INTERNET EDITION

  第1352号 1997年04月11日(金)

《 MOF is raising tone against cheaper Yen 》 

 ドルは、対円での介入警戒感を抱えながらも、基調は強い展開を示している。

  1. アメリカでの金利一段上昇予想
  2. 欧州単一通貨が予定通りスタートする見通しが高まったこと
  3. 日本での低金利持続見通しと、株価の低迷

などが主なドル買い材料。ドル・マルクの今週これまでの海外市場の高値は1.7272 マルクで、

これは1994年3月7日以来の高値。ドル・円も一時127円に乗って、当面の目処と言われた130円の手前まで来ている。アメリカでの金利上昇懸念については、4月に入ってこれまでに発表された統計が軒並み経済の強さを示していることから一段と強まっているもの。

 「今年の冬は大雪大雨などあって天候がニュースになったが、異常気象の期間は短く統計が強めになるのは当然で、この点を勘案してみる必要がある」(サム・ナカガマ)

 「経済は特に大きな不均衡(在庫過剰、設備稼働率の上昇など)がなく成長率はいずれ潜在成長力のレベルに落ち着いてくるだろうから利上げをするのは間違いだが、FEDは2〜3%の潜在成長力の下限にアメリカ経済を着地させようとして利上げをするだろう。しかし、これは間違いである」(スミス・バーニー)

 といった見方はある。しかし、こうした見方は市場のコンセンサスになっていない。市場のコンセンサスが一つ転機を迎えるとしたら、米東部が夏時間になって初めて発表される今日(日本時間夜9時半)の卸売物価統計(3月)でしょう。生産や雇用の統計が強く出ても、物価は弱いという最近のパターンが確認されれば、市場のセンチメントは変わる可能性がある。金曜日の統計では、小売売上高も注目です。

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 通貨問題に関しては4月10日にルービン米財務長官がテレビ出演した。ウォール・ストリート・ジャーナルなどマスコミ報道によればその趣旨は

 「(私は)ドルは短期間に上がりすぎたという意味で、また円安が貿易黒字を拡大する危険性があるという意味で日本の通貨当局者の懸念を共有する。日本は、内需主導の景気拡大を図るべきである。アメリカのドル政策は変わっておらず、外国為替相場は“時間をかけて”(over time)ファンダメンタルズを反映する」

 というものだったという。同長官は「強いドルは、アメリカの利益」とも述べたという。日本の通貨当局の懸念を共有するという形で円安に懸念を表明する一方で、ドル相場全般については強基調を望むという二段構えとなっている。

 

《 dollar on demand》

 日本サイドはと言うと、介入に関して今朝の日経新聞の一面に「円安阻止、介入へ」という記事がある。日本の通貨当局がいろいろなルートを通じて、円安阻止の努力をしているのは明らかです。使う言葉も強くなっている。特に木曜日の大蔵省の大臣から始まって榊原国金局長までの一連の発言は、これまでにない語調の強さだった。130円に向けての日本当局のマーケットへの警告は強まっている。ルービン財務長官の10日の発言は、少なくとも日本による介入には反対しない姿勢を示したものと受け取れる。

 もっとも株式市場との関係で言うと、円安持続見通しからの輸出セクターに対する買いでもっているきらいがあるところに、「円高」のカード(介入など)を切ったら日本の株がどうなるかは考えておかねばならないでしょう。経済は微妙なファブリックでできていますから。

 しかし、今の発言の勢いだと、130円に至るどこかの時点で、介入が実施されると見る方が正しいと思われます。そしておそらくいったん介入が始まった時の目処は、125円を間近には望めない122円前後となるでしょう。ただし、そこで相場を安定できるかは、日本で資金がうまく回るようになるか、低金利や株式市場の低利回りを嫌気して資金が出ていかないかによるでしょう。そうすると、介入した後の相場維持の方が難しい仕事になりそう。

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 アメリカのクリントン政権の内部で、対日姿勢(内需主導経済への要望、貿易黒字拡大への警告など)を巡っていろいろな立場から意見を言う人が増えていることは確かなようです。言ってみれば、対日不満。ルービン財務長官は、どちらかというとニューヨークの資産市場も不安定だし、「波風立てずに」という立場のように見えますが、対円という意味では日本の通貨当局の立場に近づいている兆しがある。

 これに対し、ドイツは現状の為替(1ドル=1.72マルク前後)に満足のようです。不満は全く聞こえてこない。昨日も、ドイツの高官は「現状の為替に満足」と言っている。従ってドル高傾向に対する懸念を今の段階で明確にしているのは、日本の通貨当局と、アメリカの産業界の一部と政府の何人かの高官ということになる。介入をするにしても、結構難しい環境にあることは確かです。日本の金利を上げるとかの政策を発動できない。アメリカは少なくとも一回は日本との協調を示すという意味で介入をやってくるでしょうが、その後が持続的になるかどうかについては懐疑的です。

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 一方、ドル買いのサイドは証券会社に集まる個人の資金がひきもきらず、また4月の初めまでは「安いドル」を期待して待っていた向き(機関投資家を含む)がドルの手当を始めているなかで、根強いものがあります。金利差が大きな中で「安いドル」を買いたい向きは多い。彼らに「安いドルを買える」とどう納得させられるかでしょう。

 

《 bear market is lurking nearby》

 ニューヨークの株の調整局面は続いているようです。木曜日には、投資会社協会(Investment Company Institute)が「3月に株・債券のmutual fundsに入ってきた新規資金はネットで推定85億ドルと、2月の206億2000万ドルの半分にも達しなかった」と発表した。3月について言うと、同月末の株価急落で株式ファンド全体のパフォーマンスは1.98%のロスとなったようで、資金の流入減少と株価のパフォーマンスは一致している。4月については、新規流入ペースは再び高いとの報告もでているようですが、株式ファンドについては

Still, stock fund inflows have clearly
waned since the beginning of 1997. The
funds attracted an estimated net $9.5
billion in March, down nearly 50% from

February's $18.45 billion and more than
67% from January's record $29.08 billion.

 という記事が目を引いた。

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 あと、興味深いニュースとしては米労働省が10日に「試験的消費者物価指数」(experimental consumer price index)を発表。それによると、従来の方式と違う物価計測方式を行った結果、昨年一年間の米消費者物価上昇率は2.9%で、伝統的な公式手法で算出した3.3%に比べて大幅に低かったという。この新しい物価計測方式について、先に議会の委託で消費者物価のゆがみを調査したボスキン・スタンフォード大学教授は、「労働省統計局の新しい消費者物価は、慎重かつ敏速に見直しが着手されたという意味で、評価できる」と述べている。

 

《 have a nice weekend 》

 桜は終わってしまいましたが、一緒に花粉症の季節も終わろうとしている。今年はひどかったようで、私も長い間調子が悪かった。まあ、これからは外に出るのはそれだけで気分が良い。プロ野球は、やはり阪神が予想通りというか、結構がんばっている。でも、このまま「ANSIN」できるかというと、ちょっと心許ない。しかし、今日からの巨人3連戦は結構盛り上がるでしょう。日本のプロ野球界も「ドーム」が増えましたが、天気さえよければ絶対野球は外が良い。今週末の甲子園は面白いのではないでしょうか。

 それでは、皆様には良い週末を.............!!


ycaster@gol.com