住信為替ニュース
INTERNET EDITION

  

第1307号 1996年09月24日(火)

FED to consider rate increase  

 皆さん、ご安心を。東京市場が連休中の海外市場も、結局は日本時間今日深夜の連邦公開市場委員会(FOMC)待ちで、一歩も動けず。「FOMC待ち」の状態で東京市場まで来ました。

 あまり図式化するのは賢明でない場合もある。図式に入りきらないところに、結構重要な点が隠れてしまうから。しかし、図式にするのは頭の整理にはなる。24日のFOMCを待つ市場や当局内部の図式を描くとほぼ以下の通りです。

☆利上げ有りやなしや(観測)

「利上げある派」=60% 対 「利上げなし派」=40%

(エコノミストの見方)

「利上げある派」のうち、利上げの幅に関して

「0.25%派」=95% 対 「0.5%派」=5%

☆討議に入るFOMC内部の図式


「利上げに積極的な地方連銀代表」 対 「待ちたい政治指名のワシントン組」

それぞれの根拠

「経済はインフレ発生危険ゾーン」 対 「実際にはインフレは未発生」

「予期された景気の鈍化は見られず」 対 「これから鈍化する可能性あり」

「経験重視派」 対 「“新しい経済”の考え方」

will not be an easy one

 さらに、今回のFOMCでの利上げを正当と見る人達の見方を左に、利上げを待つべきだと見る人々の考え方を右に置くと以下のようになります。

「経済は加速している」 対 「経済は鈍化している」

「インフレ圧力は着実に高まっている」 対 「従来の尺度でインフレ圧力は測れない」

「今直ちに利上げを実施すべきだ」 対 「するにしても選挙後まで待つべきだ」

       「労働市場の需給は逼迫し、賃金上昇圧力あり」 対 
                   「賃金は上がっても、最終製品価格にははねていない」

 挙げれば、きりがない。一番のポイントは、FOMC内部の図式と、それぞれの考え方です。既に、地方連銀の多くが利上げを欲しているというのは先週の報道で明らかです。利上げを申請したのは「12連銀のうち8連銀」と報じられている。そのうち、3連銀(ミネアポリス、リッチモンド、サンフランシスコ)は「0.5%の利上げ要求派」とも。これは多分本当でしょう。彼らは考え方としては、「経験重視派」に見える。しかし、地方連銀の理事がFOMCに占めるrepresentationは、今朝連邦準備制度理事会(FRB)のホームページで確認したところでは、以下の通りで、少数。

Federal Open Market Committee Members
Members

Alan Greenspan, Board of Governors, Chairman
William J. McDonough, New York, Vice Chairman
Edward G. Boehne, Philadelphia
Jerry L. Jordan, Cleveland
Edward W. Kelley, Jr., Board of Governors
Lawrence B. Lindsey, Board of Governors
Robert D. McTeer, Jr., Dallas
Laurence H. Meyer, Board of Governors
Susan M. Phillips, Board of Governors
Alice M. Rivlin, Board of Governors
Gary H. Stern, Minneapolis
Janet L. Yellen, Board of Governors
Alternate Members
J. Alfred Broaddus, Jr., Richmond
Jack Guynn, Atlanta
Michael H. Moskow, Chicago
Robert T. Parry, San Francisco
Ernest T. Patrikis, First Vice President,New York

 Board of Governorsが多い。そこで重要になってくるのが、「Board of Governors」の連中の考え方です。むろん、これも色々ある。タカ派、ハト派。重要なのは、グリーンスパンを含めてFEDの枢要なメンバーの現経済(国際競争が激化し、新技術が次々に登場してくる“新しい経済”という意味ですが)下でのインフレ圧力、その発生プロセスに対する考え方自体がかなり揺れているという事です。

 先週FED高官は次のように述べている。

  It's more difficult than usual to pin down what's happening ( in the economy)

 これは本音でしょう。生産、消費、販売、労働市場などなど、従来の尺度で見れば、インフレが起こってもおかしくない環境はたっぷりある。ずっとそうです。しかし、物価統計にはその影響はちっとも現れない。

 「Board of Governors」の一人であるJanet Yellenは次のように述べている。

  「The economy is operating in a " inflationary danger zone." But so far there
  is no sign of higher inflation

 「これをどう考えたら良いのか」というのが大きな課題となっていて、そこから「opportunistic approach to disinflation」などという考え方が出てきている。筆者は、過去の経済指標ではインフレが起きてもおかしくないレベルにあってもインフレが起きないのは、経済がevolveしている証拠であって、主要な背景は「国際競争を激しくしている大競争時代と、コンピューターとを使った生産・処理・通信技術の著しい発展」だと思うのですが、経済を従来の尺度で考えようと言う見方も根強いようです。いずれにしても、「close call」になるでしょう。

close call

 では、FOMCの利上げ決定を待つ市場の方はどうかというと、昨日のNANDO NETに面白い記事を見つけました。全文を引用するのは著作権の問題がありますから、さわりを引用すると、

some analysts say the conditions of that old familiar game have changed.

the market reaction is likely to be more complicated

a good many analysts say it would be a mistake in the modern-day markets to expect some   simple, knee-jerk reaction

"A 25-basis-point increase in interest rates will do little or nothing to the economy and little or nothing to the financial markets, since it has already been factored in."

As they keep an eye on the Fed, analysts add, most investors are more concerned with the trend of policy than with any single move that might be interpreted as fine-tuning rather than any significant change.

 ――――――――――
 一つ明らかなのは、今回一度上がったとしても、次の上げはかなり先に延びるのではないかということです。インフレを巡る経済の環境がどうなっているかに確信がもてない現状では、次々に利上げをしていくというようなことは難しい。とすると、例えばゲッパートがグリーンスパン連邦準備制度理事会議長に「利上げはしないでくれ」と書面を送るような緊迫した事態ではないということになる。

 FEDの高官がマスコミにしゃべり、地方連銀の総裁とおぼしき人が利上げ観測を上げ、政治家が動き.....。前代未聞のずたずたのFOMC。市場の方がかなり醒めているのかも知れない。

 今週はFOMC以外には24日に米消費者信頼感(9月)発表、日米首脳会談がある以外は特に大きな指標の発表がない。27日に日本の消費者物価指数(全国8月、東京9月)が発表があるくらい。

have a nice week

 3連休はいかがでしたか。台風はすごかったですね。台風通過直後の23日はゴルフだったのですが、木の枝がちぎれてフェアウエーのあちこちに落ちていたり、池が異常に増水してエリアを広げ、いつもはフェアウエーの場所が池(いや、ラテラル・ウォーターなんでしょうかね)になっていたり。台風の直後というのは、ルール上難しいことが色々ありそうです。たとえば、実際にバンカーの中に千切れた木の枝がいっぱいはいって、中にボールが入ったら打てない。こういうときは、救済はどうするんでしょうね。JUN CLASSICは日曜日は取りやめになっていましたが。池の多いコースの大雨直後は、結構何時もとは違った環境で出来る。面白かったですよ。

 それから、「ずたずたのFOMC」という点では、ニュースによればFEDの依頼を受けてFBIが9月17日の「12地方連銀のうち8連銀が利上げ申請」というロイター電の違法性を巡る調査で協力する、という。むろん、違法性はロイターに漏らした当局者がターゲットです。この報道により、米債券、株式相場は一時大きく下げた。

 「実質的には、今週は期末週。半年間お世話様でした。来期も宜しくお願いします。それでは、皆様には良い一週間(5日間ですが)を。それから、日曜日の東京マーケット・フォーカスの収録後記を私のインターネットのホームページ(http://www2.gol.com/users/ycaster)のcyberchatのコーナーにアップしておきました。ご興味のある方はお読みください。

                    
                                  <ycaster@gol.com>