第1365号 1997年06月16日(月)

《 EU summit on growth and jobs 》

 今週は材料の多い週です。月曜日、火曜日にはアムステルダムでEU首脳会議があり、その前にいわゆるstability pact(参加国に統一通貨発足後の財政赤字の対GNP比率義務付けなどを定めた協定)に関して詰めの討議が行われる。その後、水曜日に日本の5月の貿易収支発表が、木曜日にアメリカの4月の貿易収支発表があり、金曜日からはデンバー・サミットとなる。この間に、火曜日にはアメリカで5月の消費者物価と鉱工業生産指数・設備稼働率が発表され、18日には松下・日銀総裁が講演。つまり、日米欧で指標発表や重要な会議が目白押しという状況。

 先週の乱高下で明らかなとおり、市場は特にドル・円相場に関しては神経質な動きを示しています。これは5月の連休明けからの大きなドル下げの中で、それまでの相場の先行きに対する見方が大きく崩れ、市場全体が相場の先行きに手探りの状態になってしまっていること、市場で依然として残る大きなポジションの整理が終わっていないことが大きい。全般はあまりにも大きな材料が目白押しで、また先週上下両方をトライしたあとだけに大きな意味で大枠はレンジと見ますが、引き続き一端動き出したときの相場の足は速いとみます。

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 ユーロを巡る動きは関係する国の数が多い分だけ複雑で、理解に苦しむことが多いのですが、今焦点となっているのはstability pactの優先目標の中に「成長」「雇用」を入れたいというフランスの新政権の意向をどう扱うかです。フランス以外の国は、「成長」と「雇用」を敢えて優先項目に入れることでユーロの信頼性が落ちるようであれば、これは回避したいという意向。特に、ドイツにその意向が強い。

 議長国オランダとしては、

  1. 雇用創出を強調することにより、EU諸国内の経済政策調整を強化する
  2. マーストリヒト条約に加盟国政府に対する成長と雇用への取り組みを約させる新しい言葉を入れる
  3. EIBの貸出方針を、より職創造的なものに変更する

 などでフランスの要望を取り込み、合意に持ち込みたい考えという。

 一連のヨーロッパの会議に対する市場の反応は、ユーロの信頼性に対する疑念を残す形で予定通り単一通貨制度が発足しそうならドル買い・マルク売り、そうではなくて統一通貨そのものの発足が先延ばしになるようなら、マルク買い・ドル売りというものです。フランスの主張に関しては月曜日の正式首脳会議までに決着を付けたいというのが首脳会議参加国サイドの意向ですが、そのように順調にいくかどうかは不明。もしこの問題に決着が付けば、月火の正式首脳会議はEUの政治改革についての討議に入りたいとしている。

 こうした短期的な問題は別にして、先週経済協力開発機構(OECD)は、「単一通貨発足に必要なマーストリヒト条約上の基準を達成できる国はない」という悲観的な見方を発表している。それによれば、財政赤字の対GDP比では今年末でドイツ 3.2%(96年末 3.8%)、フランス 3.2%(同4.2%)、イタリア 3.5%(同6.7%)と主要国で3.0%の目標を達成できる国は一つもないと言う。また、スペイン、ポルトガル、オランダ、ベルギーなどは、国家債務残高をGDPの60%に抑えるという条件で、マーストリヒト条約を満たせないと言う。EU全体の失業者数が2000万人に達する中で、依然としてユーロの発足には紆余曲折がありそうです。先週のドル・マルク相場は週初にフランス新政府のユーロに対する姿勢が明確になった時点で大きく下げたものの、その後は政治的妥協に関する観測が強まる中で、ニューヨークでは1ドル=1.7407マルクを記録。

 

《 trade figures on Wednesday and Thursday 》

 水曜日と木曜日に日米から出る貿易収支統計については、「為替を貿易問題に対するツールには使わない」(ルービン、サマーズ両氏発言)というアメリカ政府の姿勢が出ているだけに、先週ほど材料視されることはないかも知れない。しかし、黒字が大きければ(日本の成長は)外需依存という見方が強まりますから、引き続き市場は強い関心を払うでしょう。日本の成長のペースと、成長が外需依存になる危険性に対するアメリカの懸念は引き続き強い。

 日本の通関ベースの貿易収支に関しては、5月は5900億円前後の黒字になるとの見方が強い。これは昨年5月の2290億円から大幅な増加予想。4月も黒字は昨年同期比倍増していた。

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 サミットに関しては先週既にサマーズ財務副長官のデンバーでの講演からアメリカが狙う議題に関しては取り上げました。サミットは今週ですから、もう一度サマーズが10日の講演で使った言葉をそのまま引用すれば、

 

  1. Promoting growth and prosperity
  2. Reducing risks in global financial markets
  3. Advancing the process of development in the poorest countries
  4. Integrating Russia into the global economy.

 

 サマーズ講演については、全文をカスタマーに渡しておきますから、ご入り用の方は当社の為替カスタマー・ディーラーにお問い合わせ下さい。Bは、橋本首相も具体的な提案をする予定と伝えられるアフリカ諸国への支援問題です。一つ付け加えると、サマーズは講演の最初の方で、「アメリカ経済勝利宣言」とも言える発言をしている。

 先週末のニューヨーク市場で顕著になったのは、景気の良さにもかかわらずアメリカのインフレが極めて安定している実態です。5月の卸売物価は、予想の小幅上昇に対して0.3% の低下となった。価格変動が激しい食料品とエネルギーを除いたコアでも、0.3%の下落。この結果、債券相場は6.72% まで下落した。木曜日の6.77% から一段の低下。

 アメリカの完成品の卸売物価は、これで5ヶ月連続の下落。これは、1952年8〜12月以来45年ぶり。小売売上高に見る最終需要の落ちと物価の落ち着きを見るならば、7月の連邦公開市場委員会(FOMC)でもアメリカの金融政策の変更はないと見るのが自然だと思います。

 

《 have a nice week 》

 週末はいかがでしたか。不安定ながら、比較的天気は良かった。梅雨入りしていますから、いつ天候不順になるかわからないのですが、徐々に夏の雰囲気が強まってきている。全米オープンは注目されたタイガー・ウッヅが駄目。ちょっと疲れているようですな。優勝は、アーニー・エルスで「−4」。

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 ところで、7月前半にちょっと楽しみな予定ができました。7月4日から約10日の短期間ですが、オーストラリアのウィロビー市親善訪問団員のホストファミリーになることになったのです。申し込んでおきながら忘れていたのですが、杉並区教育委員会からの先週末の連絡で判明。杉並区とウィロビーは姉妹関係にあるらしい。「大変多くの家族」が応募した中で、「抽選によって決定」したという。となると倍率が気になりますが、それは公表されていない。募集は13家族で、我が家が一家族というわけ。でも何をするのかまだ皆目見当がつきません。男子が来るのか、女子が来るのかも。年齢も。多分中学生でしょう。

 知らなくて色々な方に教えてもらったのですが、ウィロビーというのはシドニーの北、20〜30分のところにあるようです。インターネットで調べたら、Willoughbyという街は、アメリカのオハイオ州にもある。人口は5万強。でも、楽しみです。完全に違った環境で育った人間が来る。まあ、自然体ですな。日中は学校に行くから、それほど大変でもないでしょう。しかし、「納豆」は食べるか、「うに」は。まあ無理でしょうな。外食に連れて行くのはどうかな、などと今から考えてしまいますね。7月前半の最大のイベントです。まあ、面白い話があったらここでも紹介します。

 それでは皆様には良い一週間を。

 
                 ycaster@gol.com