住信為替ニュース
INTERNET EDITION

  

第1311号 1996年10月07日(月)

report boosted market  

 注目された米9月の雇用統計は、またまた予想を裏切るものでした。率は「5.3%程度への上昇」という予想にあまり違わず「5.2%への上昇」(8月は5.1%)でしたが、非農業部門就業者数は「17万5000人の増加」予想を全く裏切る「4万人の減少」。これが景気後退局面だったら「景気鈍化の兆し強まる」といった受け取り方になったのでしょうが、市場はこの予想外の数字を最大限の「歓迎」をもって迎えた。

 株式市場は、ダウで60ドル強上げて引けは5992.86ドル。6000ドルにあと7ドル強と迫った。雇用情勢の悪化から「金利引き上げはない」との見方が強まり、金融株が大きく買われ、ハイテク株も高い。一方債券は、金融株が買われたのと同じ理由から大きく買い進まれ、指標30年債の利回りは6.74%と、前日の6.83%から0.1%近く低下した。

 一方、ドルは指標が出た直後には下げたものの、あと株式、債券市場の反応を見て買い戻しが入り、日中じりじりと上げて、これも前日引値より対円、対マルクで上昇。結局、株、債券、ドルが全面高になるという「トリプル高」での越週となった。

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 市場の大方の見方は、「景気は望ましい巡航速度への減速の過程にある」「従って、インフレ懸念も心配するほどでもない」「よって、FEDは11月のFOMCでも金利の引き上げを見送るだろう」というものです。雇用統計の中身を見ると、時間当たり労働賃金が6セント上昇しているとか、製造業の週当たり労働時間も増加しているなど気に掛かる点もあったのですが、市場全体から見れば先週末の雇用統計は熱烈歓迎というにふさわしかった。

 当然選挙を控えてクリントン大統領は、マーケットの反応を意識しながら「米経済は着実で、持続可能な成長プロセスにあることを示している」と満足の意を表明。面白いことを言っているのはライッシュ労働長官で、彼は

 “There is something for everybody in today's report."

 と言った後

 “Main Street ought to be delighted because the rate of unemployment
continues to be remarkably low and Wall Street should be delighted because
the eonomy is not overheating."

 と言っている。まさに、市場の受け止め方もそうでした。彼が言うMain Streetとは、自動車、鉄鋼など中西部の産業地帯を指します。Wall Streetは言うまでもなく、ニューヨークなど当部の金融・証券業界を指します。どちらも喜べる数字だったと。

idealistic environment for the incumbent

 むろんドールは、4日発表の米雇用統計は、「成長のペースが戦後の平均を下回っているという事実、さらに実質の手取りが増えていないという問題」を隠蔽していると批判している。しかし、迫力不足です。市場の反応がめざましかっただけに。「奇跡」がなければ、ドールは劣勢をひっくり返せそうもない。そういえば、皆さんがこのニュースをお読みになる頃には、クリントン vs ドールのテレビ討論はもう終わっている。

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 今朝のMonday Nikkeiには、「米景気予測」として多くのエコノミストの予測が揃って載っている。米経済の先行きに関しては、「軟着陸」との見方が強い。このテーブルを見て気が付くのは、今年12月まで3ヶ月と、来年3月まで3ヶ月で平均して消費者物価上昇率と失業率が全く同じ数字になっていること。消費者物価上昇率は3.0%、失業率は5.2%。つまり、この間の米経済は、この二つの指標では動かない、横這いとエコノミストは見ているということ。これは極めて「安定」した姿です。

 成長率見通しは、今年12月まで3ヶ月間は2.4%、来年3月まで3ヶ月間が2.2%でちょっと下がるという予測になっているが、これもほぼ横這い。これだけ見ても、アメリカ経済の全体的な安定度は極めて高くなっているのが分かる。

 この安定度ゆえに、市場、特に株価とドルは高値追いを続けそうです。

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 今週はあまり大きな指標はない。アメリカ関係では10月8日にはマクドナー・ニューヨーク連銀総裁と、ブローダス・リッチモンド連銀総裁の講演があって、9日が卸売売上高統計(8月)。週末の11日に卸売物価(9月)と小売売上高(9月)。アメリカ以外では、10日のドイツ連銀定例理事会が大きい予定でしょう。同日は日本は「体育の日」で休み。

 11日には、日本では松下日銀総裁が、ドイツではティートマイヤー連銀総裁が講演をする。

The streak stands at 12

 ニューヨーク株に関して週末に面白いニュースを見つけましたので、ちょっと紹介しておきましょう。

 “The streak stands at 12: The first trading day of each month has been a winner for blue chips.

 というもの。つまり、「ニューヨークの株式は過去12ヶ月連続で、それぞれの月の最初の取引日に上昇している」。ここで言うblue chipsとは、ダウ工業株30種平均とSP500に含まれる株。何故か。これは、ニューヨークの株を押し上げている資金の投資のされ方に理由があるようです。

 “For largely practical reasons, this money -- particularly from 401(k) and other retirement plans -- is rarely invested on a daily basis.Instead, the money often is piled up and put to work at predetermined intervals, often at the start of each month, producing a periodic swell of demand for securities, said Jerry Hegarty, a market analyst for Thomson Research of Boston.

 ということらしい。つまり今のニューヨークの株式を押し上げている資金(401K資金など)は日々投資されるのではなく、貯められてある決められた日に投資される。例えば月初めなどに。そこで、去年の11月からずっと「その月最初の取引日に株価指数が上がる」という現象が起きているというのです。

これに対して、

 "Redemptions are more random. They can occur at any time of the month," said Hegarty. "The buying is more compact."

  というわけ。償還は、不定期。月初めは、買いが売りを上回ると言うことらしい。

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 あとグリーンスパン連邦準備制度理事会議長が週末にハワイのホノルルで全米銀行家協会の集まりで講演をしている。金利などの話は一切なしで、テーマは「銀行業界と技術革新」に関して。

 最近のグリーンスパン議長の色々なところでの証言を読むと、同議長がデジタル技術(電子マネーを含めて)が経済に及ぼす影響を極めて注意深く検討しているのは明らかで、考えることのかなりの部分を占めていると思われますが、土曜日のホノルルでの話もその一環。記事の書き出しも

 “He spoke as an American Bankers Association convention opened with topics of discussion including on-line banking, computerized loan risk analysis and technology, such as computer systems to provide bank officers with instant customer financial profiles as they sit chatting with those customers.

 となっている。全文もFED連邦準備制度理事会(FRB)のホームページにあると思います。とりあえずニュースで拾うと、グリーンスパンは

banks that resist technological change will lose market share and profits.Even small banks must embrace high technology or they will wither."

 などと述べている。また、「銀行は規模ではなく、どのくらい情報(顧客などの)を素早く処理できるかが勝負になるとも述べている。日本の銀行にも近い将来当てはまるであろう、興味深い指摘です。

have a nice week

 秋も深まってきました。週末の一日は長野県の諏訪にいましたが、空気も綺麗で、空も澄んでいた。一年で一番良い季節です。今週は10日が体育の日で休み。一日短い一週間。

 野球もジャイアンツが優勝してしまいましたから、19日までちょっと楽しみがなくなってしまった。ここまで来たらプレーオフしても面白かったのに、と思います。何せ、アメリカでは毎年プレーオフしているのに、日本ではなし。セリーグが「引き分け」を「再試合」として全試合勝ち負けがつき、勝率ではない優勝争いになった結果。まだ一回もない。はやくやりたかった人も多いのでは。あと4〜5試合優勝が決まらなければ、その経済効果たるや凄いものがあったのではと思います。

 それにしても、昨夜ジャイアンツのビールかけを見ながら、「あれは実際に一度やってみた方が面白いかも知れない」と思いました。缶ビールをちょっと多めに買ってきて、濡れても良い場所でやるのです。理由が必要ですねな。何か大人数でもっくひょうを決めて。スポーツ選手だけの特権にしておくのはもったいない。一度はやってみたい.....と思いません。そう、是非やりたい。

 オリックスとジャイアンツの対決は、「東西」という意味でも、どちらかと言えばともに明るい感じの監督の個性からしても、また両方に若い大打者がいるという点でも、興味深い。オリックスは去年の雪辱を期し、仰木監督は近鉄時代の借りを返したいでしょう。楽しみです。

 それでは、皆様には良い一週間を.........!

                       
                                  <ycaster@gol.com>