住信為替ニュース
INTERNET EDITION

  第1317号 1996年10月28日(月)

many indicators

 今週の市場は、各国通貨に対して安値を更新している円に関心が集まりそうです。どのようなペースでどこまで行くのか。反転があるとしたら、何かきっかけか。

 材料も先週に比べれば目白押し。

 一番大きいのは、週末(1日)に発表になる米10月の雇用統計。同じ日に全米購買部協会(NAPM)の景気指数も発表になる。雇用統計については、率は横這い(5.2%)で、非農業部門就業者数は15万人程度の増加になる見通し。11月のFOMC(連邦公開市場委員会)も接近しており、金利を巡る思惑も出てきそうですが、グリーンスパンはどちらかと言えばまだ利上げをこらえたい立場を取っているように思える。

 あとアメリカ関係では、29日に7―9月期の米雇用コスト指数、それに消費者信頼感指数、30日にベージュブック、7―9月期の米国内総生産(GDP)速報値の発表がある。雇用コスト指数は前回当たりから俄然注目された指数だが、最近の米経済の特徴は例え雇用コストが上昇しても、それが最終製品価格に転嫁されない状況。前回よりは注目度が低いと見る。

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 日本関係では、29日に9月の鉱工業生産(通産省)、同月の有効求人倍率(労働省)、同失業率(総務庁)が発表される。株を見ていると、指標に反応していると言うより、政治の在り方、改革の方向にマーケットは反応しているようで、指標の重要性は債券市場で少し材料にされそうな程度でしょうか。ただし、これらの指標を受けて株が一段と下げるようなら、債券はさらに過熱し、ドルの上げ足が速まる可能性がある。

yen under pressure

 今朝の新聞でも取り上げられていますが、ベンツェン・シーリングと言われる113円60銭が間近に迫ってきました。94年の1月だったと思いますが、当時のベンツェン財務長官が、「これ以上の円安は望ましくない」と発言したのがきっかけ。これまでの市場は確かにこの発言を気にしてきました。

 しかし、当時と今では環境が大きく違うことは念頭に置いておく必要があります。当時は、日本の対外収支は依然として大幅な黒字で、現在のような減少傾向は見られなかった。また、米産業界の競争力もまだ疑心暗鬼の状態でした。今期の決算を見れば、アメリカ企業の収益力は強いものがある。また、日本の金利は最近ほど低い水準ではありませんでした。

 肝心のアメリカ政府のドルに対する立場はといえば、先週末のルービン財務長官の発言でも明らかなとおり、「強いドルは米国の国益にかなう」というものです。選挙前だからという見方もありますが、クリントンが再選される今の状況で、選挙後に直ちに180度同国政府の立場が変わるとは思えない。

 もっと異なる環境に置かれているのは、日本の機関投資家です。株が軟調で、債券も過去に例をみない低い水準。しかも、こうした環境下で運用競争が激しさを増している。来年にかけて年金市場が開放されれば、運用競争は一段と激化するとみます。対外投資意欲は、1980年代の前半ほどではないにせよ、かなり高まっていると見るのが自然です。94年当時は、まだ80年代後半、90年代前半の持続的な円高で外債投資がひどくやられた記憶が残っていた。

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 一方で、日本の産業界の一部からは「円安は行き過ぎ」との声も出ている。輸入物価が高くなる上に、海外で生産した製品の持ち込み価格が高くなり、「海外戦略」の採算が悪化するという環境もある。また、せっかく進み始めた産業構造の転換が遅れてしまうという見方もあるのでしょう。ただし市場の需給から見ると、依然としてドルの「buy on dips」が続く中で、円の安値追いの可能性が高いと見ます。金利差もあり、また運用先の問題もあり、円をロング(買い持ち)にするコストは大変です。

 あと今週の注目点と言えば、ニューヨークや東京の株の先行きは注目です。ニューヨークは週末に反発してダウで6000ドルを回復しましたが、利食い局面が終了したかどうかは不明。東京の株は今週も下げ続けるようだと20000円割れの危険性も出てくる。

have a nice week

 寒くなってきましたね。今日当たりからコートを着る人が増えるかも知れない。ということは、朝の電車がちょっと混む。今はオフィスがどこでも暖房十分ですから、コートはしっかりしたもの、その下は薄着という人が多いのではないでしょうか。欧米スタイル。寒かった今週末も、気分が暖かかったのは神戸でしょうか。社内メールで、神戸支店にお祝いメッセージを送りましたら、田辺支店長からお礼が来て、それによれば「阪神」優勝の時と違って、神戸の方々は静かに噛みしめるように優勝を楽しんでおられるようです。

 「優勝記念セールスを行っている関係で人も車も多くなっております」ということですから、週末は結構にぎわったのではないでしょうか。「震災からの復興と言うテーマの神戸におきまして、非常に明るく、全国一と言うことで、自信も戻り、年末に掛けまして、様々な行事の一環に組み込まれて、比較的静かに長く喜びを味わって行くと言う感じになると思います」とのこと。改めて、神戸の方々にはおめでとうございました。なるべく神戸に行って、お金を落としましょう。

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 急に寒くなると風邪を引く人が多くなる。十分お気をつけ下さい。それでは、皆様には良い一週間を。                                  <ycaster@gol.com>