住信為替ニュース
INTERNET EDITION

  

第1310号 1996年10月04日(月)

dollar rose to new territory

 ドルは今週、「new territory」と言える所まで上昇しました。「台」で言えば、112円台。この間ニューヨークの市場は株も、債券もしっかりで、言って見ればアメリカの市場は「トリプル高」。選挙を前にこれだけ良い環境で戦う現職大統領は少ない。「インフレ懸念」は今年幾度となく市場を騒がせたものの、オーストラリア蔵相の「問題発言」(3日の日経金融の記事参照)によれば、グリーンスパン連邦準備制度理事会議長は、そもそもインフレの発生する可能性を深刻には考えていないよう。対外収支くらいが、大きな課題として残っている印象。中産階級が没落して階層乖離が生じていると言われているものの、世論調査の結果などを見ると、国民が現状の経済にそれほど不満になっているとは思えない。アメリカでは、犯罪率もかなり低下してきている。今朝の日経にも、9面に黒人や貧困層も景気拡大の恩恵を受けているという記事がある。雇用統計の一つの見物は、年寄りや少数民族の失業率がどの程度下がるかです。8月にかなり下がっていた。

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 ちょっと話がずれましたが、今週ドルが上昇した主な理由は、

  1. 先週末にワシントンで開かれた先進7カ国蔵相・中央銀行総裁会議(G7)で各国参加者の間から「ドル高地合維持」への賛意が聞かれた
  2. 日本、ドイツなどとアメリカとの金利差は、当面縮小しないとの見方が強まった

 などです。加えて先日も指摘した通り、過去一年の各ファンドの運用成績を見ると、外物の組み入れ比率の高いものほど運用成績が良く(円安でしたから当たり前ですが)、資金を預けるサイドが外物組み入れ比率の引き上げを求め始めたことや、運用担当者間の競争激化により、より高い利回りを求める傾向が強まったこと、などで日本では金利の高い通貨資産を買う傾向が強まった。米ドルばかりでなく、英ポンド、オーストラリア・ドル、イタリア・リラ、カナダ・ドルなど。円は対ドルばかりでなく、こうした通貨に対しても値下がりした。

 日本の機関投資家の持つ資産の規模、今まで外物比率を低いままで保ってきた経緯、外物投資の比率を高めることを機関決定している可能性が高いこと、日本のアセット市場の利回りがここ当分低いままで推移しそうなこと、などを考えると、この「外貨買い」の大きな流れはここ当分続くと考えるのが自然です。

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 一つ今週明らかになったことを指摘しておくと、機関投資家の熱心な外貨買いに対して、日米両当局からちょっと「温度差」の違いを感じさせる発言が相次いだこと。「温度差」とは、円安のペースに対するそれです。いくつかある。

 まず伝えられるところによれば、久保蔵相は「より一層のドル高」には、警戒的な発言をした。次に経団連の豊田会長は、日本のファンダメンタルズから見れば、円安の目安は110円だという発言をした。最後に、ニューヨーク連銀の当局者は、ドル安の調整は対円では終わった可能性を指摘した。この当局者は、対マルクでのドル安調整はさらに続く可能性も示唆している。

 これらの発言は、「110円を越えた円安」に対して深刻な懸念を表明したものではありません。しかし、「110円前後がいいのになあ...」という希望を表明しているようにも取れる。居心地が良いのでしょう。もっと円安になると、困った問題が生ずるかも知れないと警戒しているのかもしれない。

waiting for numbers

 ただし、日米の当局もこれを積極的に止めようとしている訳でもないようです。どちらかというとスピード調整を期待しているように見える。日本の機関投資家の円安や対外投資にかける熱意とこの当局との「温度差」は、今後の市場でいつか「power game」として出てきそうですが、安いドルを買いたいという日本の機関投資家の意向が強い間は、ドルの底意は強いままで推移すると考えるのが自然のような気がします。

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 当面の市場の関心は、日本時間の今夜に出る9月の米雇用統計に集まっている。予想は、

  1. 失業率は、8月の5.1%から5.3%への上昇
  2. 非農業部門就業者数は、17万5000人の増加(8月は25万人の増加)

 というのがコンセンサスです。

 少数意見ですが、今朝のインターネットの記事などの中には、この数字が非常に強いものだったら

 Investors remain reasonably content that the
Federal Reserve Board will wait until November
before raising interest rates. However, analysts
warned that a stronger-than-expected increase in
payrolls, coupled with a fall in the unemployment
rate and a rise in earnings, could spark
speculation that the Fed will tighten before then
-- prompting a sell off in U.S. Treasurys and
hence the dollar.

 という意見もあるらしい。「11月13日の次回FOMC前の利上げも」という意見です。しかし、これは少数派の見方です。昨日出た工場受注は、過去3年半ぶりの大幅な減少を記録した。「経済は徐々に鈍化している」というのが大方の見方です。

 債券市場もこうした見方を支持しているように見える。昨日は統計待ちで全く動きませんでしたが、木曜日までに指標30年債の利回りは6.83%にまで低下してきた。「インフレ懸念はないし、経済は鈍化している」という見方に立たなければ、この利回りの低下は正当化されない。今夜の数字が注目です。

have a nice week

 新しい期が始まって4日目。「寒くなってきた」というのが実感でしょうか。雨がちで、「スカッと、秋晴れ」という日は少ないのですが、今週末はどうなるでしょうか。市場を見ていると、前期よりかなり動きが出てきた印象。面白いかも知れない。

 昨夜は、電子マネーをテーマにした真面目な食事会を小伝馬町の「伊勢重」で9時半ごろまでやって、その後某銀行の後輩に誘われて六本木のアイビス・ホテルの地下に新しく出来た「Oak Land」なる飲みplaceに行ったのですが、なかなかここは凄かった。まず、女性の数(全員日本人でした。ここが六本木らしくない)が多い。それだけ見ても、「ここは高い」と予感させたのですが、店のシステムもちょっと変わっていて、大きな部屋(ここではparkと呼ばれている)で四つくらいに別れていて、「海」とか「天」とか、メンバー・ラウンジとか別れている。行ったのは「天」でしたが、真ん前にステージ(当然ショーをやる)があって、あとは階段状のテーブル席。その席が上がったり下がったりする。イメージとしては、「金魚」と「キャバクラ」を一緒にしたような感じ。「海」は行ってみなかったのですが、壁面全面が水槽になっていて、熱帯魚が泳いでいるそうです。とにかくカネをかけている。

 新しいタイプの飲み場所という感じはします。しかし、料金が高い。「高いだろうな」とは思っていたものの、午前1時過ぎに請求書を見て驚愕。もってましたが。ですから、このニュースをお読みになっている方には、推薦しません。多分この店は、半年もたたずにつぶれるでしょう。女の子は時給4000円で、一晩に2万5000円程度稼ぐという。それが、山ほど居る。高くしなければもたない。六本木も最近は一時の人出ではない。いろいろ考えているのでしょう。今年の8月4日からスタートしたらしい。ショーを入れたのは、「金魚」などの成功を見てということらしい。しかし、「金魚」ほど上手ではないし、ダイナミックでもない。お遊び程度です。午後9時と12時がショータイムだという。12時のは見ました。

 紹介しておいて推薦しないのは、私としては極めて珍しいのですが、internet editionをお読みの方だけに。今度は、推薦できる店を紹介しましょう。おや、忘れてました。「伊勢重」は推薦できます。すき焼きを食べたのですが、今半に劣らない。創業明治2年ですって。電話番号は、03-3663-7841です。日比谷線小伝馬町から歩いて直ぐ。

 それでは、皆さんには良い週末を.......。                       
                                  <ycaster@gol.com>