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住信為替ニュース

THE SUMITOMO TRUST & BANKING CO., LTD FX NEWS

    1996年07月12日(金)

TECHNOLOGY ISSUES UNDER PRESSURE
 先週末に発表になった雇用統計を受けて、今週のニューヨークの金融市場は不安定な動きを示しました。特に木曜日のニューヨーク株式市場では、株価が一時大きく下落。ダウで下げ幅は一時ほぼ135ドルに達した。引けは83ドル11セント(1.48%)程度で大きくないのですが、ニューヨークの株は既に先週末に115ドル近く下げており、今週初めも弱かった。

 金利の引き上げを巡る不安感が、ニューヨーク株の調整局面のトリガーになっているようです。アラン・サイナイは、

  「金利上昇下で、アメリカ企業がどの程度収益を上げられるかに市場の関心が集ま  
  っている」

 と指摘します。大きく下げたのは、テクノロジー株でした。ヒューレッド・パッカードを中心に下げた。この間の事情は、テクノロジー株が大量に入っているNASDAQの株価が木曜日だけでパーセントにして3.05%下げていることでも明らかです。NASDAQとしては史上3番目の大幅な下げ。今朝の日経には、「米ハイテク産業 一部にかげり」という記事がある。但し、これまでがはやし過ぎだったとも言える。

 利上げに関しては、8月20日を待たずに、0.5%の幅という説があり、この辺を巡る不安感が、ハイテク企業の収益下方修正見通しの中で、株価を不安定にしている。これまでのニューヨーク株の上げをひっぱてきたのは、ハイテク株ですから。無論、「 FLIGHT TO QUALITY」の動きも顕著です。指標30年債で7.20%近くに上昇した債券を見せられれば、資金をそちらに振り向けたくもなる。事実そうした動きだったようで、債券相場は、株が下げるのと反対方向を向いて、7.14%から7.05%に低下した。

DOLLAR UNDER PRESSURE
 ニューヨーク・タイムスによると、今年1―6月にニューヨークの株式市場に流入した資金は、去年一年間に流入した規模に相当するという。今後もこのペースが続くかと言うと、そうでもなさそうだ。これも今朝の日経ですが、9面の下に、「米株式投信への資金流入40%減―6月前月比」という記事がある。

 こうしたことから、「ニューヨークの株式市場は、高値から5〜10%は調整の局面」との見方が強まっているようです。ただし一方で、引値が5500の大台を維持したことで、「それほど心配することはない」という意見があることは確か。筆者自身としては、アメリカ株の長期的見通しは、同国経済の長期的見通しと同様に、まだ明るいと思います。

 市場が「利上げ催促相場」になってきた現状からは、FEDが明確な方針を示した方が、市場は落ち着く可能性が出てきました。FEDはこうした市場の動きを注意深く見守っているはずです。今週は週後半に穀物相場が大きく上昇、先週発表の雇用統計で示された労働賃金の上昇傾向と合わせて、インフレ懸念(少なくとも懸念)は高まる危険性があるためです。

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 株価が大きく上下する中で、ドル・円相場は静かな展開だったようです。110円には接近したものの、それ以上売り込む向きはなく、110円台前半での小動き。当社のニューヨーク支店の岡は、「参加者がいない」と嘆いていました。相場が動くから各筋が動き、これに乗ってくる向きもある。動かなくなれば、人気は離散します。

 ドル・円を売り込めないのは、月曜日のこのニュースにも、また「収録後記(7月7日)」にも書きましたが、基本的に日本の経常収支の黒字の減少傾向が止まっていないからで、早ければ2年、遅くとも5年先には今のままでは「赤字」になるという予想がある。

 今朝の新聞には、日本人の海外旅行が今年の夏は333万人で過去最高になる、と書いてある。円安で海外旅行は多少割高傾向ですが、トレンドは変わらない。ということは、貿易外のところで「赤」が膨らむと言うことです。貿易収支の黒の減少のペースも速い。従って、ドルを売り込むのは難しい。日米財界人会議で「ドルの上限」に関する議論が出た直後では同通貨を買うのも難しく、結局サンドイッチ状態。為替相場の動意薄はオプションのボラティリティによく現れていて、今までを知っている人なら買いたくなる水準まで下げている。しかし、ちっともワークせず、セータだけやられるという状況。

HAVE A NICE WEEKEND
 今週もAWAYからのアップとなりました。といっても、デジタル時代においては、東京から発信していないからそれがAWAYかというと全く違う。この号は長野県の諏訪から打っていますが、状況はほとんど同じです。違うのは、ここは新聞に「夕刊」がありませんから、私が無意識に「今日の日経」と書いても、それは東京では前日の夕刊に載っていた記事かも知れないという事実だけ。しかし、新聞もASAHI.COMや、NIKKEI Xで読めば、どこでも同じです。

 家族の調子が悪く今週は結局一週間諏訪にいました。金曜日の午後東京に帰りますが、その間に、二つ(「Mother」「Internit」)ほど文章をCyberchatのコーナーに入れておきました。お読みください。しばらくいろいろ実験します。ファックスでこのニュースを読んだ方、インターネットで読まれた方、NiftyserveFKINYUの6番会議室)で読まれた方。それぞれ、ご意見をお寄せください。

 台風一過でえらく良い天気。今週の「東京マーケット・フォーカス」は、証券業界の風雲児、松井証券の松井道夫社長をゲストに迎えます。

 皆様には良い週末を.........                                  <ycaster@gol.com>