INTERNET EDITION

 第1351号 1997年04月07日(月)


《 Unexpectedly, he moved it higher 》

 先週末に出た相場材料の中で一番予想外で、従って相場を動かしたのは、約10時間ほどの短時間だったものの来日したルービン米財務長官の発言でした。出る直前に、「日本に対して押しつけがましいことは言わない」と言っていましたから、直接的な発言は無いかもしれないと思いましたが、その発言は「予想外に穏やか」(ウォール・ストリート・ジャーナル)なもので、発言直後から強硬発言を予想してドルをショートにしていた向きの同通貨の買い戻しを誘いました。

 ルービン財務長官の発言に関しては、ウォール・ストリート・ジャーナルも金曜日の為替市況の冒頭で、
 「As expected, U.S. Treasury Secretary Robert
Rubin moved the dollar on Friday.
Unexpectedly, he moved it higher.」

 と述べている。事前の様々な筋からの情報が、「日本政府のポリシー・ミックスに強い警告を発する」との見方があっただけに、予想外だったと言うことです。

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 そのルービン財務長官の発言とは、「貿易問題で日本への批判を強める戦略はとらない」「日本の黒字が世界経済の阻害要因にならないことが重要」「米国を含め、どの国も貿易政策のため為替を利用すべきでない」など。

 同財務長官が対日姿勢を厳しくしなかった背景としては、ニューヨークの資産市場が不安定になっている折りだけに、今は為替であまり波風を立てたくなかったという事情もあったのかもしれない。ドルが不安定になることは、アメリカの資産市場への資金の流れを阻害する可能性が強い。またそもそも政策論として、まずは日本に内需拡大と低金利政策の維持を迫るのが筋と考えている可能性もあります。しかし、アメリカの姿勢が予想したほど強いものではないことが判明した以上、マーケットではドル買いの安心感が強まると思われます。

 一方ルービン財務長官は、貿易摩擦が激しかった1993年に対GDPで3.1%あった日本の対外貿易黒字が1.4%にまで減少したことを賞賛しながらも、このトレンドを続くことが重要であるとも述べている。「為替を武器に使うと言うことはしない」と言っているので、125円を上回る水準に円安が進んだ場合にも市場が無秩序になっていなければ介入はしないと受け取れますが、これは市場環境次第でしょう。

 なお、今朝8時50分に発表された3月上中旬の日本の通関統計によると、同期間の黒字幅は3374億円と前年同期比33.8%の減少となった。

 

《 still robust U.S. economy 》

 ルービン財務長官も懸念したと思われるニューヨークの資産市場は、実際のところ不安定でした。日本時間の金曜日午後10時30分に発表された雇用統計のあと、米債券は大きく売り込まれた。非農業部門就業者数こそ17万5000人の増加と予想の20万人増を下回ったものの、

  1. 家計調査をベースとする失業率が、予想の5.3%から5.2%に低下した
  2. 時間当たり賃金の5セント上昇
  3. 過去1年の賃金上昇幅の4%は、1990年の6月まで一年間以来の高い伸び.
  4. 工場における労働者一人当たりの時間外労働が史上最高の4.9時間

 などがその内容。5.2%という失業率は96年の10月にもありましたが、それ以前では8年ぶりの低い水準。非農業就業者数以外はすべて経済の強さを示す数字だったため、インフレ懸念と利上げ観測が高まった。こうした中で、債券相場は指標30年債の利回りで木曜日の引けの7.06%から7.12%まで売られた。この利回りは、昨年の9月5日以来の高い水準。

 株も一時は大きく下げました。下げ幅は、ダウ工業株30種平均で一時73ドルに達した。しかし、株については「強い経済は、企業収益の増大」というプラスの面もあり、今週一週間大きく下げたあとだけに安値拾いの買い物も入って、あと反発。48.72 ドル高の6526.07ドルと、6500ドル台を回復して終わった。ダウは一時、 6400ドルまであと5ドルのところまで下落していた。.

 こうした統計で明らかなのは、アメリカ経済の強い拡大は依然として続いていると言うことです。一部では熟練労働者不足が顕在化してきている。拡大開始から既に7年目に入った経済とは思えない力強さ。問題はこれが物価に跳ね返っているか、今後跳ね返ってくるかです。その面で今週発表されるいくつかの指標が注目される。

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 物価指標を含めて、今週の主な予定は以下の通り。

 7日(月曜日)          2月の国際収支(大蔵省)

 8日(火曜日)          3月の卸売物価(日銀)
                  2月の米卸売売上高
                  2月の米消費者信用残高
                  月例経済報告(企画庁)

 10日(木曜日)          2月の機械受注(企画庁)

 11日(金曜日)          3月の米卸売物価
                  3月の米小売売上高

 指標としては、金曜日の二つの米経済指標が注目です。

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 日本では先週末にかけて一段と債券相場が買い進まれ、アメリカでは債券が売られた結果、日米金利差はone year forward rateで見て700(7円)近くまで拡大してきている。124円で売り予約したドルも、足を一年先に置けば117円になるわけで、ヘッジ・コストは膨大になっている。また日米金利差の拡大は、資本のアメリカへの流入への誘因となる。こうした金利要因、およびルービン財務長官の発言による一転してのドル買い安心感は、今週の市場でドルを高値トライに挑戦させると見ます。125円の攻防が見られる可能性が大で、それに対して日米の通貨当局がどうでるかが注目です。抜ければ、一時的に円安が加速する可能性ありと見たい。

 

《 have a nice week !! 》

 うっとうしい週末でしたね。今朝もまだ東京は雨が降っている。菜種梅雨ということですが、屋根のない甲子園で野球をしている高校生がちょっとかわいそう。野球と言えば、昨日の桑田投手の投球は見事なものでした。何か行動とか発言がものすごく成長したように感じられた。事実成長したんでしょう。今年は案外大きく勝てるかもしれない。

 それでは、皆様には良い一週間を。


ycaster@gol.com