INTERNET EDITION
住信為替ニュース
THE SUMITOMO TRUST & BANKING CO., LTD FX NEWS
第1302号
1996年08月30日(金)
《 confirmed weakness of the Japanese economy 》
もう既に多くのマスコミが取り上げていますが、今週の水曜日に発表になった日銀短観(8月調査分)は、回復基調にあると思われていた日本経済が実は失速の懸念さえあることを示しました。五月時点の予想より、ほぼ全セクターで現実には業況は悪く、「回復」が先延ばしになっている事実が明らかになった。心配なのは、現時点の「12月予想」も実際に年末になったらまたまた未達となり、再び言われている「回復」が先延ばしになるのではないかという点。
日銀は公式には、「穏やかな回復が続いている」という見方を変える必要はないとしている。しかし、これでは言葉のディメンションをえらく拡大したと批判されてもしかたがないと思います。言葉は曖昧に使うと、実体を隠してしまいかねないし、その言葉に縛られて必要な措置がとれないということもある。この点について言えば、昨日の日経金融一面に載った滝田記者の記事は的を射ていたと言える。
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今後問題となるのは、「失速」が現実的な懸念となったときに、景気刺激措置として何が出来るかである。金融政策の限界は見えているし、財政もきつい。昨日はいろいろな人の意見も聞いて考えてみたのですが、今度「失速」したら実は本来最初からやらなければならなかった措置にやっと目が向くかも知れない、と思いました。つまり、住宅市場などを縛っていた規制、税制の縛りの撤廃・緩和と、それによる住宅建設・関連市場の活性化です。
財政政策が今までの景気を下支えしてきたと言われる。そう言う面はあると思いますが、しかし、実際にはお金の流れが止まると同時に景気も失速気味になるということを繰り返している。これでは、いくらお金をつぎ込んでも駄目だし、詰まるところ今までの公共投資のお金の使い方はどこか間違っていたということが言えそうです。道路をいくら造っても、橋をいくら架けても駄目。
結局のところ「制度」をいじらないと、経済は活性化しないということが徐々に明らかになったのではないでしょうか。金利をこれだけ下げても、財政をこれだけ悪化させても支えられないとしたら、もう制度をいじるしかない。容積率の引き上げや住宅取得、買い換えに関する規制の撤廃・税制上の優遇措置で、大きな需要が生まれることは明らかです。広い家に住みたい希望は国民の間に強い。家が広くなれば、買いたいものも出てくる。国民が一番欲しいものが与えられないとしたら、経済に活気が戻るわけがない
、という気がします。今の混乱した政治に、「制度」をいじる力があるかどうかが問題ですが。
《 static market 》
当然、日銀短観を受けて長短金利は大きく下げました。セクターによっては、春の低い水準を下回ったものさえある。「7月に利上げしていたら、景気は良くなっていたはずだ」という論法でも取らない限り、やはり利上げしなかったのは正解だったということでしょう。気になるのは、これだけ長短金利が下がっても、これを株式市場が好感しない点です。これは、金利が下がっても需要が盛り上がらず、従って企業の業績も上がらないと市場が読んでいるとしか思えない。だとしたら、需要喚起という面では、金融政策の有効性は著しく低下しているということになる。
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一方、アメリカで今週出た一連の数字は、同国経済の力強い拡大具合を示しています。昨日発表になった今年第二・四半期のGDP伸び率(改定値、当初発表は4.2%)は年率で4.8%と、過去2年来の高水準。この統計で非常に目立つのは、貿易収支の赤字以外は、アメリカ経済がほぼ全セクターで力強い回復を示している点。
もう一つ出たのは、7月の新規住宅販売。予想外の7.9%という伸びになって、季節調整後年率で78万3000戸。住宅金融金利(mortgage rate)が8%を上回っている中での新規住宅販売の急増。
となれば、当然
"The economy is firm," said Stephen
S. Roach, chief economist with Morgan Stanley & Co. in New
York. "There are no signs it is slowing appreciably in the
second half of the year as the (Federal Reserve) has been expecting."
As a result, Roach added, the Fed likely
will boost rates next month to avoid renewed inflation.
という見方は出てくる。この手の見方が長期債相場と株式相場に響きました。長期債は指標銘柄で7.04%に上昇、株はダウで64ドル73セント下げて、5647.65ドルになった。
《 no actual inflation fear 》
しかし今回のGDP統計でも非常にはっきりしているのは、「インフレの心配はまだどこにもない」ということです。デフレーターは2.1%の上昇と、第一・四半期の2.3%をむしろ下回った。同期のGDP伸び率は0.3%でした。
市場が先を読み、それを懸念するのは過去の経験が生きているからなのですが、今週出張した札幌の皆さんにもお伝えしたのですが、金融市場が慣れ親しんだ80年代の経済・市場と、90年代の経済・市場は大きく異なっているという事実の認識がここでは重要だと思います。
90年代は、
が重要だと思います。むろん、市場が80年代の記憶を残していることを認識した上で、マーケット参加しなければいけませんが。
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こうした数字を受けてアメリカの市場では9月24日の次回FOMCでは「利上げ」との観測が強まるでしょう。しかし、8月の時がそうであったように、こうした観測が直ちに実際の「利上げ」につながるかどうかは分からないと思います。「opportunistic
approach to disinflation 」もあり、実際に経済がどこにあるのか、インフレ圧力は実際にどの程度貯まっているかを検証することになるでしょう。
「今年下半期から景気は鈍化する」というグリーンスパン議長の見通しを完全に覆すほどの数字が出たわけではない。
《 have a nice weekend 》
えらく涼しくなりましたね。朝起きて、まったく汗ばまない日が続いている。東京の取水制限も解けたようで、あと多少の残暑があったとしても、来週はもう9月で長続きはしないでしょう。秋は祭りの季節。今週は高円寺は「阿波踊り」で、雨にもかかわらず、結構な人出でした。
プロ野球が面白いですね。夕方6時を過ぎると妙に気になる。オリンピックの時はすっかり影が薄くなっていたのに、生き返ってきた。野球の醍醐味は、やはり時に点数が一気に4点も入ることでしょうか。最近のホームランでは、駒田が打った対巨人戦の「満塁弾」が記憶に残ります。打った瞬間にそれと分かった。
先週の名古屋に引き続き、今週は札幌にお伺いしました。でも、東京の方が涼しかった。久しぶりだったのですが、広々としているのは相変わらず。高速道路もえらく空いていた。これといった製造業のない北海道は、依然として公共投資中心の経済だそうですが、道全体の人口(約500万くらいだそうです)の三分の一が札幌集中。すすき野も、地元の人は「最近はよくなったんですよ」と言いますが、6年前と比べればえらく人が少なくなった印象。大人より、夏休み中の学生とか、旅行者が目立った。でも、相変わらず食事は美味しい。
それでは、皆様には良い週末をお過ごし下さい。