INTERNET EDITION

 第1345号1997年03月17日(月)

Greenspan will testify two times this week

 今週は面白い週です。グリーンスパン連邦準備制度理事会(FED)議長が、水曜日から2日連続で議会証言する。19日が「下院銀行委員会資本市場小委員会」で、米東部時間午前10時から。20日が一番注目されるのですが、「上下両院合同経済委員会」で「経済見通しと金融政策」について同午前10時から。同議長は、22日にアリゾナ州で「独立銀行家協会」でも講演。また、Moskowシカゴ連銀総裁も、シカゴの経済クラブで20日の午後1時45分から講演。

 25日のFOMCの直前に、これだけFED関係者の議会証言、講演が控えているのは珍しい。市場はこうした一連の証言・講演から25日のFOMCでのFEDの決定の方向をつかもうとするでしょう。

 しかし、それは容易なことではなさそうです。先週も書いたとおり、筆者は結局は見送るのではないかと思っているのですが、それは別としてグリーンスパンとしても今回は難しい決定を迫られるのではないでしょうか。そして、その決定には今週発表される2月のCPI(全体、コアとも0.2%上昇の予想)や株価動向が非常に重要だと思います。そのCPIは19日に発表され、その前日には同月の住宅着工高(147万5000戸)が発表になる。

 その他指標では、このレターが読者の手に届く前に出ている「2月の日本の貿易統計」、それに木曜日の米1月の貿易収支(予想はマイナス110億ドル)が注目です。木曜日には、欧州ではドイツ連銀の理事会もある。

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 先週も書いたとおり、アメリカ経済は「生産、雇用、消費」で強い数字を出しながら、「物価」では極めて落ち着いた動きを続けている。先週金曜日に発表された2月の卸売物価統計もそうでした。予想外の二ヶ月連続の低下。全体がマイナス0.4%。1月の0.3%の低下に続くもの。この全体の大幅な低下は、エネルギー価格の低下を受けたものですが、エネルギー、食料品を除いたコアの物価も0.1%低下している。引き続き、アメリカの物価情勢は落ち着いている。

 問題は、「金融政策はその効果が出るのが遅れるから 、将来を睨んでpre-emptive な引き締めをするケースもある」と言っているグリーンスパン議長がインフレの「将来の危険性」をどのくらい見ているかです。現在のアメリカのフェデラルファンド誘導目標金利は5.25%で、一部で言われているように0.25%の引き上げになれば、新誘導目標は5.5%となる。

 今朝、例えばウォール・ストリート・ジャーナルの為替予想記事など色々な予測に目を通しましたが、同紙の為替予測記事の見出しの「Outlook for dollar is mixed as bears,bulls split on rates」でも明らかですが、見方は二分されている。金曜日に出た卸売物価以外の数字も、例えば鉱工業生産は順調に米経済の拡大を示しましたが、一方で設備稼働率は依然として危険水域と言われる85%を大きく下回ったまま。

 

Bears,bulls split on rates

 今週の市場は、FOMCへの見方が別れている分だけ、その日その日に出てくる数字、グリーンスパン議長の証言の言葉などでセンチメントが変わると思われ、この結果「微震」が続く可能性が高い。ドルについて言えば、「既に利上げは織り込んでいる。ドル買いのユーフォリアは続かない。市場はむしろ、ドイツ、日本の景気回復に注目するのではないか」という人もいれば、「短期金融市場では織り込みは完了したが、為替市場ではまだ」という人もいる。

 株式市場や、債券市場も多かれ少なかれ、同じような状況でしょう。出てくる数字、証言の言葉に注目するという展開。株式市場といえば、週末に注意を払うに値するニュースが見られました。それは、Berkshire Hathaway Incを率いるアメリカの伝説的な株式投資家Warren Buffettが同社の株主に対して、「今の株式市場は overheated だ」として「さらに新規資金をつぎ込まないように」と警戒を呼びかけた、というもの。これを報じたウォール・ストリート・ジャーナルは、

 「Add Warren Buffett to the ranks of those who think the U.S. stock market is overvalued.
 という書き出して、長い記事を書いていました。(インターネット上では14日付け)。アメリカの株価については、
PERが既に21倍(つい最近まで18倍)になり、配当利回りが1.9% (歴史的には3.0%台)に低下する中でも、「割高ではない」という見方にも値強いものがあります。「bulls」は次のような要因を指摘しています。

  1. 人口動態。アメリカのベビーブーマー世代は戦後から1964年までと日本よりよほど長いが、彼らが一斉に老後の蓄えを始めており、その蓄えを株式投信に入れている。その規模たるや膨大で、とにかくアメリカの株式市場には資金が流入している
  2. P/E ratiosも高いし、配当利回りも低いのに株が上がり続けているのは、企業や投資家が賢くなったからだ。企業は、税引後の利益から再び投資家が税金を取られる配当で支払うよりも、新たな設備投資や、そうでなければ株式買い戻しに資金を使っている。実際のところ、米企業の収益は1991年以来、配当に比して3倍のペースで増加している
  3. 投資家は、実は株式投資が非常に高い利回りを生んできたことを知っている。1805年から見ると、株式投資の実質利回りは8%に達するという。名目ベースには、これにインフレ率が加わるから、現在なら名目利回りは11%近く。これは、債券の利回りよりずっと高いし、ある調査によれば、株を20年持っていることが出来れば、株は債券と同じくらい「安全」だという。投資家は、こうした株の実績を知っている可能性がある

 以上の説明以外にも、@市場経済のスパンが広がった(企業は世界中の消費者を相手に商売が出来る) A企業経営の効率性が上がった(技術革新の成果)――などが「株強気論」の根拠でしょうか。

 しかし、徐々に「今の株価は危険だ」という人も増えてきている。まあ、日本の株は「危ない」と言われてから、相当長い間上昇を続けましたが。

 

HAVE A NICE WEEK

 久しぶりのお湿りでしたね。しかも2日も。運悪く日曜日にゴルフだったのですが、雨は降っていたし寒かったのですが、一緒に回った人たちの間には、「花粉がなくて助かった」という声が多かった。ゴルフ場(大月カントリークラブ)の売店の方によると、晴れた風のある日は、コースの上を花粉が飛んでいるのが分かるんですって。花粉症の人には、聞いただけで気持ちが悪くなる話かもしれない。

 そういえば、最近は映画を見てない。良い映画はないですかね。それでは、皆様には良い一週間を。


ycaster@gol.com