住信為替ニュース
INTERNET EDITION

  

第1312号 1996年10月11日(金)

calm 》 

 日本が休みの間の海外市場は、全体的に静かでした。今朝の為替相場を見ると、日本が休みの前の相場に極めて近く、海外の市況記事を見ても「little changed」とか、「waiting for the numbers」という表現が目立つ。numbersとは、今日の日本時間の夜に発表される小売売上高や卸売物価を指します。

 ただし、市場が色めきたった瞬間は幾度かあったようです。欧州市場で大口のドル・マルクのコール買いが出たとき、またエリツィン大統領の健康状態が悪化したと報じられた時など。しかし、ドル・円で言うと今週初めから続いている111円のローから111円台の半ばのドル・円のレンジは破れなかった。ちょっと動きにくくなっている。為替の観点から言えば、

  1. エリツィンの終焉が接近しているかに見えるロシア情勢
  2. アメリカの景況と金利の先行き
  3. 日本の金利動向
  4. 通貨統合を控えたヨーロッパ各国の動き

 などが当面のポイントでしょう。Bの日本の金利動向については、今週「選挙目当て」とも受け取れる発言(利上げを示唆した亀井発言など)が聞かれましたが、市場はあまり真剣に受け取ってはいなかったようです。今週発表された機械受注などの数字が、引き続き日本の景況の悪さを示しているため。

 ヨーロッパでは、二つのファクターが重要です。ロシアと通貨統合。今朝は「ロシアで一番信頼できる政治家」の調査で、「レベジがダントツの一位になって、エリツィンは4位か5位に沈んでいる」というニュースがありました。健康状態とあわせて、「エリツィンの時代」の終焉は近そう。ただし、レベジに素直に権力が移行するかどうかはまだ曲折がありそうです。レベジという人物もちょっと調べておいた方がよさそう。

 通貨統合は、楽観論と悲観論が交互に現れて、マルクが安くなったり、高くなったりしている。ただし、スイスやドイツが置かれた状況は「自国通貨安を望む」というもの。景況は悪い。ドル・円以上にドル高に移行する可能性は高いと思われます。

sharp drop of initial claims

 動きがあったのは、株や債券でした。特に週の後半には債券の下げが目立った。 Lawrence Lindsey連邦準備制度理事会理事の

 「"While the commitment of the Federal Reserve to a low inflation environment is unwavering, I cannot assure you that all politicians feel the same way. Nor can I assure you that sustaining the fight against inflation will not mean a temporary rise in interest rates at some point in the future."

 という発言が弱材料に取られたり、10月5日までの新規失業保険申請者数が予想の1000人減を大幅に上回る22、000人の減少になったため。「景気は強い」という見方が台頭して、債券は大きく売られた。大幅減少の理由は、最近増えていたハリケーン関係の失業保険申請者数の増加が一転減少に転じたためとも言われるが、詳細は来週にならないと不明という。この結果、指標30年債の利回りは6.89%まで上昇した。株もこれを嫌気して、小幅安となりダウは6000ドルよりはるかに5900ドルに近い水準(5920ドル台)で終わった。

 もっとも市場は、金曜日に発表される二つの数字を待っている状況。予想は以下の通りです。

 Key data are scheduled for release Friday on September producer prices and retail sales. The producer price index is expected to have risen by 0.3% last month, while the "core" index, which excludes food and energy, is forecast to have gained 0.2%. Retail sales are seen up 0.2%.

 卸売物価は消費者物価に比べて遥かに変動が激しく、予想と違う数字が出る可能性がある。ちょっと注目でしょうか。失業保険申請者数の大幅減少については、

"It represents how fundamentally tight the labor market is," said David Jones, chief economist at Aubrey G. Langston & Co. "And it gives us a hint that labor market conditions are even tighter than we thought."

 という指摘もある。また11月の初めに発表される10月の雇用統計は注目を集めそうです。また今日の数字を含めて、今後発表される米経済統計がどう出るかが今後の市場の行方を決めそうです。

have a nice weekend 》 

 今日出社して、明日からはまた休み。谷間。気分は楽ですね。野球もプロは全部終わって、ちょっと空白地帯。野球と言えば、昨日のヤンキースの12才のファンのナイス・キャッチには驚きましたね。日本では確か素手で取ったファンがいました。グローブではなく、何か長いモノで外野フライをファンが取った場合はどうなるんでしょうね。やはりホームラン、それともやり直し。

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 ところで今朝の朝日新聞に面白い記事を見つけました。「日本人の昼食時間 最短の20分」「お国料理自慢度は仏が一番」。社会面の右側にあります。この記事によると、「世界の主要国」(日本、米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ブラジル)の中で、

 「自分の国の食生活が最高」

 と思っているのは、フランス人(95%)だそうです。以下は、イタリア(93%)、スペイン(88%)。日本は67%で米国と同率の5位。一番自国の食生活が貧しいと応えたのはイギリス人で、「自国の食生活が最高」と応えた人は、32%しかいなかったという。ウーン、分かる。ロンドンの読者の方々には気の毒な話ですが。週末のロンドン滞在は最悪です。

 食事に費やす時間は、イタリア人とドイツ人がもっとも長いという。前者は食べ、後者は飲んでいる印象がするのですが、朝昼夜三食合計で1時間32分。ちょっと短いですよね。何かの間違いでは。日本人だって、夜どこかの店に行けば、直ぐ2時間くらいたつ。しかしこの調査では、日本人は6位の1時間10分だそうです。一番短かったのは、ブラジルの57分。ちょっと意外。

 納得できるのは、昼飯だけ取ると、日本人の食事所要時間は20分だそうです。これに対してイタリア人は37分。この調査、「所要時間」をどういう前提で採取したのか不明です。例えば、椅子に座り、それを立つまでだったら、もうちょっと長いような気がする。しかし、全体に日本人の昼飯時間が短いのは確かでしょう。店も「回転」で勝負しているところが多い。

 8カ国だけというのも残念な調査ですね。この調査をしたのは、フランスの世論調査会社のIPSOS。どうして中国とインドが入っていないかと思います。もっとも、「中国」と言っても、「上海」と「北京」では全然違うかも知れませんが。でも、お国柄がかなり出ている気がします。ウーン、やっぱりアングロサクソン、ゲルマンは、味覚音痴を自ら認めているよう。他国の連中に言われ続けて、自分達でもそう思いこんだのかも知れませんが。ラテンは料理に楽天的です。

 皆様には良い週末を。天気も良さそう。                        
                                  <ycaster@gol.com>