INTERNET EDITION

  第1332号 1997年01月17日(金)

nervous markets

 年明け営業第一週よりは、落ち着いた展開となった週でした。日本株は波乱含みでしたが、先週のように一直線で下げることはなかった。引き続き、日本の通貨当局者からは「円安警戒発言」が出ていて、木曜日の海外市場では「日銀介入」の噂もでて神経質な展開ですが、特に対欧州通貨で依然としてドルは強く、ニューヨークの株も高値追いを続けた。

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 今週の指標で非常に興味深かったのは、まず14日に発表になった昨年12月、および1996年一年間のアメリカの消費者物価です。年間の上昇幅は全体では3.3%と6年ぶりの高い伸びになりましたが、食料品とエネルギーを除いたコアで見ると1994年の2.6%と同じで、それ以前を見るとこれより低いのは1965年の1.5%まで遡る。つまり、アメリカのインフレ率はコアのところでは、31年ぶりの低水準にあるということです。

 経済が強い展開を続けているためにアメリカでは年初からインフレ懸念が出ていて、木曜日のニューヨークの市場でもインフレに対して少し警戒的な連邦準備制度理事会高官発言に債券相場が反応する場面がありましたが、まだこの懸念が実際のインフレ統計で確認されるということは起きていない。「31年ぶり」ともなれば、「ではこれは続くのか」という議論が当然出てくるわけで、例えば今年初めに出たJP MORGANの「World Financial Markets」は「世界的低インフレの持続可能性」という論文を掲載していました。これをみると、インフレ率は世界中で低下している。先進、開発途上を問わずです。中南米、イタリアなど伝統的にインフレ率が高い国の低インフレ化が顕著。その背景については、メリル・リンチなどは最近のレポートで

  1. 中央銀行の揺るぎないインフレ抑制姿勢
  2. グローバライゼーション
  3. 技術の進歩
  4. 共産主義の崩壊
  5. コスト削減とリストラ
  6. 民営化と緊縮財政
  7. デフレギャップ

 の7要因を挙げているが。 JP MORGANは、「世界的なインフレ上昇をもたらしかねない直接の脅威」として、

  1. 現在の低インフレによって中央銀行が景気刺激的型の金融政策に強い自信を持ち、それゆえに世界的な過剰流動性が発生し、資産価格(ニューヨークの株など)が上昇し、それが消費者物価上昇につながる危険性
  2. 低インフレをもたらしてきたマクロ経済政策に対する世論の支持が消える可能性

を指摘していて、特に後者ではフランスや今の韓国で見られる「勤労者の反発」の危険性を指摘している。

cautious central bankers

 しかし、グリーンスパン連邦準備制度理事会議長の昨年末の発言や、日本銀行の昨年までの姿勢で見る限り、中央銀行が全体的にはインフレに対する懸念を強く残していることは明らかで、そのリスクは少ないと見られます。最近では一番インフレ警戒を解いているのはヨーロッパ各国の中央銀行で、これは通貨統合を控えているという特殊要因もあります。依然として70年代、80年代の記憶が残っているうちは、「過剰流動性」の可能性はまだ薄いといえる。

 メリル・リンチが指摘しているしている「インフレ抑制ファクター」は頷けるものが多く、最近の一次産品価格の上昇も、中間ですべて吸収されて最終製品価格には反映されていないことから考えると、インフレを巡る図式は1997年も昨年とあまり変わらないように見えます。金利が上昇するとしたら、財政赤字削減に対する熱意の喪失など、政治リスク(特にアメリカでの)の方が大きいと思われる。

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 引き続きドルが強い。特に欧州通貨に対する強さが目立っている。金利差の拡大予想、中央銀行サイドのドル高歓迎姿勢を受けたもの。円は、日本の通貨当局の「円安行き過ぎ警戒」姿勢で、高値を試しては警戒感から反落するということの繰り返し。しかし、ドルの下方硬直性は強く、こうした警戒感とドルの底意堅調地合との綱引きはしばらく続きそうです。

 ドルを巡る当面の焦点は、2月8日のG-7に向けて、各国間でどのような議論が高まるかです。日本を除く各国が「ドル高歓迎」を貫く中で、「円安懸念」を強めている日本の通貨当局のスタンスがどのような場所を確保できるかがポイントですが、たぶんアメリカもドイツも姿勢を大きく変えることはないでしょう。先に来日してクラーク英蔵相もその見方だった。もしこれが違うとなれば、相場環境は大きく変わる。

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 日本の株については、落ち着きはしたものの、依然として不安定な動きを続けています。今週発行された「SCMレポート」(住信投資顧問発行)は、最近の日本の株式市場の上げ銘柄、下げ銘柄の特徴として

 上昇銘柄―――――――――国際競争力がある

              利益成長が期待されている

              連結PERが低い値嵩株

 下落銘柄―――――――――不良債権を抱えている

              内需株乃至は国内では有力企業でも国際化の中では評価さ
                 れない企業

              利益成長に欠け、ROEが低く、PERが高い低位株

 と分類しているが、結局はそれぞれの企業が上のグループにどのくらい素早く組替えできるかが日本の株式市場全体の活力が蘇るかのポイントで、それまではpolarizationは続きそうです。

 結局絶好調のニューヨークの株価(木曜日も高値更新)は、上昇されている企業の収益に対する信頼感で資金が集まり、それによってまた資金が集まっている構図。ただし、ペースはちょっと速い。

 

have a nice weekend

 なにか、中途半端な感じのする金曜日ですね。火曜日のような。真ん中に休みがありましたから。間違えて水曜日にインターネット上の書き物に「日曜日」と書いたら、あちこちの方からメールをもらって、「気持ちは分かります」と。また明日から休みとは、ナイス。

 昨日は、Netscape Navigatorの4.0ベータ版をダウンロードして遊んでいましたが、なかなかおもしろいソフトですね。diaryの方に今夜にでも詳しく書きますが、序々にブラウザがOS化してきている。今度のナビゲーターにはエディターも付いてました。色調も、ネオン仕様。ちょっと気づきにくい。4.0ベータは、Netscape Communicatorの中に入っている。週末このソフトで遊ぶのも良いかもしれない。

 それでは、皆様には良い週末をお過ごしください。

           <ycaster@gol.com>