《 dollar surged to multi-year highs 》
ドルは今週も力強い上昇を続けました。スピードに対する警戒感は若干出てきており、それが特に木曜日の海外市場でのドル・マルクの動き、今朝の東京市場の動きになっていますが、一週間を通じて見ると基調が強いことに変わりはない。ドルが力強く上昇している背景としては、
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などでしょうか。実際のところ、世界的に「アメリカに資金を回すことの成功体験」が積み上がっている印象が強い。例えば、昨年末から今週火曜日までのニューヨークのダウ工業株30種平均の上昇幅は5.7%ですが、ドルの上昇を勘案すると、ドイツの米株投資家にとってはリターンは11.4%に、英国のそれにとっては8.7%に達している。これはこの短期間としては、膨大な投資リターンである。日本の投資家についても同じ事が言える。
米政府のドルに対するスタンスは、今週も一貫して
「a strong dollar is in the U.S. interest」(Treasry
Secretary Robert Rubin)
というもので、その背景については、
などが指摘できる。
《 G-7 》
大方の市場予測を上回るペースで上昇し、さらに上昇する見通しが強いドル相場に「死角」はないかを考えてみると、一番可能性のあるのはドル高のスピードの速さに対するアメリカの姿勢の変化、これに対して自国通貨の下げのスピードを懸念したドイツ連銀の姿勢の変化、それにニューヨーク株の急落などを挙げることができそうです。いつでも、「介入」は市場が「秩序を失った」という理由が一番大きい。あまり速く上げると、「disorderly」と受け取れます。その意味では、これからG-7までの相場の動きは要注意です。
ただし、水準そのものに不満を表明しているのは今のところ、日本の通貨当局だけ。昨日のニューヨーク市場に関しては、日銀の介入の噂も出ていました。確認はされていない。ただし、ドイツ連銀は「介入の効果」に対して懐疑的だと言われており、G-3揃っての介入は現在の段階では可能性が薄いと見られている。
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資金の流れは、依然としてアメリカに向かう可能性が強い。成功体験はしばらく続く。対米投資かが大きな収益を上げている中で、欧州、日本に投資しているアメリカの投資家は、利益を享受できていない。フランクフルトの株式市場は今年に入って5.1%、スイスの株式市場も4.4%上昇したものの、アメリカの投資家にとってみれば、いずれもマイナスである。
ドルは既に、対円で約4年ぶり、対マルクで31ヶ月ぶり、対スイスで32ヶ月ぶりの高値をつけているが、警戒感を残しながらも、また調整局面を織り込みながらも、基調は強いと見るのがよさそうだ。ただし、120円を手前にしては、かなり前からドルを抱えていた向きの利害が入っている。ここ当面は、G-7までの相場動向が注目である。
《 what Greenspan said 》
今週注目されたと言えば、グリーンスパン連邦準備制度理事会議長の上院予算委員会の証言でしょうか。これは年2回行っているハンフリー・ホーキンス法に基づく証言ではなく、私の印象では冒頭の証言全文もホーキンス法に基づく時よりも少な目でしたが、昨年末に株価に警告を発し、また米経済が予想外の強い展開を示す中で、今後の金融政策の方向に関して何を言うか注目されました。
全体的に言うと、証言、その後の議員との一問一答を含めて「バランスが取れている」「爆弾はなし」というのが一般的な市場の評価。実際のところ、
に証言を絞っていて、"irrational exuberance"などの派手な言葉もなく、市場へのインパクトは小さかったと言える。
主な証言内容は
「``The overall performance of the U.S. economy has continued to surpass most
forecasters' expectations」
「the economy has retained considerable vigor, with few signs of the imbalances
and inflationary tensions that have disrupted past expansions.
- 賃上よりは、job securityを求める傾向(労働者は、自分の今のjob skillがコンピューター技術の進歩などで陳腐化することへの懸念が強いため)
- health care関連コストが引き下げられて、これが労働コスト引き下げにつながっている
- 国際競争に直面している企業の労働者が直面しているコスト引き下げプレッシャー
- 低インフレそのものが、労働賃金の上昇を抑制
「suppressed wage cost growth as a consequence of job insecurity can be carried――――――――――
only so far. At some point in the future, the trade-off of subdued wage growth for
job security has to come to an end." In short, this implies that even if the level of
real wages remains permanently lower as a result of the experience of the past few
years, the relatively modest wage gains we've seen are a transitional rather than a
lasting phenomenon.」
「Greenspan, appearing before the Senate budget committe, predicted that gross domestic product would show three percent growth in 1996 and insisted that his comments last month on possible "irrational exuberance" in US stock prices had been interpreted out of context.」と述べた。しかし、グリーンスパン議長の経歴から言って、マスコミがこの言葉を取り上げるだろうことは十分予期していたでしょうか、「市場に警戒感を抱かせる」意図は変わらない。
《 transitional 》
今回のグリーンスパン議会証言で一番注目された言葉は、この「transitional」でしょう。「労働市場のタイトな環境が、インフレ上昇につながるまでの“移行期”」という意味だと考えられます。
中央銀行の総裁として、景気が過熱気味に推移している中でインフレに対して警戒的な発言をせざるを得ない、それ以外の発言はできなかったという客観情勢を考えれば、グリーンスパンがこのtransitionalな期間が実際には「長引く」と考えていても、ちょっと短めな、警戒的な印象を与える必要があったことは十分考えられます。
例えば今週はイタリアが利下げをし、またその他の欧州諸国で金利引き下げ見通しがある中で(イギリスは別です)、世界的にはインフレ率はまだ下がってきている。こうしたなかで、またグローバル化が進展する中で、景気が良いからと言ってアメリカだけがインフレになるとは考えがたい面がある。従って、transitionalだといいながら、グリーンスパン議長はアメリカのインフレの先行きにそれほど実は警戒的になってはいないのではないか、と予想します。こうした環境から、2月のFOMCでの利上げはなく、あるとしても3月で、あっても引き上げ幅は0.25%と予想します。
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木曜日の海外市場の動きをちょっと追っておくと、一番目立った動きをしたのは、ニューヨークの株。高値更新歩調で、高値ではダウで3900ドルにいったん乗りましたが、その直後から引けまでの2時間の間に急落、結局同指数は94.28ドル安の6755.75ドルで終わった。水曜日の市場と同様、IBMが急落して2日間で16ドル前後下げたのが目に付いた。売上高や収益ののびに対する懸念が背景。ダウは下がっても水曜日には上げていたSPやNASDAQも木曜日の市場では大きく下げた。大きな利食いの動きが入ったと思われる。
海外市場のドルの高値は、ドル・円が119円82銭、ドル・マルクは1.6458マルク。しかし、今朝(朝8時前)のドル・円は119円前後、ドル・マルクは1.63マルク前後。ニューヨークの株もそうですが、全体的に「利食いモード」という感じ。ニューヨークの債券は、もちあいで引けの指標30年債の利回りは6.84%。
《 have a nice weekend 》
今週は寒かったですね。特に水曜日。外に出たら耳がちぎれそうだった。木曜日に一つ会合があって、メニューは「鍋」だったのですが、店の人に「水曜日はお客さんが多かったでしょう。寒かったから鍋を食べようという...」といったら、「いえ、お客さんが帰ってしまったのか、昨日は暇でした」と言ってました。なるほど。「寒いから鍋」という発想にはつながらなかったようです。その代わり、昨日はその店は満員でした。店の人によれば、「最近は金曜日よりも、木曜日にお客さんが多いんです」とのこと。
インフルエンザが猛威をふるっているようです。結局体力をつけておくことしか対策はない。冬の夜更かしはいけませんよ。それでは、皆様には良い週末を。