第1306号 1996年09月20日(金)
《 small turbulance during the week 》
久しぶりに、「小波乱」があった一週間でした。円の高値は、108円85銭。今週のドルの高値は110円台の半ばでしたから、週間2円弱の動き。
ドルが大きく下げたのは、日本時間の水曜日の夜でした。同日午後9時半に発表になった米7月の貿易収支赤字が、117億ドルと予想を大きく上回ったため。この赤字は、月間赤字としては8年ぶりの大幅なもの。またこの赤字を年率にすると1096億ドルとなり、これは過去7年ぶりの大幅な赤字となった昨年の1051億ドルを上回るペース。
米貿易赤字拡大の最大の原因は、
@対ヨーロッパ赤字が43億ドルと史上最高になった(アメリカの輸出は航空機を中心に20億ドル減少、輸入は15億ドル増加)
Aアメリカの輸入石油依存度が高まって、7月は47億ドルと1990年10月以来の高い水準に達したこと
ですが、
@対日赤字も43億ドルと6月より33%増加した
A対中赤字は38億ドルと、6月より15%増加した
という要因もあった。対日赤字の増大の原因は、日本の対米での完成車、部品輸出が増加したため。中国の対米黒字増加は、おもちゃの輸出増加によるもの。
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ドル・ロングがたまっていた市場では、このニュースを受けてドルがスパイラル的に売られました。売りがロスカットにぶつかり、それがまた売りを呼ぶという形。円の高値(ドルの安値)は、108円85銭と聞いています。ただし、ドル・マルクはそれほど動かず。この結果、マルク・円も大幅に円高に移行。
最近の市場は貿易収支で動くことはあまりなかっただけに、やや意外な動きですが、市場でドル・ロングがたまっていたことが相場を大きく動かしたものと思われます。この赤字拡大を米共和党は「格好の選挙材料」にしようとするでしょうから(他に経済統計でクリントンを攻められそうなものはない)、「赤字」が新たな相場材料として登場してくる可能性はあります。しかし、クリントン政権はそれだからこそ、ドルが今の時点で大きく下げ、それが債券や株に響くのは回避しようとするでしょう。また、ドルの安値には機関投資家の買いも構えていると思われますので、ドルの下値はそれほど深いとは今のところ予想していません。20日現在では、ドルは既に反発気味。
日本の貿易統計が前年同月比なのに、アメリカは前月比で発表しているためちょっと比較しにくいのですが、このところ多少日本の黒字が増え気味であることは確かです。しかし、これがこのまま日本の黒字増加につながるとは予想していません。
《 more debate on Fed policy 》
今週は24日に開かれるFOMCを前に、アメリカの金融政策を巡る議論が高まった週でもありました。先週は、ほぼ「(利上げは)ない」で固まりかけていたのに、今週は
などが背景。
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強い経済指標は、昨日発表になった8月の米住宅着工高にも現れている。同月についてはエコノミストの予想は「小幅減少」だったものの、出た数字は4.5%の急増。過去2年半で最高の水準。また、同日出たinitial
claims for state unemployment insuranceも、2000人減少の32万9000人で、これもエコノミストの予想の33万8000人を大幅に下回った。
しかし何よりも「利上げありやなしや」の議論を高めたのは、FED高官の発言でした。この高官は今週ロイター通信に対して、おおよそ次のようにしゃべった。
@連邦準備制度の12の地方連銀のうち8つは公定歩合の引き上げ申請を理事会に出しており、そのうち3連銀(ミネアポリス、リッチモンド、サンフランシスコ)は0.5%の利上げを申請している
A理由は、第一に、グリーンスパン連邦準備制度理事会議長も7月の議会証言で予想した「今年下半期の景気減速が、早期実現しそうもないこと。第二に、先月の雇用統計に示されたとおり、労働市場の逼迫が顕在化していること
B今までインフレ対応にハト派だと思われていた理事(例えば、ローレンス・メイヤー)も、地方連銀の公定歩合引き上げ申請に同情的になっている
C今年1月31日の利下げは、「間違いだった」との見方が強まっている
D第三・四半期の成長率は第二・四半期の4%強には届かないものの、トレンドを上回る可能性が強いこと
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など。この高官が、あえてこの時期にこうした発言をした意図は必ずしも明らかではありません。「利上げなし」に傾き始めた市場のセンチメントを修正しようとしたのかもしれません。また、タカ派が、「ハト派」に対して強い利上げシグナルを送ったのかもしれません。この記事によれば、理事会をそれぞれの日程に開く地方連銀は、次々に「利上げ申請」を決めており、この結果
「次回の9月24日の理事会では、0.25%の利上げがコンセンサスになりつつある」(同筋)
という。この報道の市場への影響は、債券安、株安として働きました。債券はこの報道のあと6%台から7%台に台替わりした。株は、先週末、今週初めと高値更新のあと、警戒感の高まりの中で、昨日まで3日間の小幅続落。
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しかし、こうした発言にも係わらず、連邦準備制度理事会首脳の頭の中は「すべきか、すべきでないか」でかなり迷いがあると思われます。先週の土曜日の日経にイエレン理事の発言として、「本当に迷っている」という言葉がありましたが、あれは本音でしょう。
従来の指標では利上げしてもおかしくない環境でも、「大競争時代」にともなう国際競争の激化、「技術革新」に伴う物価引き下げ圧力が強い中では、引き上げて良いかどうかには決断がつかない。新しい経済にどう対処するかは、今後アメリカだけでなく、他の多くの先進国中央銀行が直面する問題だと思います。
筆者は、9月24日のFOMCではまだ利上げ見送りになる可能性は3割ほどあるし、利上げがあっても0.25%と予想しています。9月24日のFOMCの次は、11月13日ですから、24日になければ通常状態では大統領選の前はなくなります。ただし、FOMCで「DEPENDS
ON SITUATION」でグリーンスパンに引き上げの権限を付与し、期間中の利上げが行われる可能性もあります。
《 have a nice weekend 》
今週は一日早く週末が来たんですね。月曜日の休みで。来週も同じです。ただし、噂によると、先週車で出かけた連中は、皆ひどい目にあっている。秋の行楽シーズンで一斉に車が出たため。渋滞に巻き込まれた人が多かったようです。高速道路は何十キロとか。今週末もそうでしょうか。ちょっと台風が心配ですが。
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ところで先週末ですが、私のインターネット上のホームページであるhttp://www2.gol.com/users/ycasterのフロント・ページを大幅に刷新しました。従来のものに比べ、季節感を入れて秋らしくし、Javaなどの最新技術を取り入れて、仕掛けも色々作りました。おかげさまで評判もよろしいようで。個人のホームページとしてはかなり凝ったモノになりました。その他のページのgif(画像)や背景色も変えました。まだの方は、一度訪れて下さい。
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ところで、昨夜はNiftyserveの金融プロフェッショナル・フォーラム(fkinyu。インターネット上にフォーラムとしてホームページを持っていて、そのURLはhttp://www.fkinyu.com)のオフ(オンラインの「オン」に対してface
to faceの)の会合があり、私も出席しました。20人も集まったのですが、いままで顔を会わせたことがある人は2人しかいなかったし、顔を知っている人(インターネットのホームページ上で)も二人(PACO
CINOさん、ぼぶべっくさん)しかいなくて、ほとんどは初対面の人。無論、FKINYUの中ではハンドル名を見かけた人が多かったのですが。
色々な業種の人がいた。生保、地銀、長信銀、投資顧問、研究所、外銀、都銀。それぞれの人が「本名」と「ハンドル」名を持っている。それを同一人物につなげる作業がある。熟女なのに「女子高生」だの、男なのに「千賀子」のハンドルでいままでずっと「女性だと」周囲の人間に思わせてきた奴とかいろいろいて、面白かった。「全員の方とゆっくり」というわけにいかなかったのが残念で、今後もこの手のオフの会合には積極的に参加したいと思った次第。
広がる「オンライン」の世界。でも、しばしば顔は見えない。「オンライン」での言語の使い方はほっとおくとしばしば攻撃的、刺激的になる。こうしたオフの会合を通じて、結局はface to faceで知り合うことがやはり必要、かつ重要なのだと思います。ナイスな企画。ここに集まった人のハンドル名は凄いですよ。「Euroman」「魚沼米」「鱒蔵」「マルス」「テス」「もとkiss」「kuni」「たーち」「ゆき」「11 Rider」「蓑助」「那由他」「 CUZ」「STATIONWAGON」など。
私以外にインターネットにホームページを持っている方もいて、それをちょっと紹介しておくと
ぼぶべっく http://www.bekkoame.or.jp/~bobubeck/page/economic.html
Paco Chinoさん
http://www.bekkoame.or.jp/~srverde/
NORIKOさん http://www.noriko.com/
など。あとfkinyu関係では
荒吐隼人さん http://www.yamauchi.com/
ちょんぱぱ http://user.tokachi.or.jp/chonpapa/
ばぶるばすたーさん http://www.kinoshita.com/
るーさーさん http://www.gulf.or.jp/~taku/index.html
など。参考までに。
それでは、皆様には良い週末をお過ごし下さい。 <ycaster@gol.com>