Essay

「インフレーション・ターゲッティング対象物価指標を巡る論点整理」

(IMES Discussion Paper 96-J-15、日本銀行金融研究所、1996年10月)

 金融政策の運営において、近年、欧米先進国では、1970年代に有力であったマネーサプライ等の量的金融指標(monetary aggregates)を中間目標とするアプローチが後退し、金融政策の最終目標である物価上昇率を直接のターゲッティング対象とするインフレーション・ターゲッティングが拡がりつつある。

 このようなインフレーション・ターゲッティング採用国では、中央銀行は目標とする物価上昇率を公にし、これを直接的なターゲットとして金融政策を運営している。また、事後的に実現した物価上昇率の値をもって金融政策のパフォーマンスが評価される。従って、金融政策の運営の中で、計測誤差の大きさや外生的なショックの識別といった物価指数の抱える問題点をどう考慮していくかが、極めて重要なポイントとなる。本論文では、インフレーション・ターゲッティング採用国におけるターゲット対象指標の特定化、ターゲット中心値・レンジの設定、基調的な物価変動の捕捉方法、免責条項の四点についての考え方を検討する。