Essay

<投資クラブ・収録後記(9月8日)――Cyberchat>

放映日=9月8日テレビ東京朝9時、日経サテライト午後5時~

ゲスト=長谷川慶太郎・日本個人投資家協会理事長

町内会、マンションの自治会、飲み屋の仲間、会社の友人、勉強会のメンバー、スポーツクラブの会員、井戸端会議の奥様、異業種勉強会のメンバー.......

 みんな、「投資クラブ」を設立する資格有りです。なぜなら、これらは不特定多数ではなく、「顔見知り」だから。毎月一定額を集め、全会員の話し合いで投資先を決定し、Book Keeperを決めて利益を分け合う。アメリカでは現在既に1万2400の投資クラブがあり、中にはプロ顔負けの実績を誇っているクラブもあるという。

 正直言って、私も自分の参加している勉強会に「投資クラブ」の意味合いを持たせる方向で仲間に働きかけようと考えています。理由。恐らく、勉強会をお持ちの多くの方々もそうでしょうが、せっかく色々な分野の人が集まっているのに、ただ勉強しているだけではちょっと面白味がない。実際に資金を投資するとなったら、真剣に検討するでしょう。そう、勉強になる。

 次に、これは私の持論でもありますが、「投資」は人生における最大の喜びの一つです。夢、恐れ、判断の快感。そう、投資は実に楽しい。競馬に投資して負けた人を見れば分かる。悔しがることを楽しんでいる人が実に多い。株で財産をなくすほど負けてはいけないけれども、株で損したことを懐かしがる人も多い。投資には、「決定」が伴います。その決断を人間は楽しめる。それが、少額から仲間内の勉強の結果としてできるなら、かなり意味のあることでしょう。

 長谷川さんもおっしゃっているように、むろん問題もあります。メンバーが脱会する時はどうするのか、月々の投資金額を変更するときはどうするのか。全員一致で、決めていきましょう。分からないことは、日本証券業協会に聞いても良いし、長谷川さんの協会に聞いても良い。今のような閉塞感のある時代においては、出来ることからしていくという行動が重要で、長谷川さん率いる個人投資家協会が今年の初めから「投資クラブ」設立に動いたことは、ある意味で今回の日本証券業協会と大蔵省の「お墨付き」を引き出したと言える。「東京マーケット・フォーカス」は、2月に既にこれを取り上げました。ちょっと先を行っていたかな。

 それにしても、大蔵省の銀行行政も証券行政もいままで変化が少なかった割には、最近の変化のスピードは速い。経済も市場も低迷している。やはり危機感が出てきたと言えそうです。長谷川さんは、銀行窓口での投信販売、証券会社の支店開設に関する規制撤廃、手数料の自由化などが今後の日程に上がってくると予想。

 個人投資家の呼び戻し策として日本証券業協会が今までに打ち出した

  1. ミニ株投資
  2. 単位株の引き下げ(1000株から100株に)
  3. 投資クラブ

 は確かに「小さな一歩」ですが、今後には大物が徐々に出てきそうです。そうでなければ、日本の株式市場は窒息してしまう。むろん、日本経済の再生そのものがないと株も最終的には生き返りませんが、まずできることからということでしょうか。

 今回の番組をやりながら思ったことは、「実は内なる規制」が日本の民間には残っているのではないかという点です。皆「どうせだめだ」とやらなかった。やったのは、業界からは遠い団体。「法律にさえ違反していなければ」とやった。ある有名な官僚が、「私は官僚らしくない官僚と呼ばれていますが、日本の抱える問題は民間人らしい民間人がいないことだ」と言っていたのを思い出します。うーん、結構当たっている。チャレンジ精神が必要と言うことでしょうか。「投資クラブ」はまず民間が動き、それが認知された例。「広がりを期待したい」ではなく、私も実際に体験することとします。

   (ycaster 96/09/08)