INTERNET EDITION

第1353号 1997年04月14日(月)

《 turmoil in U.S. financial markets 》

 米国経済は引き続き強い展開を示しており、ニューヨークの金融市場は「どこまで金利が上がるのか」におののき始めているように見えます。先週末11日に発表された経済指標は二つ。

  1. 3月の米小売売上高と2、1月の改定値
  2. 3月の米卸売物価指数

 小売売上高については、3月の伸びは0.2%でこれは予想(0.5%の上昇)より幅としては小さかったのですが、市場が驚いたのは前2ヶ月の改定値。2月分が当初発表の0.8%増から1.5%増に、1月分が当初発表の1.5%増から1.7%増に改定された。

 卸売物価は、全体は3ヶ月連続の低下(予想は横這い)でしたが、市場が問題視したのは、エネルギー、食料品を除いたコア指数の0.4%上昇。一年ぶりの大幅なもの。予想は「0.1%の上昇」でした。

 この二つの統計によって、 株式・債券相場は急落。株は、ダウ工業株30種平均で148.36 ドル下げて、引けは6391.69ドルとなった。これは、下げとしては史上8番目の大幅なものだという。しかし下落率の2.27%はランク入りする下げではない。この大幅な下げにより、ダウ平均は年初のレベルを 55 ドル以上下回った。また、金曜日のダウ平均は3月11日に記録した史上最高の7085ドルを694ドル下回った。この高値からの下げは、9.8%に達する。高値からの10%までの下げは「調整」と見られていますから、金曜日の下げでもかろうじてその範囲にとどまっていることになる。アメリカでは「弱気市場」は、「高値から20%の下げ」からスタートすると言われているから、そこに至るにはまだ700ドルくらい余裕があることになる。

 一方、債券相場も大幅に下落。指標30年債の利回りは木曜日の7.10%から7.16%に上昇した。金曜日に発表された二つの統計を見て、「5月20日の次回FOMCでの利上げは確実」「場合によっては、それ以前にも」との見方になっている。3月の利上げ時の理由としてFEDは、「引き続き需要が強い」ことを挙げていましたが、先週末発表になった小売売上高は、まさに「消費需要」の強さを証明した。この結果、多くのエコノミストは今年第一・四半期の米実質経済成長率は、3.8%前後に達すると予想している。この高い成長率は実際にそうなったとしたら、1996年の第四・四半期以来。

 今週も、ニューヨークの株式市場や債券市場は、不安定な動きを続けそうです。今週の指標ではやはり火曜日に発表になる消費者物価が大きい。なお、先週末に紹介した「試験的消費者物価」は「公式」からちょうど一週間後に発表になる。試験的消費者物価は、昨年一年間を取ると、公式統計(3.3%上昇)より0.4%低い2.9%の伸びだったという。市場が将来どちらの統計を見ることになるかは不明ですが、ここ当面は「公式」統計をより注意深く見ることになりそうです。

 

《 waiting for a G7 meeting 》

 ドルは、米金利上昇予想を強材料としながらも、株・債券などの下げが弱材料となっている。この綱引は今週も続きそうです。ニューヨークのダウが再び大きく下がるようだと、金利上昇見通しが後退して、この結果ドルに対する下げ圧力になる。

 しかし、株式市場が大きな動揺を続けない場合は、やや気が早いかもしれませんが4月27日の次回G7を控えて通貨当局がどう動くかに関心が集まりそうです。二つの見方がある。

  1. 日本の通貨当局は、このG7の前にドル・円為替を115〜125円のレンジに納めておきたく、このため先進国で最高である2193億ドルの外貨準備の一部を使って基本単独でも介入を実施する
  2. 金利差などからみて、日本の通貨当局が出来ることは限られており、またアメリカの通貨当局も少なくともそれほど積極的ではなく、従ってG7でもっと強い調子でドルの上げ、円の下げを懸念する声明が出るまで待つ

というもの。しかし、実はこのどちらになるかを決めるのは、結局はマーケットの環境でしょう。確かに、日本国内の資本の動きなどを見れば、ドルが底堅く推移するのは十分予想できる。

4月4日(ルービン財務長官の来日時)以来安いドルを買うチャンスがなかったことを考えれば、ドルを買う人のビッドは徐々に上がってくる。まして米国経済が強く、連邦準備制度理事会の利上げが3月に引き続き5月(20日)も行われる兆しが見えているだけに、ドルの一段高を見る見方は強い。まして、日本が利上げを出来る環境には全くないため、日本からの資金の流出は続きそうです。

 しかし一方では、さしもの証券会社経由のドル買いも勢いが落ちてきたとの見方もある。また日米政府も日本の対外収支の黒字増大懸念を強めている現状では、一方的なドル高への懸念も強い。この結果、何かきっかけがなければ神経質ながら、今週は狭い範囲での値動きになる可能性もある。

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 今週の主な指標発表などの予定は以下の通りです。

14日(月曜日)          松下日銀総裁講演

15日(火曜日)          3月の米消費者物価

16日(水曜日)          3月の米鉱工業生産・設備稼働率
                  3月の米住宅着工高

17日(木曜日)          3月の日本の貿易統計(大蔵省)
                  3月の日本マネーサプライ
                  2月の米貿易収支
                  ドイツ連銀定例理事会
                  4月のフィラデルフィア景況指数

《 have a nice week !! 》

 いろいろ目覚ましい事が起きた週末でしたね。天気も一週間前とは比べものにならないくらい素晴らしかった。今朝はテレビに引き寄せられましたが、Tiger Woodsは結局 「−18」のマスターズ史上最高のスコアで優勝。21才3ヶ月の史上最年少優勝でもある。優勝が決まったのは、日本時間で午前8時8分。ご両親と抱き合って、涙を流していました。

 「優勝する」と言って、2位に対して12打のぶっちぎりで優勝するのだから、なんとも凄い。今までのゴルファーが小さく見えた。タイガーと一緒に回ったゴルファーはみなあと崩れたという。ファルドしかり、モンゴメリーしかり。ロッカも苦しそうだった。それはそうでしょう、あれだけ飛ばされ、あれだけ簡単にバーディ、イーグルを取られたら、自分のゴルフがいやになる。ニクラウスは、「タイガーは、私とパーマーの合計優勝回数(10回だそうです)を上回るだろう」と言ったそうですが、この予言は早くも当たり始めている。

 皐月賞で出た馬連5万1700円前後の配当も一瞬目を疑いました。大きなレースだけたまに参加するのですが、「18」は買った馬券の中には入っていましたが、「2」はなかった。1万円買っていれば、500万円。テレビの解説席も、あまりの予想外の結果にちょっと白け気味でしたね。特に8チャンネルの解説者達は。キャスター(斉藤 陽子)は一生懸命場をもたせる努力をしていましたが。気の毒でもありました。これだと、宝くじの一等賞並。それでは、皆様には良い一週間を。


ycaster@gol.com