住信為替ニュース
INTERNET EDITION

  第1325号 1996年11月29日(金)

 先週後半のニューヨーク市場は実質休場でしたので、本日の「News and Analysis」はありません。今朝見たネット上の記事では、ウォール・ストリート・ジャーナルの為替記事が一番まとまっていた。今週末の米雇用統計が今年最後の大きな経済指標になりそうだ、というもの。一般的には、「米経済は鈍化しつつある」と思われているので、ここでの非農業部門就業者数が予想の17万5000人を上回ったり、時間当たり賃金が上昇すれば、ドルは特に対マルクで上昇するだろうと見ている。ただしこの記事は対円でのドルの上昇幅に関しては、慎重な見方をしています。なお、アメリカの雇用統計については、「ESBR」(ECONOMIC STATISTICS BRRIFING ROOM)が非常に役立つ。

somewhat pessimistic  

 アメリカの市場が感謝祭休日に向けて「休暇モード」(ポジション整理など)に入る中、日本とヨーロッパで新たな動きが目立った一週間でした。

  1. 日本での金利の大幅下落
  2. ヨーロッパでの対ドル各国通貨安・金利低下観測と、それに伴う株価の急騰

 ――――――――――
 日銀短観は、少なくとも市場の受け止め方は、昨日のウォール・ストリート・ジャーナルが

  a key Bank of Japan survey showed business
sentiment remains somewhat pessimistic,
suggesting that Japan's economic
recovery still can't support an interest rate
increase.

 と指摘していたように「somewhat pessimistic」であり、「 can't support an interest rate increase」という観測を生むに十分なものでした。短観の中には、設備投資計画や金利見通しなどで必ずしも弱いとは言えない材料もあったものの、短観発表前に海外など一部で「利上げか」という観測まであったあとでしたから、金利の低下には拍車がかかった。こうした中で、ドルも大幅に上昇。日本の金利が低下すればするほど、機関投資家や個人は資金のもって行き場を探すことになり、一つの選択肢は海外ということになる。円安圧力は強いということです。

 昨日発表になった10月の鉱工業生産動向(速報値、1990年を100)の生産指数は、101・1で前月比3・5%上昇。2カ月連続の上昇であり、生産指数が100を超えたのは91年11月以来4年11カ月ぶりという結構強い数字だったものの、「今後の予測は11月が前月比1・7%減、12月も同0・2%減となっている」というところが材料視されていた。(10月の強い数字は、携帯電話などの通信機器・設備、自動車が好調だったため)

 「景気に弱気になりすぎても...」という当局サイドからの励ましはあるものの、今のインフレ状況(というより“インフレのない状況”)や、景気の足踏み状況から考える限りは、日本の金利は当面低水準を続けると考えるのが自然のようで、市場もそう反応したと言える。ただし、資金の「行き場所がなくて行っている」という面が強いだけに、2.5%以下の長期金利水準が不安定感を伴うことには変わりはないと思われます。

downward pressure in Europe

 金利が下がりそうなのは日本だけではありません。ヨーロッパも、そして景気が強いアメリカも、景気鈍化の中で金利は低下基調と思われる。

 昨日はヨーロッパでドイツ株が DAX で見て史上最高値をつけましたが、これは欧州通貨全般がドルに対して弱かったこともありますが、金利に対する楽観的な見通しが背景。 DAX(30銘柄)はドルが大幅に上昇する中、 2,817.490.73パーセント、20.46ポイント上昇。日中の高値は2,819.95だった。

 一方フランスの株も大幅上昇。これは、フランス中銀のJean-Pierre Gerard理事が Le Mondeとのインタビューで、フラン安を狙ってドル高・マルク安を要望したことをきっかけとしていますが、それとのからみで同理事は、

One way to get the dollar higher would be to cut
short-term rates in France and Germany.

 とまで言っている。これが両国における株高の大きな背景。むろん、ドル高・マルク安にも寄与しました。今朝の東京市場のドル・マルク相場は、1ドル=1.53マルクに乗っている。

 しかし同理事は、追加して

"Unfortunately we have little influence on German
monetary policy," he was quoted as saying. "A second
possibility, given that we cannot get a concerted reduction
in rates, would be to modify the franc-mark
parity."

 と述べている。ヨーロッパではこのところ、ドルはマルクやフランに対して過小評価されているとの見方が強くなっており、いかにして欧州通貨安・ドル高を誘導するかというのが課題になっている。こうした中では欧州全体として金利が低下基調になることは十分予想できる。

 フランスは特に弱い通貨を求めており、この面から「 franc fort」政策の変更を見る向きも出てきている。

 ――――――――――
 ウィーンで開かれていた石油輸出国機構(OPEC)総会は、イラクの原油が今後数週間以内に原油市場に流れ込んでくる可能性が高い中で、生産上限の半年据え置きを決定しました。イラクの原油がいつ、どのくらい流入してくるかが焦点ですが、OPEC加盟国以外からの生産国の増量などもあり、9月から高値が続いた石油価格も低下に向かうのではないかとの見方も出ている。

 あとアメリカの新内閣は、早くても12月中旬にならなければ形が見えてきそうもありません。

have a nice weekend

 今週月、火曜日には松山とその周辺にお伺いしました。2年ぶりでしたかね。2年前の夏は、「水不足」の最中で、ホテルにも「節約」を求める紙があちこちに張ってあった。今でもこの案内は残っていましたが。

 朝6時30からやっている道後の温泉はいつ行っても良い。松山が野球どころだと思ったのは、その時ちょうど行われていた「高校野球四国大会」の話にどこに行っても花が咲いたこと。むろん、今年の夏の高校野球決勝のあのライトフライト、タッチがセーフだったか、アウトだったかにも話が及びましたが。

 ――――――――――
 四国の海運・造船業界は元気が良いというのが、全体的な印象でした。今だって運賃がそれほど良いわけではないし、船価も上がっているわけではない。しかし、造船では韓国との競争には完全に勝ったという自信はあるし、海運の方はアジア航路という伸び盛りの航路もある。むろん円安になって、ドル建て収入の円ベースの手取りが大幅に増えたという事情もあります。「プラザ直後のように、収入が六分の一になったときもあったことを考えれば....」というわけです。

現在建設中の来島大橋も見ましたが、これは壮大でした。なにせ橋脚が海上180メートルもある。すさまじい建設技術の進歩を感じました。車が180メートル上を走るわけではないですが、それにしても壮大な工事。この今治と尾道を結ぶ西瀬戸自動車道は、本州と四国を結ぶ3本目の橋になるそうです。松山のみなさまには、今回もありがとうございました。

――――――――――
 今週末は寒くなる見通しとか。皆様には良い週末を。       
             <ycaster@gol.com>