INTERNET EDITION
住信為替ニュース
THE SUMITOMO TRUST & BANKING CO., LTD FX NEWS
第1289号 1996年06月28日(金)
《 MARK IS STRONG 》
ドル・円のレートは一週間を通じて108円の65銭から109円の69銭までのほぼ1円レンジの静かな展開でしたが、多少傾向として出てきたのはマルクの買い戻し傾向でした。この結果、マルク・円のレートが徐々に円安に移行し、今朝の同レートは72円前後になっている。
これは三つの背景を受けたものです。
――――――――――
最後の(3)については、金利据え置きを決めたドイツ連銀理事会のあとにティートマイヤー総裁が
「過去一年のドル、他の欧州通貨に対するマルクの減価に“満足”している。
しかし少なくとも現時点は、このマルク・レート調整は終了した」
と述べていることに端的に示されている。この発言を受けて、ニューヨーク市場のマルク相場は急騰、今朝のドル・マルク相場は1.52マルク台前後になっている。
ドイツ経済の底入れ観測は、今週の日本の新聞でも取り上げられていましたが、日本の「底入れ」と同様にあったとしてもその切れ目のはっきりしない、しかも回復基調は弱々しいジグザグの展開になるでしょう。日本と同様にドイツも多くの構造的な問題を抱えており、こうした構造的問題(労働市場の硬直性、企業に負担となっている高い社会保障システムなど)の解消は容易には進まないと見られている。
ですから、「ドイツ経済は底入れしたかどうか ?」「その回復のペースは ?」の議論は今後もはっきりしないまま続くはずで、その時その時の観測が、金利政策の先行きとあわせて、ドル・マルク相場に影響を与えることになるでしょう。
《 G-7 STARTED SUMMIT 》
リヨンでのサミットは、まずテロ問題で結束を示しました。サウジで会議の直前に大きなテロ事件がありましたから、この問題では合意しやすかった。しかし、個々の問題では前進したものもあれば、対立点を残したものもある。
日米で前進したのは、日本市場における外国製半導体のシェア問題と、日本の保険市場における外国保険会社の参入問題。これに関して、
「7月31日をデッドラインとする」
という橋本―クリントン合意でしょうか。
この合意に関してローラ・タイソン(大統領経済諮問委員長)は、「極めて前向きな展開」と述べている。橋本首相とクリントン大統領の性格からいって、また同大統領が選挙を直前にして日本との貿易問題で前進があったことを宣伝したい立場にいることを考えると、7月31日の交渉期限は守られる可能性が高い。しかし、仮に交渉期限が守れなかった場合に関しては、マッカーリー大統領報道官は、
「我々は自国の貿易法規をまじめに考えており、この法規を忠実に執行しなければ
ならない」
と述べて、「制裁」をほのめかしている。日米間には、この二つ(半導体、保険)以外に、航空、写真フィルムという問題がある。日米半導体問題に関しては、欧州サイドが日本の市場における外国産半導体のシェアに関しては数値を入れるべきでないと主張しており、交渉のスパンが広がる可能性がある。
サミットはまだ途中ですから、色々な合意が出てくるでしょう。今朝のWSJ INERACTIVE EDITIONのFOREXの記事の中には、このニュースが月曜日に取り上げた久しぶりのドルに関する付属文書にマーケットは関心を集めているとの記述があった。今の全体的な膠着相場の中ですから、材料を求める空気は強いと言える。
――――――――――
サミットの声明は、日本時間の午後10時15分ごろシラク首相から発表されるようです。海外の市場は十分反応できる。
あと、今週の市場で目立ったのは、木曜日に市場に伝わったジョンソン・スミック・レポートによる30年債利回りの約一ヶ月ぶりの7.0%割れでしょうか。
同レポートの内容は、連邦公開市場委員会(FOMC)は11月までは金利水準を変更しないだろう、というもの。
《 HAVE A NICE WEEKEND 》
総会の週だったと言えたかもしれません。市場が静かだったのは、そのせいかも。今朝の新聞は分厚い人事異動特集となっている。
私の回りでも異動がありました。まず部の名前が、今までの「資金証券部」から「総合資金部」に変わりました。より広い金融商品を扱うようになった。部長は、中村(審査第一部に異動)から幡部(これまでは年金運用部長)に交代し、副部長はロンドンから帰国した神庭。あと、香港から帰国した桑田が外貨証券室長になりました。あと私の下だと、オプション・デスクの南波が部の企画に異動します。各人に対するこれまでの支援を感謝します。INETでお読みの方にはあまり関係ないかも知れませんが。いずれにせよ、今後とも宜しく。
――――――――――――――
今週末の「東京マーケット・フォーカス」(テレビ東京、日曜午前9時)は、ゲストに藤井・日短エクスコ代表取締役社長においでいただき、東京の金融市場の直面している苦境、ひいては日本経済全体が直面している問題が端的に現れている東京外国為替市場の空洞化の問題を取り上げます。お楽しみに。