INTERNET EDITION

  第1329号 1997年01月06日(月)


What happened during...

 東京の長い休みの間に、海外の市場で何が起きたかを鳥瞰しておくのは、今週の東京市場をしっかり見る上で必要なことかもしれない。

12月31日(火曜日)

 1996年の最後の海外市場はえらく荒れた。ニューヨークの株は101.10ドル(なんとデジタルな)も下げ(引けは6448.27ドル)、その原因となったのが債券相場の急落。指標30年債の利回りは6.64%(前日は6.54%)。そして、その債券売りの原因になったのが、「12月の消費者景気信用感指数の4.3ポイント上昇」(89年11月以来の高い伸び)と「11月の新規住宅着工件数の14.2%増加」(3年5ヶ月ぶりの高い伸び)。

 為替も in turmoil。116円43銭までドル高値があったものの、ニューヨークの昼頃から急落、引値は115円95近辺。マルクはもっと劇的で、1.5530を切ったら一気に1.5375くらいまで行った。むろん、超薄商いの中での飛ぶ相場でしたが、毎年大晦日は海外も半ドンで帰りますから荒れないことが多いのに。

1月1日(NEW YEAR'S DAY

1月2日(木曜日)

1.ドルは対円で下落、対マルク、スイス・フラン、ポンドで上昇。従ってマルク・円は下落。ニューヨークの午後で、115.551.5420。アメリカのインベストメント・ハウスが対欧州でドルを買ったという。

2.全米購買部協会(NAPM)の景況指数(12月)が54%と出て、債券は急落。31日に6.54%から6.64%に上昇した指標30年債の利回りは、2日には6.74%に上昇。

3.ニューヨークの株は、債券安を嫌気して寄り付きからダウ工業株平均で100ドル下げて、日中ほとんどそのまま推移。31日にはダウは101.10ドル下げてましたから、「2営業日で200ドルか....」と思わせたのですが、引け際急激に回復、結局5.78ドル安の6442.49ドル。

4.市場全体で結局「インフレ懸念」なるものが台頭してきていて、その一因は原油価格の上昇。欧州の寒波が背景。市場の大きな関心は10日の雇用統計。

1月3日(金曜日)

 3日の海外市場は以下の動きでした。これが、東京市場につながる。

1.ドルは、ニューヨーク株価の反発を好感して大幅に上昇。特に対欧州通貨で上げて引けは対マルクが1.5670-80。年末に1.53マルク台があったことを考えれば、300ポイントの上昇。円の引けは11640銭見当。ドルは、スイスフランに対しては、94年の7月末以来の高値。ヨーロッパでは、フレンチが大きく売られた。フランス通貨評議会のメンバー交代が、「金利引き下げ機運を強めるもの」と理解されたため。

2.債券は、株価と並んで朝方上げたものの、あとは下落。BusinessWeekに、「年頭にFEDは利上げする」という記事が出ているとかいう噂が流れたりしたため。年初出ている指標はみな強く、地合は悪い。この日も11月の建設支出が発表になったが、1.9%の急増だった。指標30年債の引けは、6.73%で、前日とほぼ変わらずで、昨年末に比べると大きく売られている。

3.ニューヨークの株は債券が日中崩れたものの、その後もしっかりで、ダウで見て101.60ドル上げ、6544.09ドルで終わった。この上げは、ちょうど31日一日の下げ分を消すに十分。あとは、2日の下げ分を取り戻せば(これは小さい)、高値更新の可能性が出てくる。

4.金、銀、白金などが昨年末からの地合を引いて、下げ続けている。「多くのヨーロッパ諸国中央銀行は、欧州通貨同盟に加盟するための必要条件である債務レベル引き下げのため、金売却を開始するのではないか」との見方が、貴金属全般を圧迫。3年来の安値に低迷。この貴金属の動きからすると、債券市場の再びの「インフレ懸念」は、ちょい行き過ぎ。

higher dollar, and lower bonds

 つまり、東京市場が休み中に発生したのは、相場の大きなシーソー運動であり、東京市場に繋がったトーンは、ドルに付いて言えば「ドル高」、債券相場について言えば、景気の強さを懸念した「インフレ懸念」ということができそうです。ニューヨークの株のトーンは、東京の株式市場のそれとは全く違いますから、あまり参考にはならない。ニューヨーク市場について言うと、分母が大きくなっていますから上下する数字の大きさに驚いてはいけませんが、高値警戒感と、需給の良さにより買い圧力が綱引きをしている印象。

 年明けとともに市場のトーンが変わることはよくあることですが、これが一番起こったのは債券市場でしょうか。昨年12月半ばまでの全般的な強気のトーンは、クリスマス休暇と新年の間に消えて、どちらかといえば悲観的なムードになっている。指標30年債の利回りも、6.70%台に上昇。二つ理由があって、一つは利食いの動き。クリスマス前の動きは明らかにこれだった。

 利食いが一巡して、「97年シフト」と言うときに出てきたのがいくつかの強い経済指標であり、これを受けた金利上昇への警戒感。ビジネス・ウィークに「年初早々の利上げ記事がある」などという報道が相場を動かした。

 しかし、1月3日の貴金属の市場の動向を見ても明らかなとおり、伝統的なインフレ指標が上がり始めているという兆候はない。むしろ、落ち着いている。一つ上昇基調にあるのは、原油でしょうか。昨夜の段階で、225人以上が死んだとされる欧州での寒波の影響などが出ている。

 こうした中では、年末年初だけのトレンドでアメリカの金利が上昇基調にあると考えるのは尚早でしょう。当面の指標としては、特に9日発表の12月米卸売物価指数、10日の同月雇用統計が重要で、当面の市場トレンドを決めそうですが、この二つの指標に関係なく、今のアメリカの金利はちょっと上げすぎだと思慮します。物価上昇が具体的に上昇気配が出てきたわけではなく、市場の懸念が先行している面が強いため。

light schedules for the week

 ドルは、株式市場や債券市場の動揺にもかかわらず、昨年からのトレンドを見れば継続的に上げてきている。日本は、国内に投資市場がないという資本流出の典型的なパターンになっていますし、欧州は通貨同盟関係で財政が出動を抑制されている中で、金利政策に対する期待が強い。特にフランスなどが積極的に金利を引き下げてくるのではないかとの見方が強い。

 今週は木曜日に今年最初のドイツ連銀理事会がありますが、欧州の利下げに対する期待は年初強まるでしょう。アメリカ経済そのものには減速懸念などがあり、また資産市場の不安定などがドルに対する不安材料となっていますが、日本、欧州を見ると、ドルの堅調地合が大きく崩れる印象はしない。当面続くと予想します。

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 今週の主な発表予定は次の通りです。

6日(火曜)  日本の株式市場=大発会

7日(水曜)  12月末の日本の外貨準備(大蔵省)

9日(木曜)  12月の日本の卸売物価
         12月のアメリカの卸売物価
         ドイツ連銀理事会

10日(金曜)  12月の雇用統計

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 あれって思いますよね。1月第一週の「米雇用統計発表」が10日に延びたが故に、卸売物価が雇用統計より前に発表される珍しい月です。日本の市場の関心は、株、債券が同時並行的に売られた年末の地合がどの程度残っているかでしょうか。地合が弱いのは、むろん株ですが。

have a nice new year week

 長い正月休みはいかがでしたか。最後を除けば天気も良かったし、交通機関もいつものような混雑はなかったようで、ゆっくりされた方が多かったのではないかと思います。私は風邪気味で、予定の半分も外に出ませんでしたから、外の様子はあまり知らなかったのですが、たまに出ても街は静かでした。夕べは、「明日の朝は雪だ」と思いましたが、杉並のこの辺は、朝の段階では雪にはならなかった。地方は大変そうですが。

 正月中のその他のニュースとしては、グリーンスパン連邦準備制度理事会議長の婚約というのがありましたね。相手の女性は、Andrea Mitchell。50才で、ワシントンで長くNBC放送のレポーターをしていた人物。もう12年間もおつき合いをしていたとのことで、二人とも離婚歴あり。式の日取りは決めていないという。グリーンスパン議長は、70才。

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 それでは皆さんには、良い年、良い月、良い一週間、よい一日をお過ごし下さい。
             <ycaster@gol.com>