INTERNET EDITION

第1356号 1997年04月28日(月)

《 G7 issues lengthy statement 》

 ワシントンで開かれていた先進7カ国蔵相・中央銀行総裁会議(G7)は日本時間の今朝、最近では珍しい長い声明を発表して終わりました。注目の為替に関しては、今年2月の合意でうたった「1995年4月のコミュニケで指摘した外国為替相場の大幅な不均衡(major misalignments)は是正された」「外国為替市場の動向を監視し、それが妥当なときには協力する」を繰り返しながら、

  1. 為替相場は経済のファンダメンタルズを反映すべきであり、過度な相場変動やファンダメンタルズからの乖離は望ましくない(We agreed that exchange rates should reflect economic fundamentals and that excess volatility and significant deviations from fundamentals are undesirable.
  2. 大幅な対外収支の不均衡が再燃するような為替レートは避けることの重要性を強調する(We emphasized the importance of avoiding exchange rates that could lead to the reemergence of large external imbalances.

 と新しい文言を加えている。Aは明らかに日本と円を意識した文言です。2月のG7声明時にはなかった。

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 しかし、G7終了後に会議場を出て記者団に会議の印象を語った各国蔵相、中央銀行総裁の発言は、予想された以上に「現状肯定的」でした。今年2月のG7声明で「ドル安の是正は終わった」と声明に盛り込んだときには、ドルは95年の4月に比して対円で50%、対マルクで25%の上昇でしたが、今ではそれがさらにドル高になっている。つまり、G7の警告にも関わらずドルは上昇したことになる。

 普通だったら、最近の為替相場の動向にはより強い警告が出るだろう、と考えます。しかし声明を見ても、会議から出てきた各国首脳の発言からも、それが見えないというのが市場の最初の判断でした。G7声明やその後の各国首脳の発言を受けて、シドニー、東京の外国為替市場ではドルが先週末よりも大幅に上昇し、午前9時前にはドル・円は127円からみ、ドル・マルクは1.7400マルク直前になった。

 G7の会議から出てきた各国当局者の発言を拾うと

 「為替レートは、経済のファンダメンタルズを反映している」「米国は強いドルには関心があるが、より強いドルは望んでいない」(ティートマイヤー・ドイツ連銀総裁)、「為替相場は良好な状態にあると感じている」「現在のドル・円相場が不均衡を招くとは感じていない」「(2月の)G7以降の為替相場、大きなものではないが今後問題も」(英中銀総裁)、「過去のドル相場上昇、仏経済成長に極めて役立った」(仏蔵相)など。アメリカのスタンスは、G7の直前にルービン財務長官やクリントン大統領から示されたものと同じでした。

 「アメリカのドル政策は変わっていない。強いドルはアメリカの国益にかなう。しかし、弱い円に関する日本の懸念は共有する」(ルービン財務長官)、「"We want our dollar to be healthy and strong. But neither do we want any other actions to have the effect of throwing the exchange rate system out of whack in order to gain undue advantage in international trade."(クリントン大統領)

 

《 some different views 》

 しかし、どちらかと言えばG7声明を軽く見る市場のKnee-jerk reactionに対しては、異なった見方もあります。G7を受けたウォール・ストリート・ジャーナルの最初の記事は、「G7声明は日米を中心とする先進各国が大規模な介入を実施する前兆かもしれない」と次のような文章を流している。さわりの部分だけを取ると、

 
「WASHINGTON -- Seven of the world's richest countries signaled global currency traders Sunday they would support dumping billions of dollars on exchange markets if the soaring greenback doesn't stabilize.

After meeting privately at the Treasury Building for about five hours, finance ministers and central bank heads of the Group of Seven -- the U.S., the U.K., Japan, Germany, France, Canada and Italy-- issued a statement saying, "We agreed to monitor developments and to cooperate as appropriate in exchange markets."

This was taken by analysts as a veiled threat in support of intervention in currency markets by Japan and the U.S., if necessary, by purchasing massive amounts of yen and selling dollars.

"That's a direct shot over the bow to foreign exchange traders," said economist David Jones of Aubrey G. Lanston & Co. in New York. "They not only want the dollar to stabilize, but they're willing to intervene in a cooperative way to achieve the goal."

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 市場の当初反応が正しいのか、逆にこうしたウォール・ストリート・ジャーナルの見方が正しいのかはどうかは、ドルが今後どういうスピードで、どのくらい上がるかなどにかかっている。今後の問題です。

 しかし、ドルが急激に上げない限りにおいていは、市場の反応の方が正しいように見える。G7を前にした各国の通貨に関するスタンスについては、大きな温度差があることはこのニュースでも指摘してきました。アメリカは、円安が日本の貿易収支の黒字増大につながり、それが米国内の保護貿易主義の声を強くするのを警戒しながらも、アメリカ経済の基調的強さの反映であり、ニューヨークの堅調な資産市場のベースであるドルの強さは維持したいというのが意向でした。基本的にアメリカには、ドルを弱くしたいという意思はない。

 ヨーロッパも全体的にはドル高歓迎です。これはG7後のヨーロッパ各国当局者の発言にも出ている。ヨーロッパの抱える一番の問題である失業を解消する手段としても、自国通貨安の為替市場環境が必要。日本は、黒字が増え始める中でそもそも「円安歓迎」の姿勢はとれないし、黒字が増えることによって増大するであろう「内需主導成長」の声を抑える面でも、「円安是正」を唱えざるを得なかった面がある。

 いずれにせよ、市場には強い介入警戒感は残るでしょう。市場は、一度は当局の意思がどこにあるかをチェックしようとする、と思います。米金利がさらに上昇する気配にあり、日独の景況がもたついている現在の状況では、ドル高はファンダメンタルズに合致しているとの考え方には、根拠がある。市場も介入懸念を抱えながらも、徐々にドルの高値を試すセンチメントを強めている。

 

《 many schedules 》

 G7以外でも、今週はスケジュールの多い週です。主な指標発表予定は、以下の通りです。大きな指標が多い。

28日(月)       3月の日本の鉱工業生産(通産省)

             3月の米新規住宅販売

29日(火)       3月の米耐久財新規受注

             1−3月来の米雇用コスト指数

             4月の米消費者景気信頼感指数

30日(水)       1−3月期の米GDP速報値

             ドイツ連銀定例理事会

1 日(木)       イギリスの総選挙

             3月の米建設支出、個人所得・支出統計

2 日(金)       4月の米雇用統計

             3月の日本の完全失業率

             3月の日本の有効求人倍率 

 一番の焦点は2日に発表になる米4月の雇用統計でしょう。日本のマーケットでは、円株がしっかりし、債券が売られている。連休中ではっきりしたトレンドは出ないでしょうが、連休明けに向けた動きが注目です。29日の「米雇用コスト指数」については、

The Employment Cost Index (ECI) for December 1996 was 130.9 (June 1989=100), an increase of 2.9 percent from December 1995, the U.S. Department of Labor's Bureau of Labor Statistics reported today. The ECI measures changes in compensation costs, which include wages, salaries, and employer costs for employee benefits.

Quarterly changes, seasonally adjusted

On a seasonally adjusted basis, compensation costs for civilian workers (private industry plus state and local governments) increased 0.8 percent in the three months that ended December 1996. This continued a pattern of increases that have ranged from 0.6 to 0.8 percent for the last three years. Wages and salaries increased 0.8 percent during the September-December 1996 period. The increase for the June-September period was 0.6 percent. Benefit costs increased 0.7 percent in December; in September, these costs increased 0.6 percent.

というのが前回発表でした。

 

《 have a nice week 》

 今年の連休は不幸ですね。つながりが最悪。まあ、年末年始がすごい組み合わせでしたから、連休くらいは仕方がないかもしれない。土日に新宿などに出かけましたが、どこも凄い人手でした。天気が良かったからですが。馬場が固かったせいか、天皇賞は凄い記録が出ました。配当的にはおもしろくなかった。

 明日が休みで、また出社。皆様には良い連休の週を。


                 ycaster@gol.com