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住信為替ニュース

THE SUMITOMO TRUST & BANKING CO., LTD FX NEWS

第1288号 1996年06月24日(月)

G7 ISSUES REPORT ON CURRENCY AND FINANCIAL MART
 今週の焦点はなんと言ってもサミットでしょう。この年に一度の会議のトーンで当面の日本の金融政策や、各国の通貨に対する基本的な姿勢が示されるはずです。

 週末のニュースでまず気にかかったのは、ルービン米財務長官が

  「サミット参加国は、来週のサミットにおいて現行為替レートと金融市場の安定に関し 
 てレポートを発表するだろう」

 と述べている点です。日本の新聞には私が見た限りではあまりこれに関する記事は載っていないのですが、私はこれを日本時間の土曜日の朝ネットワーク上の「NANDO TIMES」で見つけました。同長官はこのレポートについて

  「このレポートは通貨市場に大きな波乱を起こす目的で出されるものではなく、逆の
 インパクト、つまり落ち着きをもたらす目的を持つモノになる」(is "not designed to
create a lot of waves" in currency markets,and was intended to "have a reverse
impact--calming")

 と述べている。ですから、あまり生臭いモノにはならない可能性が高いのですが、我々市場関係者の眼から見ると、今の通貨市場は十分calmingしていると思えるのに、どんなレポートが出てくるのか注目です。このレポートはサミットが出す正式コミュニケに対する「付属文書」(ADDENDUM)として出されるようです。

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 今朝のMCMはこの点に関連して一つのニュースを流している。ルービン財務長官の発言としての

  1. 今週開かれるサミットでは、アメリカは“より強いドル”(STRONGER DOLLAR)を求めない
  2. 欧州諸国もサミットでは“より強いドル”を求めはしないだろう

 の二点。MCMはこの点に関して、ルービン長官は昨年夏のG7が為替相場の

ORDERLY REVERSAL」をうたって以降のドル相場の上昇で、このプロセスがほぼ完了したと考えている証拠ではないか、との解説を載せている。しかし、これはMCMの解釈です。

WILL HAVE IMPACT ON JAPANESE FINANCIAL POLICY
 G7での議論の帰趨は、日本の金融政策の行方に大きな影響を与えるでしょう。ここで日本が何らかの「国際公約」をさせられると、日本の金融政策の自由度は著しく制約されることになる。

 先週から始まっている一連のアメリカ政府高官のサミットに向けた姿勢方針表明を見ると、大統領選挙を控えた同国クリントン政権は、日本には現在の「超」のついたままの金融政策を維持して欲しいようです。そしてこれをサミットの場で「公約」として残したい意向のように見える。

 これに対して、松下日銀総裁などがどのくらい金融政策策定の自由度を確保できるかがポイントになるでしょう。正式コミュニケは、「日本は景気回復を盤石なものにする.....」といった表現になるでしょうが、日銀には大蔵省との意見調整の問題もあり、どの程度自由度を確保できるか、が重要な問題点として残ります。

 例えば、日銀がサミット後に景気が盤石になってきたことなどを理由に「超」の文字取りを行った場合に、意見調整がうまくいっていなかったりしてアメリカ政府がこれに不満の意を表明したりすると、世界の金融市場は思わぬ混乱に陥る危険性がある。サミットの場で、どの程度の摺り合わせができるかがポイントです。

UNEMPLOYMENT WILL BE TOP AGENDA
 サミット全体は、アメリカの成長率には満足の意が表明され、日本と欧州については依然停滞気味ではあるものの、回復の兆しが出てきたことに期待感と、一層この回復基調を盤石にするための措置採用の必要性がうたわれるでしょう。

 インフレに対しては一部セクターで上昇圧力が現れてきていることに懸念が表明されるかも知れません。しかし、全体としては「沈静化」したままであることに満足の意が表明されるはずです。

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 サミットが一番課題として取り上げるのは、「失業」の問題でしょう。欧州では1000万人以上の労働者が失業したままですし、日本でも歴史的に見れば高い失業率になっている。今雇用が一番伸びているのはアメリカですが、だからといって労働者が安心して将来の職を確信できる環境にはなっていない。

 サミットでは、

  1. 労働市場の流動化を妨げている諸制度の構造改革の必要性
  2. 労働者の再教育などのプログラム検討
  3. 新興資本主義国の労働者との競争に関する懸念表明

 などが行われる筈です。
 現在の「雇用問題」で一番重要なのは、技術革新の著しい進展の中で、需給が著しいミスマッチになっているという点です。つまり、企業が欲しい人材、または社会が必要としている人材と、労働市場が供給できる人材が数ではなく、「労働質」でミスマッチになっている点。景気浮揚だけでは解決できない問題がある。

 こうした中で、アメリカの労働長官であるライシュがかねて提唱しているような労働者の「教育制度」のようなものに関してサミットは徐々に取り組まざるを得なくなるでしょう。それぞれの国、労働者自身が直面している問題に関して、サミットとしてどのようなことができるのかがポイントになりそうです。

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 サミット以外では、アメリカでは25日に消費者信頼感指数(6月)が、26日に耐久財新規受注(5月)が、28日には第一四半期のGDPが発表される。日本では、25日に4月の景気動向指数、27日に鉱工業生産・小売売上高(ともに5月)、そして28日に5月の失業率・有効求人倍率が出る。

HAVE A NICE WEEK
 週末はいかがでしたか。やはりちょっと暑くて、湿度の高い日が多いですね。沖縄は梅雨が開けたそうですが、しばらく東京は蒸し暑い日が続きそうです。

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 今週は株主総会とか、それに伴う人事異動などでちょいがたがたする週になりそうです。日本中が。そうした中でサミットがある。週末の「東京マーケット・フォーカス」では危機が叫ばれている食糧に関して取り上げましたが、資料穀物が「迂回再生産」で牛肉1キロを作り出すのに(無論牛に食べてもらってですが)資料穀物が大量(ほぼ7キロ)に必要だとは知りませんでした。鶏肉は2キロの資料穀物で、1キロの肉を作れるのだそうです。世界中が贅沢になれば、膨大な資料穀物がいる。番組に関しては、編集後記を私のホームページ(http://www2.gol.com/users/ycaster)のCYBERCHATのコーナーに入れておきましたから、お読みください。

 次回の番組(6月31日)では、「東京市場の空洞化」を取り上げます。ゲストは、日短APの藤井社長です。為替ブローカーさんの世界では、「市場の空洞化」を実感できるようなことが最近いくつか起こっている。なぜ起こっていて、どう対処すれば良いのか、何かできることはないのかを検討したいと思います。

 それでは皆さんには、良い一週間を……                   

                                 <ycaster@gol.com>