INTERNET EDITION

第1335号 1997年01月27日(月)

 01月31日の「News and Analysis」は都合により休みます。まあ、今週のポイントは、ここまで急ピッチで上げてきたドルも、各国通貨当局者の発言もあって、また高値警戒感から神経質な動きに転じたことでしょうか。

 ティートマイヤー・ドイツ連銀総裁の

 「 the mark's "normalization process" against the dollar will end soon 」
 が代表。彼は「強いマルクを望む」とも言っている。

 この発言には二つの意味があって、@今までのマルク安は「(マルク高修正の)正常化プロセスであり正当化される。ドル高は、もうちょっと続く」 Aしかし、「もうちょっと行った後は“正常化”の範囲を逸脱する」というもの。では、「どこで逸脱するのか」が重要なポイントですが、彼はそこは言っていない。

 しかし一方で、「スイス経済はドル高に救われている。当面は現在の金融政策を維持。スイスの景気後退は終わっていない」というメイヤー・スイス国立銀行総裁の発言も出ている。これは、ドイツよりもスイス経済の方がさらに悪いことの反映。フランスもスイスと同意見でしょう。ということは、欧州は全体としては依然として「ドル高歓迎」にある。

 G7を控えて、ドイツやアメリカの当局者が何を言うかが当面の相場の動きを決めるでしょう。基調としては、世界の資金のアメリカへの流れは変わっていませんが。あと、アメリカにとってドル高が負担になるとき、例えば株がドル高を理由に下げ始めたときなどが、相場の曲がり角かと思われます。G7は、2月8日にベルリンで。最新情報はdiaryです。GOOD DAY !


What's new this week ?

 今週の市場の注目点は、

  1. ボラティリティを増している外国為替市場の動向
  2. 雇用コスト指数(ECI)発表と、米債券市場の動向
  3. 先週3日続落となったニューヨークの株式市場の動向
  4. 日本の株式市場の動向

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 などでしょうか。先週後半の為替市場は最近にない荒い動きを示しました。時に市場は、「two-way」の通常の環境を失っていた。120円にタッチしたあと、介入警戒感の中、荒い値動きになっている。ドルの安値では一段高を狙った買いが、上値では高値警戒感、介入警戒感の売りがある。

 当局が介入をする基準は、「時に市場がtwo-wayを失うほどに秩序を失ったとき」「ある通貨が一方的に過度に動いたとき」というのが基本的なものですが、先週の市場はややそのレベルに近い印象がしました。先週は日銀の介入については、様々な憶測が出ていた。

 しかし一方で、介入はそのぞれの当該国の経済情勢にマッチしたモノでなければなりませんから、この面で考えると特にアメリカとドイツの当局者には難しい面もある。アメリカは、ニューヨークの株・債券市場の動向に気を使わねばならない。買い持ちが膨らんでいるドルに対して介入すれば、大幅に下げる危険性がある。となると、長期債の大幅な下げを誘発しかねない。金利が上がれば、株は続落する。ドイツも、基本的には今のドル高を望んでいる中で、その方向を変えることには躊躇するでしょう。

 ドルを巡るファンダメンタルズは、依然として「上げ」です。月曜日のウォール・ストリート・ジャーナルの為替記事なども、「ドルを巡る基本的な環境は強い。今週は再び120円を試す」との見方を示している。ドル高の背景は、先週末のレポートで指摘したとおりですが、いずれにせよ値動きの荒い動きになるでしょう。

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 なお26日のニューヨーク・タイムズの一面右側に

 「As Dollar Rises, Treasury Policy Raises Questions

 という記事がある。読むと特に新しいことが書いてあるわけではなく、「"A strong dollar is in the interest of the United States."」と言い続けたルービン財務長官が「通常においては何事においても意見を一つにすることのない二つのグループ」( two groups who usually agree on almost nothing)である「日本政府」と「米自動車業界」から攻撃されている、と指摘している。

 最近のアメリカの新聞には、自動車業界の不満などが数多く載せられているが、この記事もその一つ。ただし、今までの米政府高官の発言を聞く限りでは、米政府自身はアメリカ企業の競争力に自信を深めており、まだ動く気配はない。米自動車業界の業績も極めて良好。

watch ECI figures

 今週は重要な経済指標が多く発表される週です。

 27日(月)         欧州連合蔵相理事会

 28日(火)         昨年第四・四半期の米雇用コスト指数(ECI
               米消費者信頼感指数(コンファランス・ボード)

 29日(水)         12月の日本の鉱工業生産
               12月の米耐久財受注

 31日(金)         1月の都区部、12月の全国の消費者物価
               12月の完全失業率、12月の有効求人倍率
               昨年第四・四半期の米GDP速報値

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 などですが、この中で一番注目されるのは28日に発表になるECIです。この指数は「賃金やその他関連経費かかわる雇用者のコスト」を全米で調査したもの。先のグリーンスパン連邦準備制度理事会議長の上院予算委員会の証言でも明らかですが、労働コストの動向を測るもっともよい指標とされており、同議長も重視していると伝えられている。

 同指数は、昨年第三・四半期は0.6%の上昇だった。28日に発表される第四・四半期については、「0.8%の上昇」というのが大方の見方。この数字が1.0%を上回るような数字になれば、利上げ観測が強まる可能性がある。しかし、穀物や石油の原材料が値上がりしてもそれが最終製品に転嫁されていないのと同様に、労働コストが上がったからと言って直ちにそれが最終製品にはねかえらないことは念頭に置いておく必要があろう。

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 同じく第四・四半期の米GDP統計については、このところの強い経済指標でエコノミストは「上向き改訂」に忙しいのですが、今現在の見通しは年率4%と、第三・四半期の2.1%の約二倍に達するとの見方が強い。

 ニューヨークの債券や株式相場は、こうした統計に敏感に反応するでしょう。ただし、株について言えば、資金は依然としてかなり潤沢であり、先週後半の3日連続安も「調整」局面だと見られいている。債券についても、先週末の段階で6.88%に利回りが上昇(昨年10月以来の高い水準)していますが、重要なテクニカル・ポイントはブレークされていない。ただし債券については、供給に対する懸念がある。

have a nice week

 週末はいかがでしたか。日曜日は温かかったですね。銀座で「第一回鍋物コンテスト」(4人一組、10組で創作鍋を競い合う)なる大会があってこれに行ったのですが、温かくて春のような陽気でした。日差しもやや強くなってきている。冬至が過ぎてしばらくたちますから。週末にネットでワシントン・ポストを読んでいたら、日本の「たまごっち」現象がかなり詳しく取り上げられていました。今朝の朝日にもある。実物を見ていないので知りませんが、面白いものがはやるものです。インターネット上でも、たまごっちはある。http://www.urban.or.jp/home/jun/tamago/です。私のように実物を見れない人は、ここでエッセンスを見るのも良い。

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 それから、土曜日だったか「エビータ」を見ましたが、これは推薦しようかしまいか迷う映画です。ミュージカルの映画版ですから、まあ「映画らしく」はない。私はロンドンやニューヨークでミュージカル版を見ていて、曲もほとんど知っていますから、「ここはこう歌っているのか」と比較しながら見れて面白かったのですが、ミュージカルの「エビータ」を知らない、曲を知らない人はどうでしょうか。

 マドンナが10代から死ぬまでずっと同じ顔で出続けているのも気になりました。ミュージカルそのものも、主人公を常にダウングレードしながら進みますから、そもそも難しい設定です。歌も全体的にロンドンで聞いた方が良かったと思う。

 それでは、皆様には良い一週間をお過ごし下さい。

                     
           <ycaster@gol.com>