《 sharp contrast among G-3 》
1997年は、日米独の主要3カ国経済がシャープなコントラストを描くことから、始まりました。日本の株式市場は、「競争力の国際基準」への歩みの中で各銘柄の実力が改めて問われる局面に直面し、その結果として株価が跛行性を残しながら全体的には大きく下落。信用面でいくつかの深刻な問題を経済が抱え込む結果となり、これに伴って景気への信頼性も揺らいできている。明らかに行き過ぎだと思いますが、日経の新年からの特集「日本が消える」(?)式の「悲観論」が強い。
日本が「株」なら、ドイツ経済の危機は「雇用」で表面化しています。先週発表された雇用統計では、失業者数が410万を軽く越えて戦後最悪に達し、また第四・四半期の成長率も大幅に低下。この結果、同国では去年数回実施したものの物別れに終わっていた政府・労組・経営者の雇用を巡る会議を再び実施しようと言う運びになっている。時間外労働を半分に減らして、新しい労働者を雇うというのが一つの案だが、労組と経営者の対立は解けていない。
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これに対して、経済もそして金融市場もやや強すぎるのに悩んでいる(少なくとも連邦準備制度理事会の一部は)のがアメリカです。先週金曜日に発表された昨年12月の雇用統計は、「18万前後の増加」という市場の予想にもかかわらず、非農業部門就業者数の増加幅は26万人を越えて、去年一年間の同就業者数の伸びは260万人に達した。
この結果、「利上げ懸念」が出て債券相場は大幅に売られたものの、この債券安、金利上昇懸念が株式市場に打撃を与えたのはせいぜいニューヨーク時間の午前中だけ。午後には株価は潤沢な資金の流入を受けて高騰、ダウ工業株30種平均で78ドル12セント上昇して、引値は6703ドル79セントと史上初めて6700ドル台を記録。先週の5日間の営業日中、4日間で「史上最高値更新」となり、この結果一週間のダウの上げ幅は120ドルに達した。日本の先週の株式市場が、大発会の6日以外は、4日連続して昨年来の安値を更新したのと対照的である。経済も、連邦準備制度理事会などの予想を上回る拡大ペースを続けていると思われる。
株価上昇の背景は、
しかし、インフレ懸念はそれほど高まっているわけではない。先週発表された卸売物価は全体でこそ0.5%という高い伸びになったものの、食料品とエネルギーを除くコアの上昇率は、0.1%と、予想さえも下回る低上昇率。雇用統計が経済の強さを示して債券は売られ、指標30年債で一時は6.9%まで上昇したものの、あと引けにかけては買い戻され、6.85%(木曜日の引けは6.76%)で終わった。
《 lower mark ahead 》
為替市場は、こうした状況を端的に反映。まず、マルクが全通貨に対して軟化した。通貨統合で財政面でたががはずせないこともあって、同国の通貨に対する期待は明確で、金融の再緩和に対する観測が出ている中で、週末金曜日にはドル・マルクは1ドル=1.5850マルク近辺までドル高・マルク安になった。
円は、欧米の主要紙が「日本の機関投資家によるrepatriation(本国への資金回収)」の報道を行う中で、マルクよりはしっかりした動きを示したものの、ニューヨークの株価が上がり始めた段階でやはりドル高に動き、ニューヨークの引けは116円台前半。
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今週の市場では、ドルは対マルクでは引き続き上値追いを続けると予想される。マルクについては、一部の欧州中銀もドル・マルクを買っており、またマルク安にドイツ連銀さえ反対していない中で、また利下げ観測もある中では、マルク安は持続すると予想できる。エリツィンの健康問題も、マルク安の理由として援用されることになろう。
円は、株価の動向や当局の動きに注視する必要がありそうだ。株価が更に下げ、日本の機関投資家の間にrepatriationの動きが出れば、円買いの動きが出ることも予想される。株価下落に備えた益だしの動きは、債券市場でも見られる可能性がある。ただし基調としては、ドルが強い。
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今回の株安で特徴的なのは、「政府がまったく市場下支え意向を示していないこと」(今朝のファイナンシャル・タイムズ紙)である。同紙は、
を紹介して
「 This marks a change from the government's
readiness to
support share prices in previous market
falls.」
と指摘している。「2001年のビッグ・バンを控えて、相当な混乱は起きる」と警告してきたのは政府当局ですから、市場がそれを前倒しに株価に織り込んだとしても、それは我慢すべきプライス・アクションと見ていると言うことでしょう。市場に決めさせようと言うこと。むしろ、その方が株価の戻り速いでしょう。発射台が速く決まるという意味で。あと地価に目処が付いてくれば、出発点は明確になる。
今回の株価急落に対する各界の反応の特徴も、以前と比べると「政府は株価について何かをすべきだ」という短期対策を求める声は少ない。むしろ、抜本的な規制緩和や、行政改革を求める声が強い。そういう意味では、interventionist的な考え方は、当局、民間ともかなり薄くなってきている。今朝のテレビ東京の「マーケット・ライブ」に出演したゲスト達は、「これは良いこと」と述べていました。行政改革を要請しているのに、何かあるとすぐに「政府は何をしている」というのも論理的矛盾です。
《 money pouring in 》
ニューヨークの株式市場への資金流入は、1月に入って再び活発化しているようです。ミューチュアル・ファンドの資金の動きを追っているAMG Data Servicesという会社によると、先週水曜日に終わった一週間に、株に投資しているミューチュアル・ファンドに流入した資金は、88億ドル強に達したという。短期金融市場インスツルメントに投資しているmoney market fundsには、その3倍の資金が流入しているとも言われる。ファンドに流入する資金は12月に株価の先行きに対する不安感が高まったために一度鈍化したものの、1月に入ってから再び去年並の高い水準になってきているという。この面からは、ニューヨークの株価の先行きはまだ強いと言える。
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今週の市場では、
13日(月曜日) 96年11月の日本の国際収支
14日(火曜日) 1月の日本の月例経済報告
12月の米小売売上高
12月の米消費者物価
16日(木曜日) 11月の日本の機械受注
17日(金曜日) 12月の日本のマネーサプライ
11月の米貿易収支
12月の米鉱工業生産・設備稼働率
などが、大きな指標です。この中では、消費者物価、貿易収支などが相場に大きな影響を与えそうです。消費者物価が高く出ると、アメリカではインフレ懸念が高まり、金利上昇のきっかけとなる可能性もある。しかし、今までの物価統計で見る限り、また90年代に入ってからのアメリカの経済構造を見る限り、大きなインフレは起きそうもありません。
日本とアメリカから出る二つの貿易統計も、円安後の日本の貿易構造、日米貿易関係を見る上で重要です。
《 have a nice week 》
良い天気が続きますね。今朝も雲がないくらいの良い天気。まあ、冬ですから好天が続くのは当然かもしれませんが、空気は相当乾いている。喉にご注意。
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週末に読んだ海外の新聞に面白い話が載っていました。それは、19日の間隔を置いて双子を生んだイギリスの女性の話。これは英デーリー・ミラーが報じているもので、母親はスピークマンさん。最初の一人(ページちゃん)が出てきたのは12月19日で、14週間の未熟児として誕生。しかし、双生児のうちのもう一人(アビーちゃん)は、その時には出てこずに、出てきたのが19日後の今年。つまり、双子でありながら、一人は1996年生まれ、もう一人は1997年生まれ。なお面白いのは、この母親、自分の誕生日をこの二人の女児を生む間に祝っている。一人は、母親が23歳の時の、もう一人は24歳の時の子供だという。確かに新聞記事になるほど珍しいですね。将来、双子なのになぜ19日間も誕生日が離れているのか、なぜ誕生年が違うのかなどといった質問が何回となく投げられそうです。
ところで海外の新聞と言えば、インターナショナル・ヘラルド・トリビューンの土日版の最後の「people」の欄に、松田聖子と神田正輝の離婚の話が載っていました。写真付きで大きく。松田聖子がアメリカ人の恋人を持つ(と報じられています)など、国際的に活躍したからでしょうか。ちょっと、驚きましたね。
最後に今朝7過ぎに入ってきたニュースから。米ゴルフ・ツアー第一戦は、タイガー・ウッズの勝ち。雨のため、全体は中止となって7番(188ヤード)でプレーオフだけを行い、ウッズはあわやホールインワンというスーパーショット。もう一人のリーマン(去年の賞金王)は池ポチャ。21歳。体全体がバネのようですね。
それでは、皆様には良い一週間を。