Essay

「ビデオカメラ価格のヘドニック分析」

(黒田祥子との共著、『金融研究』第14巻第4号、日本銀行金融研究所、1995年12月、所収)

 物価指数における品質変化の影響は、近年のマイクロ・エレクトロニクス技術の進歩に伴って、各種の家庭用電気製品にも及んでいると考えられる。本稿では、その具体的な事例の1つとしてビデオカメラを採り上げ、ヘドニック・アプローチの枠組みを適用し、価格変動と品質変化の関係を考察する。

 本稿では、まず価格データとして雑誌広告から収集した実勢価格とメーカー希望小売価格による推計結果を示し、その含意について検討する。さらに、ビデオカメラの品質調整済み物価指数を算出し、これをCPIに組み込んだ場合の影響度を試算している。

 ヘドニック関数の推計結果は、上述の二種類の価格データいずれを用いても良好なパフォーマンスを示している。さらに両者の推計パラメータを比較すると、実勢価格ベースの方が定数項が小さい一方で、機能指標のパラメータが大きい。これは、ディスカウント市場において、機能差がより大きな価格差となって現れていることを意味している。

 次に、ヘドニック物価指数を試算すると、1990年から1994年の4年間に、実勢価格ベースが年率-11.1%、定価ベースが-6%で下落している。このため、定価ベースの価格変動だけをみていると、現実の価格低下を過小評価するおそれがあると推測される。また、こうした品質調整済み価格の下落をCPIに織り込んだ場合、年率平均でみて対耐久消費財で-0.1%、対総合で-0.005%の押し下げ効果がある