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住信為替ニュース

THE SUMITOMO TRUST & BANKING CO., LTD FX NEWS

  第1299号 1996年08月12日(月)

Light Schedule 》 
 先週に引き続き、「予定」の軽い一週間です。

  8月12日(月)  米大統領選共和党全国大会(サンディエゴ)
    13日(火)  7月の米消費者物価指数・小売売上高
    14日(水)  6月の鉱工業生産指数
    15日(木)  7月の米鉱工業生産指数
    16日(金)  7月のマネー・サプライ

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 盛り上がりに欠けるのでちょっと気が付いていませんでしたが、元プロフットボール選手のジャック・ケンプ氏を副大統領候補に選んだドール陣営(共和党)の党大会は、今日からです。大きな減税案をひっさげての登場となりますし、大会の運営の方法もレーガン時代を想起させたり、国民に依然人気のあるパウエル氏を引っぱり出したりと、工夫はしているようですが、それでもどの程度盛り上げることができるか。ドールの弱いところは、一体アメリカをどの方向に引っ張っていこうと考えているのかが分からない点。よほどのサプライズがなければ、クリントン優位は崩れそうもありませんから、その意味では市場に与える影響は小さいかも知れない。

 注目は、7月の米消費者物価指数です。先週発表の卸売物価指数は、「全体で横這い」で、アメリカの物価情勢が引き続き極めて落ち着いていることを鮮明に示しました。20日のFOMCは来週に迫ってきましたが、利上げの可能性は極めて低くなってきていると見られている。今週発表になる消費者物価指数が、この方向性を確認するものになるかどうか。卸売物価と違って、あまり「予想」と「実際」が違わない統計で、予想は「全体」「コア」とも「0.2%上昇」。

no immediate Japanese rate hike
 アメリカの金利の話の関連で、日本の金利引き上げもかなり先に延びたのではないでしょうか。

  1. そもそもインフレ懸念はどこにもなく
  2. 景気先行きにも不安が出てきており
  3. 株価も不安定な動きを続けている

 など挙げればいくつもあります。日程的に見ても、9月の初めはSQがあって、同月末は中間決算。10、11月(どちらかといえば、11月の末でしょうか)は選挙が予定されている。金利が引き上げられるとしたら、その後の時期で、かつ株価が22500円とかの安全圏にいて、円も110円近くで、景気には回復基調が鮮明で、ニューヨークの金融市場がそれに耐えられ....といくつかの条件が整わねばならない。

 7月の14日に今までマル公報道で「外したことがない」と言われた読売が「月内0.5%の利上げ」と報道したときには、随分「今度こそ」と利上げを予想した方が多かったようですが、筆者はこの見方には賛成しませんでした(7月15日の住信為替ニュース)。利上げできるかどうかの状況は、当時よりよほど現在の方が「できない」に傾いていると思います。

  1. O-157騒動などもあり、景気の先行きには懸念材料が増えたこと
  2. こうした景気先行き懸念や、需給関係の悪化見通しから株価が20000円の水準を割りそうなところにまで下げてきていること
  3. 世界の先進国の金利操作モードは、依然として「下げ」であり、日本ではインフレ顕現化の兆しも全く出ていないこと

 などです。先週もある大蔵省の高官と話をしていて、「日本の金利は世界の金利」という考え方では意見が一致しました。日本の金利が上がることが話題になるだけで、世界の金融市場は「波乱」を何回も経験している。各国の金融政策決定の独自性に関して各国の通貨当局は「独自である点」を繰り返すでしょうが、一方で世界の金融市場はますます連携し、相互依存性を強めている。「独自」だけれども、「国際的な影響」に配慮せざるを得ない状況はますます強まっていると思います。

favoring higher dollar
 米財務省が先週発表した「為替政策報告」は、ドル高効果を強調するものとなりました。注目される点は、ドル高は「米国民の生活水準の向上に役立つ」と指摘している点。去年の今頃から出てきている議論で、その後機会ある度に強調されている点です。

 ドル高の悪影響としては、「米産業界の競争力の低下」を懸念する向きが多い。しかし、どうもアメリカ政府は

  1. ドル高はアメリカ人の対外購買力を高める
  2. 輸入品を安くでき、国内物価状況を安定させることができる

 などの国民生活に対する影響を強く意識しているようです。無論過度なドル高を望んでいるわけではないのですが、国民経済全体としてドル高、ドル安の二つを比較してドルが強い方が国民経済全体に有利と判断していると考えられる。ドル高というと我々は直ぐに、「アメリカの産業界が何か言うのでは」と考えがちですが、肝心のアメリカ政府の考え方はちょっと違っているように見えるし、だから「ドル高」を警告する一部産業界の声に、大統領選挙という特殊要因がある割にはキーンには反応していない。

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 日本の統計では、先週の日経の首都圏経済版に載っていた「輸入、16年ぶり輸出を上回るー東京税関管内(1―6月)」が目を引いた。このニュースは気づかなかった人が少なかったようで、新聞記者も知らない人が多かった。私はテレビの番組でわざわざ紹介しました。東京税関は全国でもやや特殊で、無論輸入が多く出る傾向があるのですが、それでも結構意味のある数字だと思います。

have a nice week
 今週が休みのピークでしょうか。都内は道も空いているし、店も空いている。その代わりに、高速道路はとんでもない時間帯に渋滞しています。小生も今年の夏は何回もこれに引っかかりました。朝から15キロ渋滞などと聞かされると、「夏休みだな」と思います。

 面白い映画を見ました。今年のアカデミーで「特別賞」を取った「TOY STORY」。それも諏訪大社上社の森の中で。無論天井などなく、夕方になると涼しくなるので、結構気分よく見れました。ディズニーのおもちゃ達の話。よくできていて、画像も綺麗だし、アクションもあるし、ストーリーもある。子供が喜びそう。

 長くなりました。皆様には、良い一週間を。

    
                                  <ycaster@gol.com>