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住信為替ニュース

THE SUMITOMO TRUST & BANKING CO., LTD FX NEWS

第1290号 1996年07月01日(月)

DOLLAR TOUCHED 110 IN LONDON
 先週末金曜日のロンドン市場で、ドル・円相場は110円00銭をつけました。2回ほどで、同時に開いていたニューヨーク市場ではタッチしないという結構珍しいケースでした。ニューヨーク市場では、オプションがらみで110円を付けさせたくない向きが売りを並べていたと言われる。しかし一市場でも110円を付けたことで、相場としては当面の目安達成。ドル・円相場の110円は2年5ヶ月ぶり。

 ドル・円相場は、その後ドルの利食いの動きもあって109円台の前半まで下げましたが、ニューヨーク市場の引けにかけては再び109円台の後半に戻してきており、ドルの基調が強いことを示した。

  1. 日本の低金利持続見通し
  2. 日本の経常収支黒字の減少傾向
  3. 各国の全般的なドル高容認姿勢

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 今週の市場の鍵を握っているのは、機関投資家の動向です。ヘッジ率の高い向きもある。110円を見たことで、またドルがその後も底堅い展開を示していることで、どう動いてくるか。110を付けた円相場については、今朝の日経金融新聞の一面の左に水谷さんとクーさんが、「円高反転の可能性も」と述べている。

 確かにその可能性はあるのですが、例えば日本の経常収支黒字の減少については、去年の円高の影響があることは確かなのですが、筆者などは今回のサミットのテーマでもあった「経済のグローバル化」、それに「世界経済全体を巻き込んだ技術革新」の影響が非常に大きいと思っていて、円安になったから直ぐに黒字が再び増え始めるということはなさそう。その意味で、日本の黒字減少は構造的になりつつある。輸入の伸びはしばらく止まらないと見ます。

SUMMIT ENDED WITH STATEMENTS
 フランスのリヨンで開かれていたサミットは、例年通り経済宣言を発表し、そして議長声明(主に政治問題を扱う)を出して閉幕しました。今年はこれらとは別に為替に関する報告書も出すと言うことで若干の関心があったのですが、フランスが今年の春に作成を提案、各国当局が協議を進めてきたもので、必ずしも現状の相場水準に関するようなホットな報告書ではなかった。主なポイントは、介入の効果に関するもの。金曜日の日経の夕刊に出ていた通り、「介入効果は限定的」という内容のものでした。

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 サミットの主要テーマになった「グローバル化」に関しては、その光と陰に関心が集まりましたが、経済宣言の冒頭に述べられているように「新たなチャンス」との受け取り方が大方だったようです。欧州の一部にはその陰(先進国での失業増大、経済構造の大きな変革など)に着目しようとする向きもあったのですが、これはサミット全体の空気にはならなかった。

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 サミットでは「橋本首相の健闘ぶりが目立った」という外電がいくつも見られました。例えばINET上のロイター電は

  「HASHIMOTO SOUGHT TO MAKE STRONG G7 DEBUT

 となっていて、それにある程度成功したという評価。サミット後の記者会見の場でも「日本のイニシアチブ」のリストが公表されていたようですが、地雷除去から開発援助目標に至るまでかなり長い日本提案リストのほとんどが声明に盛り込まれたようです。これは議長国であるフランスのシラク首相との関係緊密化の結果だと報じられている。こうした報道によれば、フランスと日本が意見を異にした問題はただ一つ「先進国の失業の元凶は、開発途上国の低賃金労働か」という点だけで、あとは日仏の姿勢はすべての点で一致していたという。

 これに対し、各国と貿易紛争で対立しているアメリカに対しては結構厳しい姿勢が各国から示されたようで、「アメリカは守勢に立っていた」という報道が多かった。冷戦後のアメリカには、「残った唯一の超大国」「経済も唯一先進国の中でうまくいっている」という傲慢さがどこかにあって、それが各国の神経を逆なでしている面がありそうです。貿易紛争を国際機関にまかせずに二国間で解決しようと言う姿勢も反感を買っている。

MANY SCHEDULES
 今週は予定の多い週です。日本で日銀支店長会議(1日から)が、アメリカでは連邦公開市場委員会(FOMC、2日から)が開かれる。この会議を受けて日銀の首脳がどんな発言をするかにマーケットは注目するでしょう。市場の見方は、サミットでのトーンもあり日銀の利上げは先に延びたという見方になっていますから、それを覆すような発言があったときに、市場の反応は激しくなる可能性が高い。

 アメリカの経済指標としては、1日のNAPM(全米購買部協会)指数や個人所得、消費支出、2日の景気先行指標総合指数などがありますが、やはり注目は5日の雇用統計でしょう。FOMCに出席するグリーンスパンは、この統計を知っているとか、色々な説が出ている。今回はなくて、利上げはあったとしても8月というのが大方の見方です。毎回この統計には驚かされる。

 今週は木曜日がアメリカの独立記念日で完全に休み。ですから、金曜日のニューヨーク市場は薄いはずで、事実商品先物市場などは休みのところが多い。値が飛ぶかも知れません。

HAVE A NICE WEEK
 今日から今年も後半。速いですね。季節的にはけっこう暑くなりそう。昨夜の東京は熱帯夜にあと一度というところだったようです。ずっと気になっていた29日の天候は最高だったのではないでしょうか。3大テノール。行く予定でしたがテレビ収録の関係で行けず、結局券を何人かの人に買ってもらいましたから、気になっていました。どんな様子だったか聞いてみたいと思って会社に来たら、まずカスタマーの足立が、「すごく良かったですよ....泣いちゃいましたよ...」。今西も「文化人なら行かなきゃ」と。電子メールも来ていて「美空ひばりの『川の流れのように』が良かった」「カレ−ラスの声が戻ったのが...」と続く。行けなかった私は本当に悔しい。最後は5万人がスタンディング・オベーションだったそうです。お願い、JTBさん。もう一度やって。今週フジテレビが録画を流すそうです。

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 日短エクスコの藤井社長においでいただいた「東京マーケット・フォーカス」に関しては、私のホームページ(http://www2.gol.com/users/ycaster)のCyberchatのコーナーやNiftyserveの「金融プロフェッショナル・フォーラム=FKINYU」に「収録後記」を掲載して有りますからそれを参照していただくと良いのですが、為替の世界の人間には身近な話題でしたから考えさせられることが多かった。確かに日本の金融は為替を含めて「ローテク」です。悲しいながら。ただし、コンピューター化と空洞化は次元の違う問題で、空洞化が「日本的システムの不備ゆえに不必要に進展しているとしたら、それは除去しなくては」というのが番組の趣旨でした。税制、各種の規制、様々なコスト高など。

 暑くなって体調を崩しやすい。健康にはくれぐれもご注意ください。それでは皆様には良い一週間を。         

                                 <ycaster@gol.com>