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住信為替ニュース

THE SUMITOMO TRUST & BANKING CO., LTD FX NEWS

  第1296号 1996年07月29日(月)

SUPER-BUSY-WEEK 》 
指標の「釣瓶(つるべ)打ち」の週です。主な予定を挙げると
 29日     日本の6月の鉱工業生産
 30日     米第二・4半期の雇用コスト指数(employment cost index
         米新規住宅販売(6月分)
         米消費者信頼感指数(6月分)
         日本の有効求人倍率、完全失業率(ともに6月)
 31日     日米半導体協定の期限
  1日     米第二・4半期のGDP速報値 
            同デフレータ
         米6月の建設支出
         7月の米自動車販売
         全米購買部協会(NAPM)の7月景況指数
         7月末の日本の外貨準備高販売
  2日     米7月の雇用統計(失業率、非農業部門就業者数など)  

 並べるだけで疲れるくらい。今後のアメリカの金融政策を左右するような指標、日本の景況が分かる指標が相次ぐ。28日の「東京マーケット・フォーカス」では、私は今週を「SUPER-BUSY-WEEK」と表現しましたが、まさに指標連続打ちの週。アトランタ・オリンピックと会わせると、ちょっと眠れなくなりそう。

EMPLOYMENT COST INDEX
 一番注目されるのは、とりあえず30日の米第二・4半期雇用コスト指数でしょう。指標としてはあちこちで指摘されている通り、急に注目度が高まったという意味では「新顔」。しかし指数としてはずっと以前から出ていて、日本で発売されているアメリカの経済指標の解説本にもかねてから登場している。(チャートは添付資料参照)

 「雇用コスト指数」(employment cost index)ですから、雇用者サイドから見ての「雇用コスト」を全て含む。賃金、福祉経費など。欧州や基本の企業が賃金以外のところで支払っている雇用コストが高いことは既に良く知られています。この指数が注目されるのは、グリーンスパン連邦準備制度理事会議長のハンフリー・ホーキンス法に基づく議会証言からも分かるとおり、米当局が「インフレが起きるかどうか」の最大のポイントを現在は「労働コストの上昇の有無」に置いているため。

 経済のボトルネックが石油や穀物など原材料などではなく、逼迫してきた「労働市場」にあると判断しているし、統計もそれを示唆しているわけです。この指数に対する予想は、対前期比では0.8%の上昇。同指数は90年代ずっと下がってきていたものの、95年半ばから上昇基調になってきている。

 この指数との関連では、週末2日の雇用統計も重要です。ここでも非農業部門就業者数や失業率ばかりでなく、時間当たり労働賃金などの指標にも関心を払いたい。予想は非農業部門就業者数が20万人の増加(前月は23万9000人の増加)、失業率は5.4%(同5.3%)。アメリカでは「事実上の完全雇用状態」を示す失業率の水準が徐々に上がってきており、現在は「完全雇用」に極めて近いと見られている。予想は週が進むに従って変わるでしょう。

 ただし一つ念頭に置いておきたいのは、労働コストも「コスト」の一種ですが、それの最終製品価格への反映の仕方が従来とかなり違ってきているという点。これは既に連邦準備制度理事会も気が付いていると思うのですが、例えば今年の春に穀物相場が急騰したときも、シリアルなどの最終製品価格の上げ幅は極めて小さかった。市場の競争条件が厳しいのと、企業が製造工程に技術革新を取り入れて最終製品価格に反映しないように努力した結果と見られている。

 労働コストという「構造的なもの」が上下のある原材料価格と違うことは分かりますが、企業のコスト吸収努力が現在極めて大きく、最終製品市場の競争条件が国際的にも極めて厳しいことを考えれば、労働コストの多少の上昇も最終製品価格への反映度合いには、タイムラグがあるし、その程度も水源の部分ほどではないような気がします。

NUMEROUS NUMBERS
 あと消費者信頼感指数や米第二・4半期のGDP統計、NAPM指数なども重要です。GDP統計については、プラス4.0%という予想になっている。デフレーターは2.5%のプラス。NAPM指数については、55.0%の予想が強い。前回は54.3%だった。

 日本でも、30日に有効求人倍率が発表になる。指標ではないのですが、31日は日米半導体協定の期限となっている。相場への影響はどの程度有るかわかりませんが、日米が懸案をどのように解決するか注目したい。

 あまりにも多くの指標が出るので、それらが打ち消しあう可能性もありますが、週を終わって見れば、米金融政策の行方が決まっているという重要な週になるでしょう。

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 夕べは寝不足になった人が多かったのではないでしょうか。「多かったのでは」と言えば、有森選手に感動した人も。笑顔が素晴らしい。他の人がだらしないとはいいませんが、話を聞いていて持っているものが違うという印象。アトランタ・オリンピックは、突然日本人にとってすごく良い印象のオリンピックになった気がします。一人の力は大きい。もうこれだけで満足という印象。そのオリンピックも4日の日曜日には終わります。

 それでは、皆様には良い一週間をお過ごしください。
                                  <ycaster@gol.com>