住信為替ニュース
INTERNET EDITION

 

第1322号 1996年11月15日(金)

in short  

 本日は出張中ですので、手短に。いろいろな動きがあった週でした。通貨に関する発言も多かった。まず目立ったのは、ドイツのマルク引き下げ努力。昨日の海外市場では、ティートマイヤー・ドイツ連銀総裁の     

Tietmeyer said he "welcomes" the U.S. currency's recent
strengthening and that he hopes it will continue
to rise.

 という発言が注目を集めましたが、これは今週半ばの同僚の連銀理事達の発言と軌を一にするもの。やはりドイツとしては1ドル=1.5マルク以下のマルク相場はやはり「歓迎できず」ということのようである。

 ドルについては、アメリカ・サイドからも発言がありました。喋ったのは、Jeffrey Schaferで、国際問題担当の財務次官(the Treasury undersecretary for international affairs)。彼は、

 「 the U.S. still favors strength in the dollar.

 と語ったと伝えられる。アメリカで「ドル」に関して正式にコメント出来るのは、大統領と財務長官というのが公式な立場ですから、シェーファーがどのような権限でこうした表現をしたのか分かりませんが、まずは市場の一部にあった「選挙後はクリントン政権はドル支持政策を引っ込めるのではないか」との見方は後退したと言える。しかし、市場は最近ドルについて発言を控えているルービン財務長官の発言を待つことになるでしょう。一方、日本の方は昨日の榊原・大蔵省国際金融局長の発言が注目されましたが、「no change」を通されたよし。大蔵省が、「no change」と言える理由については、この「ニュース」の過去2号ですでに取り上げてあります。

 ――――――――――
 高官発言ではないものの、昨日の海外市場でドル相場を動かしたのは、新聞報道。ワシントンの国際経済研究所の所長で、「円安論者」として有名なフレッド・バーグステンがローラ・タイソンの後任の大統領経済諮問委員長に就任する可能性が高いというもの。報じたのは、ジャーナル・オブ・コマースという新聞。メジャーな新聞ではありません。しかし、この報道は「円買い・ドル売り」を引き起こすに十分だった。バーグステンは、「ドル安論者」といってもマルク相場に言及することは稀で、「円高」をしばしば言いますから。最近の英誌「エコノミスト」への寄稿記事もそうです。

 こうした一連の結果は、マルク安・円高。特に昨夜は、ウォール・ストリート・ジャーナルの記事によれば、このジャーナル・オブ・コマースの報道のあと

 

The dollar subsequently hit a session low against the yen after a large North
American money fund, rumored to be that of influential global investor George Soros,
heavily bought yen while selling German marks and Swiss francs.

 ということで、ソロスの名前が出てきている。他通貨・円が円高に移行した。

waiting for Rubin's remarks

 クリントン政権の主要閣僚の中で一期目から残る主要閣僚はルービン財務長官など少数。タイソンやライシュは大学に戻るとされており、仮にジャーナル・オブ・コマースのいうようにバーグステンが大統領諮問委員長になれば、アメリカの為替政策を決めるのは「ルービンか、バーグステンか」ということになるでしょう。当然財務長官の地位が高いのですが、マーケットは最初は憶測を巡らすに違いない。バーグステン報道で市場がドル・円を売ったのは、knee-jerk reactionとしては十分理解できるものです。為替については、ウォール・ストリート・ジャーナルに当面の見通し記事が出ていて、これはドルの先行きに関しては弱気だった。

 The Dollar, After a Sprint, Is Starting to Lose Ground

 という見出しの記事で、MICHAEL R. SESIT記者が書いていた。ネット上で検索しても出てくるでしょうし、紙でも出ていると思いますが

  1. アメリカや日本の通貨政策変更の可能性
  2. EMUに対する悲観的な見方
  3. 日独での金利上昇懸念
  4. アメリカの貿易赤字増大の可能性
  5. 日本の貿易黒字再拡大の可能性

などを指摘していた。しかし筆者はこの記事は

  1. 日本国内の難しい資産運用状況(資金が外に向かいやすい状況)
  2. 日本の短期金利の低水準維持見通し
  3. ドイツの金利の最低下の可能性
  4. 日本の貿易黒字の継続的な減少の可能性
  5. アメリカのドル政策が「ドル安」に向かうと決めつけている

などの問題点があると思っています。

new highs

 株が強い一週間でした。昨日も続伸して、ついにダウは6300ドルの大台に乗ってきた。利食いも入っているのですが、ハイテク株などに強い買いが入る状況が続いていて、昨日は38.76ドル高の6313ドル。他の株価指標も上昇。.今週もいろいろな指標が出ましたが、月曜日に指摘した通り、今週の特にニューヨーク市場の経済指標に対する反応は鈍かった。これは、市場のアメリカ経済への景況認識が今は「穏やかな成長、心配しなくて良いインフレ」ということで一致していて、これを揺るがすような数字ではないと、市場は関心を払わないため。今週でPPIなどいくつもの数字は、この範疇を出るものではなかった。昨夜出た数字では

 The Labor Department reported that consumer prices
increased just 0.3% in October, while so-called
core inflation gained 0.2%. Both numbers matched
the consensus estimate on Wall Street, and they
followed the release of moderate statistics on
producer prices released Wednesday.

Separate reports showed that October retail sales
increased 0.2%, just below the 0.3% rise that was
forecast, and that initial claims for state
unemployment insurance fell 4,000 last week to
328,000, somewhat below the 335,000 that was
expected.

 などが大きなものだった。FOMCは予想通り金利を据え置きました。景気鈍化の兆しが顕著で、金融市場も順調な展開を示している中で、あえて「寝た子を起こす」必要などありませんでしたから、当然でしょう。「年内はない」というのが私の予想です。 

 イギリスの通貨ポンドが引き続き高い。同国経済の堅調さを反映したもので、「もう一度利上げするのではないか」との見方も出ている。

 ――――――――――
 一方東京市場では、株が上値を追えない中で、債券が再びじりじりと買い戻されている。「景気は悪くないキャンペーン」を見つめ直しているように見える。ただし、円債を再び2.5%割れの水準まで買うには、ちょっと勇気がいる環境になってきました。今後出る日本の経済指標には、アメリカの経済指標以上に注目が集まるでしょう。短観は、今月分から日銀のホームーページでインターネット上でも見れるようです。もう並ぶ人はいないでしょう。

have a nice weekend

 今週は寒い日が多かったですね。特に水曜日は寒かった。大阪にいますが、今日は温かそう。冬至も徐々に接近してきました。本屋や文房具屋で来年の手帳を買う季節ですか。小生の使っているノートはパイロットで、本屋を探してもない。紀伊国屋書店でもそうです。文房具系の手帳は、文房具屋にいかないと。

 ――――――――――
 今週は見て明るくなる映画と、暗くなる映画の二つを見ました。「The Fan」は、今話題のストーカーチックな映画。ロバートデニーロがうまい。どこかで書きましたが、彼は日本で言えば、三国連太郎のような存在になっているようです。どんな映画に出ても、はまる。

 もう一つは、「ティン・カップ」。少年時代にキャッチャーであまりにも重要なところをヒットされるので、ブリキ板で保護したところから来た主人公のあだ名を題名にした映画ですが、映画そのものはゴルフの話。私どもの部のコンペも来週ありますが、この映画を見てそのままの感受性で試合に臨んだ人は、決して優勝できません。「反面教師」にした人は優勝の資格あり。ばかばかしいところもありますが、おもしろい映画です。この映画は、「俺はゴルフをしないがおもしろかった」と言ったマーク・ロサスコの推薦で見たもの。

 皆さんには良い週末を........            <ycaster@gol.com>