第1371号1997年07月14日(月)

《 U.S. and UK on the spot 》

 アメリカの金融市場は、再び「トリプル高」の様相を示し始めました。まず株高では、ダウよりハイテク株が多く入っていて全体のトレンドに先行する傾向の強いNASDAQが先週末まで7日連続の上昇を記録して、初めて1500の大台を越えた。先週末の引値は、1502.62。

 NASDAQにはインテルやマイクロソフトなどの大型株も入っていますが、ニューヨーク証券取引所とNASDAQの両方の小型株(主に新興企業株)を対象とするRussell 2000も上値を追って、初めて400の大台を突破した。ダウ工業株平均も35.06ドル上昇して、引けは7921.82ドル。依然として、8000ドルにstriking distance にいる。

 株価全体の上昇は、6月の米卸売物価統計発表と第二・四半期の業績が極めて良好なことを反映したもの。コンパックなど先週決算を発表した多くの企業の業績は、予想を上回るものでした。今週はその他大手ハイテク企業の業績が発表になる。

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 その米6月の卸売物価(金曜日発表)は、0.1%の低下。アメリカの卸売物価はこれで6ヶ月連続の低下。米政府が卸売物価を発表し始めたのは1947年だそうですが、その時以来を見ても1952年に5ヶ月連続の消費者物価の下落があっただけ。つまり、アメリカの卸売物価が6ヶ月連続して低下したのは、初めてということになる。同国の卸売物価は、景気の堅調の中でも97年に入って年率3.4%も低下している。

 この物価の沈静化とドル高を受けて、アメリカの金利は一段と低下。指標30年債の利回りは6.52%と、木曜日の6.56%から一段と下がった。今週発表される6月の消費者物価に関しても、全体が0.1%の上昇、コアが0.2%の上昇と見込まれている。極めて落ち着いた水準である。なお、6.52%の米30年債利回りは96年12月9日の6.49%以来の低水準。

 こうしたことからアメリカでは、「年内は連邦準備制度理事会(FED)が利上げをすることはないのではないか」との見方が強まっている。少なくとも8月の利上げはないとの見方が強い。また今までの卸売物価の動きは、FEDの利上げに極めて慎重な金融政策運営が間違っていなかったことを示している。筆者はかねての主張通り、アメリカでインフレが発生することは当分ないと見ます。

 

《 declining mark 》

 ドルもしっかりでした。特にドイツ・マルクに対して。木曜日にティートマイヤー・ドイツ連銀総裁の「マルク調整はほぼ終わった」との発言にもかかわらず、

  1. ドイツ経済そのものの弱さ
  2. Euroが結局は弱い通貨になるとの見方

 が背景。少し前だったらティートマイヤー総裁がこの種の発言をしたときにはマルクの戻りは急激なものだったのですが、ドイツ経済の地盤沈下とともにティートマイヤー発言の威力も落ちてきた印象が強い。

 ドルの強さは、ポンドにつられた面が強い。ポンドについては、「前回の利上げでは不十分。まだ利上げがある」との見方が強く出たようです。先週末のレポートでも指摘した通り、筆者はポンドの先行きには強気ではないのですが、マルクに対する先行き悲観論からポンド買い意欲は強いようです。今朝のウォール・ストリート・ジャーナルの為替見通しは、「ポンドとドルはマルクに対して新値を更新する可能性が高い」と指摘している。

 同紙の予想は具体的に、ポンドの対マルク相場として3.10−3.15マルク、ドルの対マルクとして1.7850−1.80マルクを予想。ポンドの金曜日の対マルク相場である3.0115マルクは1990年の10月以来の高値。ドルが対マルクで1.8マルクを記録すれば、1991年の8月21日以来だという。

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 円はこうした中にあって、対ドルでは弱く、対マルクでは強いというまちまちの展開。ドルは決して対円で強いわけではない。円は対マルクで63円台まで上昇してきている。円の基調的な強さは今後も続くと思慮されます。この点については、先週既に指摘しました。

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 今週の主な予定は次の通りです。アメリカの小売売上高と消費者物価が大きい。

14日(月曜日)     日本銀行支店長会議

15日(火曜日)     6月の米小売売上高

16日(水曜日)     松下日銀総裁会見

             6月の米鉱工業生産・設備稼働率

             6月の米消費者物価

17日(木曜日)     6月のマネーサプライ(日銀)

             6月の貿易統計(大蔵省)

18日(金曜日)     5月の米貿易収支

 

《 have a nice week 》

 今日はまた暑い。まだ梅雨明け宣言はないのですが、また真夏のような天気になるのでしょうか。今年は変な天候ですね。暑かったり、ひどく雨が降ったり。

 週末に富士山に行っていたJames君は、頂上を極めないままに帰ってきました。かわいそうですが、強行したら何か悪いことが起きたでしょうから、正解だったと思います。日曜日の夕方からは、オーストラリアで禁止されているという花火を男の子5人、女の子6人の大人数でやりました。女の子達の狙いは、プリクラだったようで、花火が終わった後二グループに分かれて写真をとっていました。あちこちにべたべた張るでしょう。楽しそうでしたな。

 それでは、皆様には良い一週間を。

 
                 ycaster@gol.com