメリカ・メーカーの対日自動車輸出が打撃を受ける危険性があること
  2. それによって、日米間の不均衡が再び拡大する可能性があること
  3. 従って、アメリカ政府が政策としてドル・円相場を110円の前後で止める政策を取るよう要請する

 ことになりそうです。これに対しルービン財務長官は、

  1. 強いドルが長期的に見た場合のアメリカの国益に沿ったものであること
  2. 日本の貿易収支の黒字が、最近の円安にもかかわらず減少を続けていること
  3. 日米自動車産業の構造改革がかなり進み、多少のドル高・円安ではこの構造変化は不可逆的であると思慮されること

 などを指摘するでしょう。ルービン財務長官としては、1)の中に現在のドル高傾向

 の継続が再び長期債利回りで7.03%まで上昇してきたニューヨークの金融市場の安定のために必要である旨の意を込めるでしょう。全体的に見れば、金曜日に指摘したとおり、米自動車メーカーの思惑通りクリントン政権が動く可能性は少ない。ただし、業界が労組を含めると膨大な「票」を抱えていることは確かであり、政権と業界の話し合いの着地点はよく眺めておいた方が良さそうだ。

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 日銀短観後の日本の金利動向も重要である。短観は、「予想より強かった。しかし、日銀が金利を操作しそうなほど強くはない」という評価のようです。しかし、2〜3日前の予想が「弱気」に傾いていた分、円債は売られ、金利は上昇した。

 先週末のドル相場で特徴的だったのは、円金利の上昇気配、ニューヨークの債券相場の売り基調にもかかわらずドル相場強い地合を維持したこと。その分だけドルの強さが際だっているわけだが、これは円金利の上昇幅、ペース次第という面もある。

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 今週のその他の主な予定というと、

 など。

HAVE A NICE WEEK
 週末はいかがでしたか。天気は西から崩れていたのに、関東は何とか持ちこたえたということでしょうか。日曜日の東京周辺の道路は朝はがらがらでしたが、夕方は結構混んでいました。雨が降らないのを見て、出かけた人が多かったのではないでしょうか。

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 ホームページ(http://www2.gol.com/users/ycaster)の方はおっかなびっくりですが、各セクションの構成を変えてみたり、新しいページを作成したりとプロバイダーのサーバーとキャッチボールをしています。何せ、一つ間違うと結構多くの人に見てもらっているHPのデータ全部が消えたり、壊れたりする危険性がありますから、「慎重対応」が望まれ、いつになくキーボード一つ押すにも神経を使う。一つ不都合なことだと思ったのですが、コンピューターも前に進めば進むほど、英語のマニュアルしかない。英語で技術的な文章を読まされるのは疲れます。

 まだ開設して3日目ですが、どこでどうお知りになるのか、またそういう連絡網があるのか、結構あちこちのHP保有者から「リンクを張らせてください」とか、もっと前に進んで、「もう張らしてもらいました。不都合ならご連絡ください」というメールが届く。私の方には個人の方のHPにリンクを張るページがまだ用意されていませんから今は無理ですが、将来はそういうページも作ろうと思っています。リンクは、一応相手のページを見させていただいてOKさせて頂いてます。皆さん結構立派なページを作られておられる。

 昨日の日経新聞13面に「“大本営発表”のたそがれ」という興味深い記事がありました。私も金曜日はロイターやテレレートの速報画面に注視していて気がつかなかったのですが、このニュースの5月20日号(1280号)で紹介したNiftyserveにおける日本銀行のページには、「5月調査時点短観」は正式発表の午後2時とほぼ同時に「要旨」がアップされていたようです。私も今朝チェックしてみたのですが、確かに登録日は「6月07日 14:00」とある。ということは、日銀サイドとしては全く正式発表時間に「短観」をネットワークで公表していたことになる。各種統計のネットワーク公表時間に関しては5月の20日に日銀関係者に聞いた範囲では「まだ決めていません」ということでしたから、行内で「on time」でということになったのでしょう。ナイス。

 最近「これが欲しい」といつも思うのは、各種貿易統計の内訳です。これが大蔵省から瞬時に公表されたら、随分と助かる。MOFのINET PAGE(首相官邸のページから入れます)も充実されるものと期待したい。

  それでは、今週が皆様にとって良い一週間であることを望みつつ。(でもマーケットは難しそうですね)
               <ycaster@gol.com>