日々のライブな情報ページ

2017
05/08
Mon

のっけから立ち往生のリスク...韓国新大統領

day by day

 (23:30)明日は韓国の大統領選挙ですか。でもあまり予想外の事が起きる気がしないな。なぜなら、韓国では今回の大統領選で初めて事前投票(4、5日に実施)が行われ、中央選挙管理委員会によると事前投票の暫定投票率は26・06%に達したという。

 つまり有権者の四人に一人が既に投票を済ませていることになる。としたら「最終盤に大逆転」ということはあまりない。暫定投票が行われたあとで「候補者辞退」「一本化」ということはないだろうし、実際になかった。

 事前に投票を済ませた人の数は約1107万人。韓国の有権者(約4247万人)のおよそ4分の1であることは投票率が示す通りです。ということは、今月初めの段階で世論調査のトップを走っていた文在寅候補が次期韓国大統領になる可能性が極めて高い、と言える。韓国では「隠れ~」はいないと思われる。

 4月上旬の世論調査では、野党第2党「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)前共同代表が一時文在寅候補を支持率で上回った。「この勢いなら....」「もしかして安候補が勝つのでは」とも思えたが、ここに来て同候補は急速に支持率を落としている。それが今回の韓国の選挙戦の大きな特徴。

 テレビ討論会での論争ぶりが極めてまずかったからとも、政治家としての資質を問われているとも言われている。筆者の見るところ全体的に喧嘩下手が響いているのではないか。どこか練られていない、人の良さそうな印象だ。といってもう爽やかさはない。

 彼に代わって支持率で台頭してきたのが洪準杓(ホンジュンピョ)候補(62)だ。北朝鮮に強硬な朴槿恵政権で与党だった保守系「自由韓国党」から出馬。北朝鮮に融和的な文在寅候補を厳しく批判し、支持率を伸ばしている。しかし支持率で文在寅候補には全く届いていない。

 結局、文在寅候補が勝つ可能性が高いように思う。むろんまだ投票は始まっていないので、あと数時間のうちの大きな変化があれば変わりうる。しかし文在寅は北朝鮮お気に入りの候補だから、それに不利なことはしないだろう。

 彼の詳しい来歴は省略するが、自殺した盧武鉉前大統領の秘書室長だった人物。もともとは民主派弁護士。同じく弁護士であった盧武鉉と共に合同法律事務所を開設した経緯もある。そもそも韓国では彼は「親北派」と呼ばれる。つまり北朝鮮に融和的だ。

 有名な「おうかがい事件」も大統領選挙の最中にしばしば取り上げられ、そして批判された。もっとも彼が大統領になった時、どのような大統領になるかは分からない面がある。現実の壁に直面するからだ。「現実対応」がどのくらいあるのか。

 しかし対米、対日で大きな摩擦が起きる可能性が高い。THAAD配備を巡ってアメリカと、慰安婦合意を巡って日本との関係悪化が予想される。日本の雑誌などでは既に大統領選挙後を見据えて「韓国漂流」といった記事タイトルが踊っている。

 実際に韓国は「漂流」しうる。また新大統領が立ち往生する危険性は大きい。議会では大統領が所属する与党は過半数に全く届かない。外交関係もギクシャクするとなれば、就任早々から新大統領はいくつかの行く手を塞がれる。

 韓国の新聞を読んでいると、「最初の50日が重要」と書いてある。これはアメリカの100日より半分の短さだ。韓国はそのくらいのスピード感で事に当たらないと評価されないと言うことかも知れない。しかしその50日こそ、新大統領にとって一番難しい期間だとも思える。

23:42
2017
05/08
Mon

マクロンが試されるのはこれから....だな

day by day

 (05:30)私が少し早めに起きたときには、ネットには既に「マクロン勝利・ルペン敗北」の記事が山ほど載っていました。開票開始と同時にあふれ出たのでしょう。昨日の「いま世界は」でも言ったのですが、「今回のフランスの選挙ではどんでん返しはない」との見方が私のそれだったし、その通りになった。

 非常に印象的なのは、「今回のフランスの大統領選挙では、世論調査が常に非常に正確だった」ということです。最終的な得票率はマクロン66%、ルペン34%前後になりそうですが、これは事前の世論調査と非常に似ている。第一回投票での各候補の予想得票率も非常に最終数字に近かった。

 これは、アメリカやイギリスの世論調査結果の誤謬が大きかったのと対照的です。多分フランスでは「隠れルペン」はいなかった。皆正々堂々と最初から「私はこの人を支持する」と意見表明できていた、と思われる。それを世論調査機関は正確に拾った、ということ。

 つまりアングロサクソン諸国に比べてフランスは「建前」が弱かったとも言える。好き嫌いが素直に出せる社会だったと言っても良い。これは興味深い。アングロサクソンの社会に比較して、フランスでは極右から極左まで最初から幅広い政治勢力があり、それぞれ社会的居場所を見付けている。隠す必要がなかった、とも言える。

 しかしマクロン新大統領の行く手はなかなか難しい。ルペン34%は彼女と彼女の政党にとって非常にコアな支持層の割合に近いと思われる。ということはこの部分は熱烈な「反マクロン」となる。

 また経済のグローバル化に苦しめられていると感じる国民には、どう見てもエリートのマクロンは「弱者の気持ちが理解できない」「新自由主義的だ」と受け止められた面が残る。つまり国民の一定程度には「我々の大統領ではない」と拒否感も持たれているとも思われる。

 それでもフランス国民がマクロンを選んだのは、筆者には「結局ユーロという通貨を捨てる勇気がなかったからだ」と思える。移民問題などに関連してEU離脱の論争は盛り上がるが、ユーロを捨てられるかの議論になるとフランス国民の大部分は「それはノン」となる。

 イギリスがEUを離脱できたのは、そもそもユーロを使っていなかったからだ、というのが私の意見。イギリスはずっとスターリング(ポンド)を使っていた。今もそうだ。フランスがフランを再び自国通貨としたら、フランス国民の資産は劇的に目減りする。だからフランスのユーロ支持率は非常に高い。

 ルペンはこの点で矛盾に陥った。支持率をコアから広げようとしたらEUやユーロに融和的なことを言わざるを得ない。しかしそれをあまり言うとコアから「なんだ」と言われる。引き裂かれた故に、「国内ではフランを、国際貿易ではユーロを....」という奇妙な彼女の発想が生まれた。具体性は全くなし。結局その板挟みでルペンは沈んだ。

 しかしマクロンもルペンが指摘した「グローバリズムがフランスの庶民を貧しくした」という意見を完全否定できないでいる。そのために決選投票を前にして、「ルペンにもマクロンにもノン」という運動が起きた。その問題は残る。

 テレビでも言いましたが、私には「グローバリズムの修正」という問題が、別にフランスだけでなく世界の大きな問題として登場すると思う。フランスの政治という観点からは6月の議会選挙でマクロン率いる勢力がどの程度の議席を取れるかがポイントでしょう。

05:05
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