INTERNET EDITION
住信為替ニュース
THE SUMITOMO TRUST & BANKING CO., LTD FX NEWS
第1291号 1996年07月05日(金)
《 YEN IS GETTING WEAKER 》
円がゆっくりと110円台に下落した一週間でした。110円に乗ったからといってそれをきっかけに大きく円安に振れるわけではなく、かといって達成感から一気に円高に行くでもなく。いろいろなレベルに言われていたロスカットやオプションがらみの玉などもあったのでしょうが、それと対峙する玉もあって、動きとしては大台変わりにありがちな神経質な展開はなく、全体には静かだった。市場の値動きが静かになった原因については、「東京市場のドル・円取引でシェア50%を越えた電子ブローキングの影響」とする声も聞かれますが、これについては、また検証しましょう。
市場全体を見ると、現在が「ドル高」ではなく「円安」であることは明確です。円が印象として一番目立って下げたのは対ポンド。ポンドは去年一時対円で139円程度に落ちましたが、今週は170円台。ポンドは他の欧州通貨(マルクなど)に対しても上昇しており、これは同国の高い金利、高い成長率、高い雇用創出力を反映したものと言われている。最近のインターナショナル・ヘラルド・トリビューンには、「EUは職場作りでイギリスを模倣すべし」(EU SHOULD IMITATE BRITAIN ON JOBS)というREGINALD DALEの記事が載っていましたが、為替レートの面でも、イギリスの復権は順調のようです。円は、ポンドに対して弱いマルクにも下げ基調となっており、全面安の展開。今朝のマルク・円は72円の45銭程度。
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円安の大きな原因の一つは、依然として続く貿易黒字の減少です。今週発表になった6月上中旬の貿易統計によると黒字は2006億1700万円で、これは前年同期比61.8%の減少。輸出が9.2%増に対して、輸入は33.2%増。輸入の増加ペースは止まっていない。
《 WHY JAPANESE SURPLUS DECLINES 》
日本の輸入増加の背景については、リチャード・クーさんあたりがその筆頭でしょうが、「もっぱら円高の結果」とする見方があるようです。しかし、筆者は去年の円高も入れて大きく三つ要因があると思っています。今週のはじめにクー氏に電子メール(彼はデジタル人間ではないので彼の秘書の方に)を打ったのですが、
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最初の1)は、私がよく指摘しているいわゆる「大競争時代」です。コストの安いところも高いところも土俵を同じくして競争し始めた。インフラ(道路、電気、港湾施設などなど)の差、労働力の質など問題はありますが、時間の経過とともに生産施設は最適地を求めて移動する。
実は、2)も重要です。たとえば、東京で設計図を作っても海外の工場にそれが届くのに一週間もかかっていたのでは話にならない。しかしコンピューター・ネットワークの普及によって、少なくとも相互の情報伝達という意味では、東京と大宮間も東京とシカゴ間でもほとんど差がない。私もインターネット上にホームページを作る際にデザイナーと画像からなにからネット上でデータやりとりしましたから実感できたのですが、今はデザインでもソフトウエアでも設計図でも、何でも瞬時に送れ、双方向で処理できる。CADなども空間を越えて出来るはずです。これが最適地生産を可能にしている。
今朝の朝日新聞の13面には「VTR輸入37%増−5月 年内にも輸出を逆転」という記事がある。VTRの前の家電の花形だったカラーテレビは日本にとって「輸入商品」になって久しい。VTRも同じ道を歩むことは明確です。自動車分野の黒字も減少している。
工場を移転すれば、多少円安になったからといって、また直ちに動かすわけにはいきません。ここでも時間のファクターが重要です。86年から続いている円高で、既に国内産業もいくつかは変質している。時間の経過の中で、人が散り、技術が散り、資本が散った産業もあるでしょう。ということは、輸入の増加もしばらく続くと言うことです。
《 WORRIES TO WEAK YEN 》
今週特徴的だったのは、日本国内からも「円安警戒論」が強く奏でられたことでした。橋本首相は、「急速な円安は良くない」と指摘し、豊田経団連会長も110円を大きく越える円安に警戒感を表明した。
既にこのニュースでは、日本の大手企業の多くが105円前後の為替レートを「居心地がよい」と感じている旨取り上げてきました。海外進出している向きにとっては、円安は海外生産製品の日本国内価格の上昇を意味する。興味深いのは、現在は日本とアメリカの両方から同じ程度に「円安警戒論」が聞かれることです。また、日本の景気に対する「円安のメリット」に対する疑念が生じてきたのも今週の特徴でした。これはいつか取り上げたことがあるのですが、株を見ても一段の円安を期待しているようには見えない。
相場が難しいのは、「だからといって円安に歯止めがかかるかは別問題」だということです。日本の機関投資家の資金がもっと縦横に動けていたら、円安はもっと素早いペースで進んでいたでしょう。2000年を越えたくらいから、日本の経常収支は赤になると言う見方もでている。こうした中では、相場が一人歩きする可能性は十分あります。
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金利を見ると、FOMCは今週の会議で「変更なし」を打ち出しました。しかし、今朝のいろいろな解説を読むと、8月20日の次回会合では「利上げを決める」との見方が強いようです。特にフェドファンドの誘導目標引き上げを見る向きが強い。「景気拡大のペースは速過ぎるから」というのがその見方の根拠ようです。
その意味では、日本時間の今日夜に発表になる雇用統計が一つの目安になるでしょう。ここ数ヶ月、ずっと強い数字が続いている。5月は34万8000人の増加。6月の予想増加数に関しては、最新の予想では非農業部門就業者数で11万5000人増程度を見る人が多いようです。失業率は5.5%(5月は5.6%)への低下予想が強い。
《 HAVE A NICE WEEKEND 》
だんだん暑くなってきました。が市場は全般に、「高値模索ながら、もちあい圏」とい熱くならない展開。つゆのせいでしょうか。そうですね。今日は、私のインターネットのホームページの「EATING
OUT」のコーナーから「SHOWBIZ」のセクションを紹介しましょう。気分が晴れる店があるかもしれない。
ShowBiz
夜の楽しいひととき、食べてばかりいてもしょうがない。ショータイムですよ....!
永尾(06-343-2800)
大阪の北新地にある店です。トランプを使ったテーブル・マジックが見物。食べ物はありません。スナックだけ。大阪に出張して時間がある時は、いろいろな人と一緒に行きます。見ていて楽しく、不思議。永尾さんは「ほな、はっきりさそう..」が口癖ですが、見ている方はちっともはっきりしない。「あれ!!!!!!」という気持ちが強まるばかりです。この店には、いろいろな人が訪れた写真がいっぱい残っている。それも楽しい。アメリカの有名な女優、政治家。自慢になるかどうか知りませんが、島田陽子さんと膝がぶつかったこともあります。ただし彼女は青年実業家風の男を連れていた。
店は小さい。カードテーブルにつけるのは10人いなかったと思います。あとはカウンターが5席くらい。だから並んで待っている人が多い。
La Carte(03-3354-0077)
カードを使ったテーブル・マジックの店なら東京にもあります。新宿の厚生年金会館の近くにあるこの店。こちらの店はちょっと大きい。軽い歌のショーもやっている。こちらはキッチンが充実していて、食べ物もできます。「永尾」がもっぱらトランプ・カードを使ったマジックなのに対して、こちらはネクタイも使えば、靴も使う。ちょっと幅が広い。 迂闊にいって、ネクタイや靴、さらにはワイシャツを取り上げられないことです。ここもリーゾナブルな値段で楽しめます。
BlueNote(東京 03-3407-5781 大阪 06-342-7722)
ニューヨークが本拠の有名な店です。しかし、東京と大阪では「ゆったり度」がまったく違う。むろん、大阪はゆったり。東京はギュウギュウです。毎週いろいろなゲストを招いて、ジャズを演奏している。東京は青山にある。大阪はたしか大阪駅の近くだったと思います。(ただし、全くうろ覚えですが) その週になにをやっているかチェックして行くのが良いと思います。結構好き嫌い、当たり外れがある。少なくとも東京の店は結構並びます。だから「気軽にジャズ」という雰囲気ではない。
Body and Soul(03-5466-3348)
「気軽に」ということだったらここです。この店には「何をやっているか」調べて行ったことはない。ふらっと行って、そこでやっているジャズを聴き、軽く酒を飲んで食べて帰ってきます。ちょっとややこしいところにある。これも青山で、「BlueNote」の先のHUNTINGTONのビルを右に曲がって、左に行って右→地下一階とうまく説明できない。ここはゆったりできます。「BlueNote」ほど肩はこらない。気楽にいっぱいという感じで音楽を楽しめます。
OH-Garson(オーギャルソン06-212-1469)
大阪のショーとドリンクの店です。ショーは華やかで、結構楽しめる。狭い舞台ですが動きは活発で、出演者が次々に奇抜な衣装で着替えては登場する。必ずしも精緻なショーではないものの、動きと衣装が楽しめる。
大阪では結構人気があるらしい。ショーが終わると、出演者が降りてきます。女性に人気があると聞きました。新しい種類のショービズと言える。
「金魚」(03-3478-3000)
最近行った店です。ショーは「OH-Garson」とよく似ている。しかし、ショーの規模はこちらの方がはるかに大きい。天井が高く、そこを人間が宙刷りで飛びます。ここがすごいのは、舞台のせり上がり、下がりがきわめて頻繁・急激なのですが、出演者がその中できちんと踊りきること。相当訓練している。でなかったら簡単に大けがをしそうです。「プロ」を感じさせます。とにかく華やか。
食事は推薦できない。飲んでショーを見るのが良いと思います。「金魚」と聞くと「特殊な店」という印象がしますが、心配する必要はありません。すごい人気になっているようで、女性連れが多かった。予約を推薦します。
(ただしこの手の店は頻繁に変わりますから、ご自分で確認を―――96/6/27) <ycaster@gol.com>