第1373号 1997年07月22日(火)

《 Greenspan testimony today 》

 今週の最大の焦点はやはり22日のグリーンスパン連邦準備制度理事会(FED)の議会証言でしょう。珍しく下院での証言が先行する。景気が良くてもインフレが高まらないこと、株価の天井知らずの上昇など中央銀行の総裁としてやはりコメントしなくてはならないことはたくさんある。

 今朝見たNANDO NET には、今日のグリーンスパン証言に関して、

「Inflation may be down, but it is not out, and the central bank needs to be wary」

 というのがメッセージになる、との文章がありました。まあ、そういうことなんでしょう。「もうインフレは心配ない」なんて言えるはずがない。重要なのは、「inflation may be down」に対するリーゾニング(理由付け)です。このリーゾニングをどういう形でするかで、「the central bank needs to be wary」の中味が分かる。理由がしっかりしたものであれば、「needs to be wary」の建前とは別に、本音の所では現在の状況を安心して見ていることが判明する。問題はそれが経済の実体に照らして当たっているかどうかではなく(それはまた別問題です)、グリーンスパンがどう考えているかです。

 当然のことですが、グリーンスパンが建前ベースで「インフレを警戒せねばならない」といっても、市場はそれを「利上げ」へのシグナルとは受け取らないでしょう。卸売物価が同統計の歴史始まって以来の6ヶ月連続低下し、消費者物価の上げ幅も極めて小さい中では、利上げが具体化する可能性は薄い。

 株価には正面切って言及はできないと思うのですが、「言及する」と見る向きもある。これも今朝見たニュースでは

 「Gramley, who is now a consultant to the Mortgage Bankers Association here, said he also expects Greenspan to voice some concern at the hearings about the continued run-up in stock market prices.」

 との発言が引用されている。金曜日に指摘したように、筆者もスピードが早過ぎると見ていますが、去年の12月の警告がまったく効かなかった経緯もある。何度も同じ事を繰り返すのは、FEDの権威にかかわるでしょう。

 

《 quite far from meeting the target 》

 グリーンスパンの議会証言の件には触れてしまいましたが、今週の主な予定は以下の通りです。

 21日(月曜日)    仏政府の財政監査会議

 22日(火曜日)    日本の5月の景気動向指数

             グリーンスパンFED議長が下院で証言

 23日(水曜日)    グリーンスパン上院証言

 24日(木曜日)    日本の夏の情勢判断資料(日銀)

             独例銀定例理事会

 25日(金曜日)    7月の東京都区部、6月の全国消費者物価(総務庁)

             6月の米耐久財受注

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 「仏政府の財政監査会議」の結果は今朝のNHKニュースでもやっていましたが、1997年の同国の財政赤字は対GNP比で3.5〜3.7%とマーストリヒト条約で「条件」とされている「3.0%」にははるかに届かない数字。カーン蔵相は、「前保守党政権の失政」を非難している。ただし、このニュースは月曜日の海外の市場では響かなかった。すべては、グリーンスパン証言待ちという状況です。

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 アジアの外国為替市場では、インドネシア・ルピアが大きく売られた。タイから始まった弱いアジア通貨に対する売りが次々にターゲットを変えている。今朝の状況はまだ分からないのですが、昨日の午前の段階にシンガポール市場で既に金曜日の引けに対して3.5%も下落して対米ドルで史上最安値に落ち込んでいる。これに対して、国営銀行が介入に出た模様。

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 今朝のニュースでは、「ドイツのバイエリッシェ・ヒポテーケンとバイエリッシェ・フェラインスバンクが合併」というのが注目。ドイツ銀行(資産4949億ドル)に次いでフランスのアグリコール(同4106億ドル)を抜き、ヨーロッパ第二の銀行(4145億ドル)になるという。両方とも「バイエリッシェ」(バイエルン州)でミュンヘンに本拠を置いていて、ずっと噂には上っていた。今までドイツで第二位の銀行だったドレスナー(3134億ドル)はドイツ第三位ということになる。

 ドイツの国内では、住民2154人に一つの割合で銀行の支店があるという。これは、アメリカ、イギリスの二倍という。つまり、ドイツでは銀行支店が多すぎるということです。そこで、「集約」が始まっている。ドイツの二銀行の合併お膳立てをしたのは、JP MORGANだという。どうしてモルガンがここに出てくるのか知りませんが、「合併を提案し、両行にアドバイスした」とこれを報じた記事には書いてありました。

 

《 have a nice week 》

 三連休はいかがでしたか。久しぶりに週末の天気が良かった。これから少なくとも一ヶ月半は暑い。体調にはお気を付け下さい。

 久しぶりに、レストランの紹介をしましょう。

 

 TURANDOT(トゥーランドット)

 この名前を見、そしてこのレストランが「クイーンアリス」の経営だと聞いて「中華」を思い浮かべる人はまずいないでしょう。しかし、れっきとした中華料理屋さんです。懐石風のややフレンチの taste を入れた。

 入り口にこう書いてある。「美しく食べて太らない料理」。これに気づいた女性は、それだけでこのレストランが気に入ってしまう。本当に太らないかどうかは知りません。しかし、食事のほとんどは気分が支配しますから、極めて重要なポイントです。「健康に良く、日本人に昔から親しまれている食材をふんだんに使った、新しい感覚の中国料理です。繊細で感性豊かな料理をお楽しみ下さい」

 と説明されているが、確かに食材といい、味付けといい素晴らしいものがありました。知らなかったのですが、「クイーンアリス」はもう4店にもなっているそうです。「本店」、「迎賓館」、「大使館」、そして「銀座」。今度横浜のパンパシフィックホテル横浜に「トゥーランドット横浜店」を出すそうです。選択肢はないが一つ一つはきちんと作られている、というクイーンアリスの良さを持ったレストランです。ニュー山王ホテルの裏側。フランス大使館の隣。5420-4001が電話番号。

 この近くには、LA BISBOCCIAがある。西麻布から天現寺、広尾の辺はレストランがいっぱいあって、結構良いところもありそうです。

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 それでは皆さんには良い一週間を。

 
                 ycaster@gol.com