INTERNET EDITION

  第1328号 1996年12月27日(金)

last for the year

 新宿駅の西口に立つと、「21世紀まであと何日」という電光掲示板が右手上にあります。あと4年くらいですから、数字は1400台なのですが、この電光掲示板を見ると、いつもまず「そんなに近いのか」と思う。そして次に、「その時何をしていて、身の回りはどう変わっていて、日本はどうで、世界はどうだろう......」とちらっと考える。むろん考えても確実な予想などできるわけではないのですが、結構楽しみなんです。むろん、不確定要素がいっぱい。でも、「こうありたい」「こうであってほしい」という願望はある。そして、そのためにできることを考えてみます。

 1996年。いろいろなことがありましたね。今でもペルーで大勢が人質のまま。しかし、今年一年を通じ世界全体を見ると、紛争は局地戦でした。ロシアも爆発しなかったし、北朝鮮ももった。だからいいという意味ではないのですが。経済はまずは順調な成長を誇れた一年だったと言える。アメリカは良かったし、途上国の多くが健全な成長率を誇った。むろんどちらも問題含みでした。貧富の格差拡大など。しかし、分けるパイが増えたと言うことは結構なことです。そこには、活力がある。全体の経済が停滞していたのは、欧州や日本でしょうか。過去に成功した経済の仕組みを、新しくするのに時間がかかっている。しかし、欧州経済は停滞していても、株は全般的にも高かった。個々の企業ベースでは、金融、その他業種を含めて活性化はかなり進んでいるようです。

 今年の日本経済「全体」が抱えている脆弱性は、最近の株式市場が示している。26日はどしゃぶりでした。しかし、日経「平均」は大きく下がっても、昨日でさえ東証一部の取引成立1269銘柄のうち、325銘柄は上がっている。下げは766銘柄。あの悲観的ムードの中でも、325銘柄も買える株があったと言うことは、重要なことです。もう一つ、日本という国を見る視点として重要だと思うのは、これだけ円高が続いたあとでも、その中で適応し、強さを保っている製造業の存在です。強さがあるから、円安など環境がちょっと良くなれば、高い収益が出る。ハイテクでは、「アメリカに遅れをとっている」と言われても、いくつかの分野で依然として世界最先端であることに間違いはない。

 アメリカは、1980年代前半のドル高のあと、一部の企業を除いて「モノ」の世界では目立った輸出産業は息を吹き返せなかった。その分、ここから出た人材の活躍もあって今はソフト産業が急速に台頭してきている。そして英語とデジタルにからむ様々な規格を「DE FACTO STANDARD」にした。これも一つの道でしょう。しかし、これだけ厳しい競争の世界で、世界中の人々から買ってもらえるモノを作り続けられるというのは、明らかに日本にとっての、「資産」です。お金を払う人はいつでも真剣ですから、買ってもらえるというのは、やはりモノが良いと言える。

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 最近「日本人の相貌が老けてきた」という指摘が、特に海外から帰ってきた人から聞かれます。
agingの問題もあるんでしょうが、これは眼の輝きの問題だと思います。そう、最近は日本に定着している私も、もうちょっと元気になった方がいいんじゃないかと思います(他人事ではないのですが)。特に、電車の中そう思う。流行がすべて、すねかじりの女子高校生をオリジンとしているとしたら、それはなんとしても情けない。流行はいろいろな年代から出てくるべきです。

 ではどうしたら元気が出るか。結局のところ、周囲にもうちょっと好奇心を発揮し、自分でいろいろやってみるしかない、と思います。いろいろ面白いことが、いっぱいあるような気がする。いままで1時間かかってやっていたことが30分で出来るようになったら、その30分を別の事に振り分けるとか。身近からのスタートですか。確かに政治に不満はあるし、何をしているんだろう思いますが、この政治を選んだのは国民ですから、選んでおいてただただ「ひどい」というのはちょっと無責任です。

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 このニュースも、今年6月に住信のホームページや私のホームページを通じてインターネット配信を始めました。これも、一つの試みです。やってみなければ、何ができるか、どんな問題があるのかも分からない。来年も何か新しいサービスが始められればと思います。一つ一つの試みの積み重ねですかね、何でも。一発で全てが解決する策なんてない。誰か言ってましたが、「小選挙区になればすべてよしと言っていたのに、何が解決したのか....」と。確かに。マジックはない。21世紀のグランドデザインもラフにしか描けないでしょう。

 来年の為替・金利予想は一週間くらい前に作成して、「市場金融部為替カスタマー班」や各営業店に渡してありますから、それをご覧いただければと思います。もっと大きな「デジタル社会」の先行きに関しては、直近の「FORESIGHT」(新潮社の国際経済雑誌)に特別論文として「デジタル革命で何が変わる」を実体験を含めて書きました。この論文の元になった文章は、私のインターネットのホームページ(http://www2.gol.com/users/ycaster)でも読めます。

have a nice year-end and a happy new year

 年末ですが、私の部下が一人シンガポールに赴任しました。フォワード班の班長だった熊沢君。今日(27日)の昼に飛行機に乗ります。マーケット部門6年とベテランです。シンガポールでこのニュースをお読みの方は、彼を宜しく御願いします。これからのアジアは面白い、と思います。

 最後になりましたが、クリスマス明けで海外はむしろ本格化する。97年は日本の外為制度も大きく変わりますし、興味深い年になりそうです。

 皆様には、良い年末年始をお過ごしください。             Y.ITOH
             <ycaster@gol.com>