INTERNET EDITION


住信為替ニュース

THE SUMITOMO TRUST & BANKING CO., LTD FX NEWS

  第1300号 1996年08月19日(月)

TWO IMPORTANT MONETARY-POLICY MEETINGS  

 今週は二つの政策決定会議が重要です。20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)と22日のドイツ連銀理事会。FOMCについては、今週初め現在利上げを見ている人は非常に少なくなっている。グリーンスパン議長自身が、「これらの指標を注目している」と指摘した指標が、軒並みアメリカ経済の減速を示唆し、またFEDの最大の関心事だった労働賃金の上昇ペースも心配したほどではなかったため。
FEDにとってみれば、これらの指標を受けた米長期金利の低下は歓迎すべき事である筈で、今利上げして再び米債券市場を混乱に陥れる意図は持ち合わせていないでしょう。なによりも、アメリカのインフレ率は極めて低水準で推移していて、具体的な加速懸念はない状態が続いている。

 FOMCより注目されるのは、22日のドイツ連銀の理事会です。8日の「東京マーケット・フォーカス」にゲスト出演された野村証券の水野・金融市場部チーフストラテジストは、「マルクが急騰でもしない限り、結局(いつか利下げするかもしれない)という期待感を残すためにも、ドイツ連銀は利下げは見送るのではないか」と予想していましたが、市場ではレポ金利の引き下げなどに関する期待感は強い。

 肝心のドイツ連銀がなんと言っているかというと、14日付けのインターナショナル・ヘラルド・トリビューンのインタビューに応じたドイツ連銀のイッシング理事は、「Crisis of confidence in German economy」という見出しの記事の中で

 @ドイツの景気回復は、今後も続くと確信をもって言えるほど力強いものではない

 Aドイツ・マルクの上昇は、今のドイツ経済の現状にふさわしいものではない

  と述べていた。端的に言って、ドイツ経済の回復のペースと、その先行きに対する懸念を表明し、その面からもドイツ・マルクの現在以上への上昇は困ると言っているわけです。先週後半にかけては、この発言を受けて、ドイツ・マルクはドルや円に対しては大きく下げました。

 14日以降で欧州で起きた新しい事態としては、フランス・フランの下落があります。同国の経済実態の悪化などを背景としたもので、ドイツ連銀としてはこうした国際情勢を受けての決定となります。筆者は利下げの可能性は五分五分だと思っています。

TRADE BALANCE ON TUESDAY

 今週は、指標・その他としては20日の米貿易収支、日本の景気動向指数、21日の米財政収支、松下日銀総裁の定例会見、23日の米耐久財受注などが注目材料です。

 米貿易収支(6月分)については、5月の108億ドルから93億ドルへの減少が予想されている。輸出の伸びが輸入のそれを上回ると予想さているため。

 単月の動きとはいえ、興味があるのは中国の対米黒字(アメリカからみれば対中赤字)が、いつ「対日」を上回るかという点。5月の統計ではまだアメリカの対日赤字の方が大きかったものの、トレンドから言えば中国に対する赤字の増大傾向は強い。

 23日の米耐久財受注に関しては、0.5%程度の減少が見込まれている。6月は航空機部門を中心に、0.6%の減少だった。あと、21日の財政収支(7月)に関しては、特殊要因により6月の136億ドルを上回ると見込まれるものの、それでも今年全体の赤字幅は、昨年より大幅に減少すると見られている。 

 ――――――――――
 ところで、この「財政赤字」に関してですが、いつもは共和党候補の出現を強く歓迎するウォール街も、今年の場合は「ドール歓迎」一辺倒ではないようです。それは、ドール陣営が共和党大会の直前になって大規模な減税案を発表したため。

 ドール候補が今回打ち出した規模の減税が最後に行われたのは、1981年。レーガン政権時代の初期で、アメリカの力強い経済発展の原動力になったとされるものの、ウォール街にはあまりよい記憶はない。というのも、それによってインフレ期待が高まって債券相場が急落したため。

 減税になれば景気が持ち上げられ、企業の収益が増大して、投資環境が良くなると言う見方もできますが、ウォール街全体としては「ドール減税案はあまり歓迎せず」という空気が強い。そもそもウォール街は「アメリカの景気が鈍化してきた」と歓迎している最中であって、これが急拡大してもらっては困るという事情がある。79年の第二次石油ショック後で、景気の力強い拡大が課題だった当時とでは、事情が違うということでしょう。また特に労働市場でボトルネックが指摘されている時に、力強い経済回復は、インフレ懸念を強めるだけという見方も強い。

 ――――――――――
 今朝の日本の新聞によれば、ドール氏の支持率は最新調査では42%と、クリントン大統領とわずか2ポイント差に縮小してきたという。これはニューズウィーク誌の調査。これまでの調査では必ずクリントンがドールを10%以上離していましたから、ちょっと注目される。

 しかし、共和党の党大会の直後に行われた世論調査であることを勘案する必要があります。アメリカの党大会は「お祭り」そのもの。しかも今年の共和党大会はアルツハイマーで対外活動ができなくなったレーガン大統領の代わりにナンシー夫人を出したり、国民に人気のあるパウエル元統合参謀本部議長を出したりと、ショー的色彩が強かったと伝えられる。視聴率は悪かったものの、アメリカのマスメディアがこの党大会を頻繁に取り上げたことは十分予想され、その直後の世論調査はバイアスがかかっていると言える。

 民主党大会は少し先ですが、本当の両者の人気の差が出るのはそれからでしょう。一方、第三党の改革党は週末にペンシルベニア州の全国大会で同党の創設者でテキサスの富豪であるロス・ペロー氏を大統領候補に選出。しかし、前回の大統領選挙で19%の支持率を得たときの勢いはない。

HAVE A NICE WEEK

 そうは言っても、今朝の電車はまだ空いていました。日本も本格稼働は来週でしょうかね。それにしても、今朝のNHKテレビを見ていたら、今朝海外や帰省先から帰ってきて、そのまま会社に行くという人が結構いた。なかなか、元気ですね。私の回りにも、真っ黒い顔をした奴がいっぱいいる。

 連休中に一番可哀想だったのは、タクシーの運転手でした。特に一昨日の土曜日などは超暇だったらしい。正月よりきっとひどいでしょう。正月は、他人の家に行くということがあるが、夏はかなりの人がいなくなってしまう。逆に言えば、観光地のタクシーは今がかきいれどきということでしょう。

 今年のお盆休みで困ったのは、うっかりしていたらクリーニング屋が休みに入っていた。引き出せない。ウーン。来年は気を付けないと。

 それでは、皆様には良い一週間をお過ごし下さい。ちょっと出張が続く。今週は名古屋、来週は札幌におじゃまします。
                                  <ycaster@gol.com>