Essay

<番組よもやまーCyberchat>

 テレビの番組は、想像するより遥かに多くの人の協力で成り立っている。せいぜい出演者が4~5人の「東京マーケット・フォーカス」のような経済番組でも、直接間接に番組に携わっている人は、その10倍はいる。照明さん、カメラさんで既に7人くらい、番組についている営業担当もいれば、もっと直接的にはディレクターさんもいるし、フロアさんもいる。フロアとは、カメラの後ろ、出演者の見えるところにいて時間出しなどをする役目の人。そのほかのスタジオ関係者もいる。見えないけど非常に重要なのは、「タイム・キーパー」。秒単位で時間の振り分けをする人。あと使い走り。時々「打ち上げ」をやると、「どこにこれだけの人がいたんだろう」というほど集まってくる。シナリオ・ライターもいるケースがある。

 しかし、出演者がその日のスタジオ入り後に最初に会うのは、「スタイリスト」と呼ばれる人たちだ。出演者の着るものをセットし、頭と顔を作る。女性アナウンサーは見ていると一つの番組のために、一時間はこれにかける。スタイリストは99%女性だから、仲良しだとここでうるさいくらい話に花が咲く。最近はもっと近代的なスタジオも出来ているらしいが、テレビ東京の芝公園のスタジオの出演者控え室は、昔の風呂のように上が抜けていて、隣の声が聞こえてくる。3月まで一緒だった岡山玲子の声は高くて、何を話しているかすべて聞こえたものだ。

 男は1時間もいらない。私など10分もあれば十分。肝心なものはすべてスタジオに揃っているから、実際のところ身一つで行っても良い。どうしても必要なのは、靴下くらい。靴も以前は一足置いていた。スタイリストは、通常は上下2タイプを持ってきているようだ。「あれこれ」とうるさく言うことはないので、直ぐに完了。ただし、首が太くて腕が短い誰かさんには、スタイリストも手を焼いているらしい。

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 しかし、だからといって鼻歌まじりでスタジオ入りできるかというと全く違う。まずゲスト。「テレビは初めて」というような方だと、「緊張しないで喋ってくれるだろうか」とか、「テンポの良い番組にできるだろうか」と心配になる。慣れた人だと、その点は全く心配しなくて良い。話のテンポも内容も大体分かっているから、「このくらいのレベルの番組になる」と予想できる。しかし、逆に「それだけで終わったら失敗で、何か新しいものを引き出さねば」と思う。テレビに出慣れている人の場合は、視聴者も安心して見ている一方で、「またか」という気持ちがある。逆に見慣れない人がゲストだと、「誰じゃい」という一種拒否反応と、「何を言うんだろう」という好奇心がある。

 番組はこの両方を満たす必要がある。結局、「何を聞き出せるか」が極めて重要。知っていても知らないふりをして聞いたり、「その通りだ」と心ではゲストの言うことに賛同していても、逆の視点から質問をしなければならないこともある。大体事前にゲストにはその旨を言っている。でもこれは楽な仕事ではない。事前の勉強が必要。

 一番開放感を味わうのは、むろん終わったとき。スタッフを誘って、必ずどこかに食べに行くようにしている。番組がうまく行ったと思うときも、逆の時もあるが、後の後悔.....でとりあえず、打ち上げ気分。この打ち上げが来週への活力につながる。何せ、貴重な週末の重要な時間帯を取られているわけだから、体力くらいつけないと.......  (ycaster 96/06/04)